[女性誌速攻レビュー]「美ST」2月号

しょうもない実験のために海外9カ所を飛び回る! バブリー企画で攻める「美ST」

2011/12/26 21:00
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「美ST」2012年2月号(光文社)

 「美ST」2月号の表紙は、藤原紀香。インタビューは、悪い意味でツッコミどころが一切ありません。「男女に関わらず年齢を気にするのはアジアだけ」「自分の体にも耳を傾けていかなきゃ」「心に刺激を取り入れ続けることも大切」「いくつになっても笑顔が美しい女性でありたい」と、美容雑誌が芸能人に求めるコメント正解率100%。四角四面でどこをどう書いてもおもしろくなりそうにないインタビューでした。「たまには、自分に優しく、力を抜いてストレスを解消する機会も作らなきゃ」と、力を抜くときですら語尾が「~なきゃ」になってて、読むだけで疲れます。ちなみに写真は、彼女が「憧れの存在」と公言している峰不二子のイメージだそう。自ら「ルパン三世」のCD各種を用意して撮影に臨んだとのことです。この人のこの一生懸命さ、ストイックさ、「ただのボインのバカとは違うのよ」的なプライドが、芸能人として致命的なマイナスポイントになっていると思うのは筆者だけでしょうか。彼女の前に掲載されている巻頭インタビューが元祖ボインの朝丘雪路で、そのぶっとび方(コンビニにクロークルームがあると思っていてレジに毛皮を預けた等)がすさまじいだけに、余計にそう感じました。

<トピック>
◎朝丘雪路さんから、美しき40代へのメッセージ
◎世界の果てまで行って美容!
◎24時間美魔女は枯れません!

■日本でもできそうじゃない?

 ここ数号やたらとカネの匂いがする「美ST」。特集は「世界の果てまで行って美容」。オヤジギャグ的なタイトルからして不穏な空気が漂います。なにごとかと思えば、なんと、アメリカ、韓国、ニュージーランド、オーストラリア、台湾、マレーシア、モロッコ、イギリス、トルコと9つの国と地域を取材したそうです! 総移動距離は67,215キロとのこと。移動距離を自慢されてもよく分んないんですが、9つの国と地域を取材ってのは確かにすごいですね。でもって、モロッコの砂漠で保湿コスメの実力を実験、マレーシアの熱帯雨林では落ちないメーク実験、ニュージーランドの氷河では発熱下着の実験……と、日本でも十分できるような実験をわざわざやってきたんだそうです。「くだらないことに膨大なカネと人を投入して一生懸命やってきました!」というドヤ顔(嫌いな言葉ですが、あえて使います)がページの裏に透けて見えました。かつてのフジテレビのバラエティー番組とか、「ちょいとラーメン食べに博多まで行ってきた」と自慢するバブルオヤジとか、そのあたりと似た感覚を感じます。完全に時代に逆行している「美ST」です。

■これで美魔女みたいにべっぴんさんになれるんやで

 時代に逆行しているんじゃなくて、本来のあるべき姿になっているだけ、と気づかせてくれる企画が「潤った肌で見た目年齢マイナス10歳 24時間美魔女は枯れません!」です。2代目美魔女グランプリの山田佳子さん45歳が登場しています。そうそう「美ST」の読者層は、山田さんと同世代のバブル世代なんですよね。表紙には「35歳から、美しい40代は始まっている」と銘打ってあり、30代も取り込みたい気配が感じられますが、30代と40代、非バブルとバブル世代はかなり断絶があるので難しいところだと思います。バブルな企画は、おそらくバブル層にしかウケません。

 で、山田さんなんですが、「24時間潤い美魔女」として保湿方法を披露しています。毎日朝晩蒸しタオル美容と氷水洗顔をし、化粧水は1カ月に4本消費するほどたっぷり使い、オフィスでは1年中加湿をし、会社には6本のハンドクリームを常備、車を運転しているときは信号待ちでミストケア、寝室も必ず加湿、旦那さまとは毎晩とワイングラスを傾け、週末はセクシー下着を着用。よくがんばっていますね。ワイングラスやセクシー下着が美しくあるためのツールのひとつというのも、石田純一が喜びそうです。

 そのほかの美魔女も独自の保湿術を紹介していますが、これがまたすごい。キュウリパックにヨーグルトマッサージ、牛乳洗顔。牛乳は顔だけでなく体にかけている人も! お風呂場に混ぜるとかそんなレベルではなく、もろ肌脱いだ肩に冷えた牛乳パックから直接注いでいます。さらに、ヨーグルト&ハチミツで全身パックしたり、生クリームでパックしたり。さらに、”くすみ”をオフするために、ヨーグルトの上澄み液(乳清菌発酵液)を乳頭に塗るという方法も紹介されています。いってみれば、40代女体乳製品盛り! 加えて、いつでも蒸気で肌を潤すため、お味噌汁のふたを開けるときにわざわざ顔を接近させたり、炊飯器からの蒸気を顔にかけたりというトンデモアイデア美容がザックザク。どこまでネタなのか分かりませんが、よしんばこれで肌が潤って見た目がマイナス10歳になったとしても、中身はイケイケ時代から四半世紀経っているということをお忘れなきように。

 ここのところ、「美ST」に対して厳しいレビューを書いてしまい申し訳なく思いますが、これも愛あるゆえ。数号前までは、必ず1本か2本、「これ考えた人すごいなあ」と思わず唸ってしまうような企画や名コピーがあったんです。またあのころに戻ってほしい。振り返ってみたら、10月号でタイトルを「美STORY」から「美ST」にリニューアルしたあたりから、徐々に変わっていってしまったような気がします。深夜番組がゴールデンに進出したら、似て非なる番組になってた、みたいな印象です。いろいろ大人の事情があるのかもしれません。創刊から2年半、これからも愛を持って行く末を勝手に見守りたいと思います!!
(亀井百合子)

「美ST」

キメッキメの紀香さんですが、アミノコラーゲンが手放せません

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最終更新:2011/12/26 21:27
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