『専業主婦に、なりたい!?』著者インタビュー

働かなければいけない時代に! 白河桃子氏が”現代の”専業主婦願望に警告

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「ロールモデルがない初めての時代を生きる女性に、決
断思考という武器を持ってほしい」と話す白河桃子氏

 結婚・出産をとるか、キャリアをとるか。長らく女性を悩ませているこの問題。近年は、仕事と子育てを両立させているパワフルな女性がカッコイイとされる風潮があった。ところが、最近は20代を中心に「専業主婦」を志望する女性が増えているのだという。アレレ、専業主婦って昭和のモノじゃなかったの? 本書『専業主婦に、なりたい!? ”フツウに幸せ”な結婚をしたいだけ、のあなたへ』(講談社)は、「婚活」の提唱者である白河桃子さんが、専業主婦になって”フツウの幸せ”を望む女子たちの本音と、実際の専業主婦の実態に迫ったルポである。なぜ今、専業主婦が女の幸せなのか。白河さんにインタビューした。

――まだやりたいことがたくさんあるはずの20代女性に専業主婦熱が高まっているとは意外でした。なぜ専業主婦になりたいのでしょうか。

白河桃子氏(以下、白河) 女子大生にアンケートをとると、「専業主婦志望」が3割、「いつかは専業主婦」「子育て期間中は一度仕事を辞めて、手が離れたら復帰する」も含めると7割近くになりました。今の大学生ぐらいの女子たちの母親は、ほとんどが専業主婦かパート主婦。だからみんな家庭のロールモデルとして主婦しか見たことがないんですね。両立してフルタイムで働き続けた母親ではない。それがひとつの要因だと思います。

――今の20代の母親世代と言うと、男女雇用機会均等法(1986年4月施行)前後に就職した世代ですが、やはり主婦がロールモデルなんでしょうか。

白河 私自身、そのころにはOLとして働いていましたのでよく覚えているのですが、施行したからといってすぐに社会が変わったかというと、そうではなかったんです。大企業でも女性総合職として採用するのは一人とか二人だけ、というところからスタートしました。しかもいわゆる”バリキャリ”は、仕事優先で結婚のタイミングを逃した、または結婚しても子どもはいない。バリキャリには子孫がいないんです。

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――確かにそうかもしれません。一方で母親を見て専業主婦に憧れるということは、今の20代の母親世代はさぞ幸せなんでしょうね。

白河 お母さんの幸福度と専業主婦願望は、実はあまりリンクしていません。30代後半女子の場合は、母親から「お母さんは専業主婦になりたかったわけじゃない。でも、昔は女性が働く環境が整ってなかった。あなたはがんばるのよ」という恨み節を聞かされて育ったため、「キャリアウーマンになりたい」と考えている人が多いんですが、今の20代のお母さんたちは、仕事か専業主婦かの選択肢が多少はあり、自分で専業主婦になる道を選んだ世代。だから、娘もその選択を良きものとして捉えています。さらに、今は不況の影響で就職しようにも仕事がろくにない。バブル世代は8割が正規雇用でしたが、今は女性の半数が非正規の時代。その差は大きいですね。就活でたいへんな思いをしてやっと会社に入ったと思ったら、やりたい仕事でもない上に、ものすごくハード。そんな仕事に対しての絶望感が、反動で専業主婦に向かわせてるという面もあります。

――いまだに社会は、「働きたい」という女性を生かしきれていないわけですね。

白河 男女に関わらず正規で子育てと両立できないほどきつい仕事か、非正規で不安定でゆるい仕事か、二極化しているんです。安定してかつある程度ワークライフバランスを保てる仕事が少ない。さらに、正規社員として働いている場合、結婚・出産でキャリアダウンしたくても、社内でその仕組みができていないので辞めるしかない。女性として未来を描ける仕事がないので、家事がしたいわけではなくて、働きたくないから専業主婦になりたいんです。それを裏付けるように、専業主婦願望があったとしても、「家計は管理したくない」「家事はしたことがないけど、嫌いじゃないと思う」と話す人が多いんです。それは、今の子がやる気がないというわけではなく、本能的に安全な道を選んでいるのだという気がします。

――地方を見るとまだ保守的な女性は多いですし、都市部で働いている女性も、実は本当は専業主婦願望があったけれど、これまではキャリア志向の風潮が強かったから言い出しづらかったということもあるんじゃないでしょうか。不況やデキ婚のカジュアル化で、やっと「専業主婦になりたい」と本音を言いやすくなった、と。

