【連載】探偵はみた!

探偵の繁忙期、クリスマス。ボーナスを浮気調査にはたいた女の24日

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Photo by yuichi sakuraba from Flickr

 嫉妬、恨み、欲望、恐怖。探偵事務所を訪れる人間の多くがその感情に突き動かされているという。多くの女性の依頼を受けてきたべテラン探偵の鈴野氏が、現代の「女の暗部」を語る。

 探偵の依頼が一番多いのはこの時期、クリスマスだ。なぜかといえば、クリスマスイブに会わない恋人同士などいないからだ。妻をさしおいても、浮気相手とはデートしている。平成になってからというもの、クリスマスの浮気はぐっとしやすくなった。「昭和の日」が制定され23日が祝日になり、デートが23日と24日に分散しやすくなった分、探偵には仕事が多く舞い込むことになる。

 F子が私のところに依頼に来たのは12月の初め頃、まだ街がクリスマスシーズンに入ったころだった。「彼が浮気をしているんです」と訴えるF子。探偵を入れてまで調査するのだから、もちろん結婚する予定なのだろう。ここで「結婚する予定なんですか?」などと聞いてはいけない。依頼人が婚約者でない限りは、それは個人の感情だけで判断されるものだからだ。

 F子によると、今までは休みのたびに会っていたのに、最近は出張だといって会う回数が減ったのだという。24日イブ当日は、彼氏から「その日は出張が入っちゃって会えないかも」と連絡があったのだそうだ。付き合って5年にもなるが、そんなことは初めてだという。「それまでないし、言い方がうそくさい!」とF子は言う。

 依頼者と会って調査日が決まってしまえば、あとは電話などで指示をもらうだけだ。クリスマスは依頼数が多く、調査も昼の案件と夜の案件でダブルヘッダーになる。人手が足りないときは、相棒のほかにも助っ人を呼ぶことさえある。クリスマスはほかの探偵事務所でも案件が重なっているので、悪徳業者だと値段をふっかけてきたりもする。クリスマスだけを調査すればいいのに、前後一週間調べようと言ってきたりする。そうなると、100万円、数百万円なんて金額を請求されるはめになる。しかし、事前の綿密な聞き取り調査を行えば、一週間もかかるような無駄手間は犯さない。ピンポイントで調査すれば、きちんと結果が出るからだ。

 F子は、OLとあってそれほどお金を持っていないようだった。「調査すると、いくらになりますか?」とこわごわ聞いてきた。「今回は、どんなに高く見積もっても数十万ぐらいですね」と答えたら「ボーナスでなんとかなる範囲です」と、ほっとしたようだった。金額が高いか、安いかはその人次第。高いと感じたら、そこまで探偵調査を必要としていないということだ。本当に必要な人は高いと思わない。本当に必要な人は、金額以上に相手に対する怨念が凝り固まったりしているので、いくら高くてもいいから知りたいのだ。

 24日、調査当日の朝になってF子が「彼氏が時間を作ってくれて、夜はデートするんです。調査しなくてもよかったかも」とうれしそうに電話をしてきた。お金を払った手前、調査は念のために行ってほしいということだった。指示通りにF子の彼氏の昼間の行動を調査する。予想通りに、ほかの女とランチを食べ、昼過ぎにホテルに入って、夕方には出てきた。

 翌日、ご機嫌なF子に調査報告書を渡すと、今までニコニコしていたF子は、それを見て憮然とした表情になった。F子の入ったホテルと、浮気相手と入ったホテルが同じ場所だったそうだ。自分の入ったホテルが、何時間か前に、ほかの人と入っていたホテルだと知らされ、さっきまでのご機嫌がウソのように怒っている。

 探偵から見れば、少なくともイブの夜に会うだけで十分、本命なのだから、それでいいんじゃないかと思わざるを得ない。必要以上に相手を調べることは、引いては自分を傷つけることにもなるのだ。
(カシハラ@姐御)

取材協力:総合探偵社オフィスコロッサス
※この話は事実に基づいて構成されていますが、プライバシーを考慮し細かい事実関係などはフィクションです。

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