白河 そうですね。「専業主婦願望があるか」と聞くと、「私は仕事したい。専業主婦願望なんてない」と言う人もいるんですが、「じゃ家計は夫に頼る『依存主婦』ならどう?」と聞くと、「それはなりたいかも」と言うキャリアウーマンはけっこういます。むしろ、キャリアウーマンほど、「男の人は養ってくれるもの」という気持ちが強い人が多い。婚活中のアラフォー女子の中にも「これだけ働いてきたからもう仕事はいい。結婚して辞めたい」と言う人が少なくない。前述の女子大生のアンケートでも、「一生働きたい」と回答した子でも、「家計のメインは男性が稼ぐ」と考えている子が多数でした。女性にとって仕事は、まだまだ自己実現のためであり、生活のためや誰かを養うためのものではないという意識が大きいんです。そして、「男が養ってくれることが正しい結婚である」という刷り込みはなかなか抜けないんですね。ただひとつ確かなことは、働きたい・働きたくないに関わらず、生活を成り立たせるために結婚後も働かなきゃいけない厳しい時代が今来ているということです。

――親世代ほどの世帯年収も見込めないのは必至ですし、母親が体現していた理想の専業主婦像を捨てなければならないということですね。

白河 ただ、専業主婦願望を持っている子も、決して贅沢な専業主婦になりたいとは思っていません。「夢は専業主婦になって、コストコ(※大型ディスカウントスーパー)でお買い物してママ友と分けっこすること」と言う子がいたんですが、その言葉に象徴されるように、ユルく楽しくラクな道でいいと考えているんです。でも、それすら難しい。ファイナンシャルプランナーによれば、未就学児がいる家庭ですでに生活がギリギリなら、将来子どもが塾などに通うようになったときに家計は破綻してしまうそうです。そのときになって正社員で復帰したいと思っても難しい。私立の中高一貫校に入れるような家庭でも、妻がパートしているという家はたくさんあります。家計の全コストを夫ひとりでは支えていけない時代なんです。さらに、夫のリストラ、倒産、給料カット、離婚などのリスクを考えたら、がんばって資格職になるか、正社員になって、結婚後も働き続ける方が絶対にいい。

――一方で、本書の独身男性の座談会を見ると、「夫より稼いでほしくない」「自分より早く帰ってきて、子育てもできるぐらいゆるく働いて」など、男性と現実のかい離も大きいように感じます。

白河 最近、男OLみたいな人が増えていますね。仕事だけじゃいやと言って趣味にお金をつぎこんで、女性のためにはびた一文使いたくないという人。独身生活を謳歌する「男の負け犬」です。男性から「結婚のメリットはなんですか」と聞かれる機会が多いのですが、男の人もひとりで稼いでいくのは辛い時代。家計を分担してくれたり、子どもを産んでくれて、先が見えない時代をいっしょに生きてくれたりする女性のパートナーを真剣に探すべきだと思います。恋愛から遠い人ほど「女はラクをしたがっている」と言いたがるんですが、働いて出産して家事もして、今の時代、女性はラクなんかできません。そのことをわかってほしいですね。

――では、これから社会に出る若い女性や、今仕事か結婚か迷っている女性はどのように人生を考えていけばいいのでしょうか。

白河 本当は、できれば大学に入る前、高校生くらいから自分がどんな人生を送りたいか、ぼんやりとでもいいので考えてほしいと思います。今からでも遅くはないので、その上で、「いずれ結婚するから仕事は適当でいいや」とか「30歳まではバリバリやって」という短距離走的な考え方はやめたほうがいい。「やりがいのある仕事がないし」とみなさんよく言うんですが、やりがいのある仕事に就いている人って実はそんなにいないと思います。「食べていくために必要なもの」と割り切って、やりがいは仕事以外に求めるのもいいんじゃないでしょうか。今は、プロボノ(専門的な知識やスキルを生かすボランティア)などやりがいある活動はたくさんありますよ。

 日本の場合、結婚するとき仕事はどうするか、出産するとき仕事はどうするかということがあまりに密接に絡んでいて、どちらかひとつを選択することになりがちです。そうではなく、仕事は常に人生の傍らにあるもの、常にやらなきゃならないものとして、独立して考えてほしいですね。たぶんそれが、今後、何が起きてもなんとかなる生き方なんじゃないかと思います。
(インタビュー・文=安楽由紀子、写真=梅木麗子)

白河桃子(しらかわ・とうこ)
少子化ジャーナリスト、作家。東京都生まれ。慶応義塾大学文学部卒業。山田昌弘中央大学教授との共著「『婚活』時代」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が19万部のヒットとなり、「婚活」は2008年度流行語大賞にノミネートされる。近著に『震災婚』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。公式ブログ ツイッター @shirakawatouko

『専業主婦に、なりたい!? ”フツウに幸せ”な結婚をしたいだけ、のあなたへ』

「子育て中はキャリアダウン可」の選択肢も作ってほしい

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