胸キュンの構成成分を抽出しました

他人の甘酸っぱい恋バナに酔う! 切なすぎてすすり泣き続出『胸キュンナイト』

2011/12/22 17:00
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80’sなファンシー感漂うフライヤー
にも胸キュン!

 右で知人男性がキザなセリフを吐けば心で舌打ち、左で永遠の愛を誓いあっていたカップルが別れた日にはほくそ笑み。我が身にトキメキ話が舞い降りることのない筆者の毎日は、干からびていく一方です。このままでは、いつか女性ホルモンが生成されなくなってしまうかもしれません。

 潤いと女性ホルモンの早急なる補充をと、わらをもつかむ思いで行ってきたのが、先日開催された『胸キュンナイト』。『胸キュンナイト』は、事前公募で集まった一般の方々が自分史上最高の胸キュンエピソードをステージ上で披露し、観客の投票により、「MMP(モスト・胸キュン・ピープル)」を決めるイベント。フライヤーには、「大人のみなさま、今日もきちんと、”キュンキュン”してますか?」の文字が躍っています。”キュンキュン”のイロハなどはるか昔に捨て去ってしまった筆者は、言うなれば”歌を忘れたカナリア”。そんな砂漠のような女でもキュンキュンできるのでしょうか。なぞのプレッシャーで胸が押しつぶされそうになりながら、会場の門戸を叩きました。

  会場の壁や窓には、手づくりの紙製ハートに、カラーバルーン。奥のスペースには”胸キュンドリンク”を売っている喫茶店。そして、そのさらに奥には、スタッフオススメの胸キュン本を並べた『胸キュン図書館』が。この、いかにもな文化祭感は、人生で最も胸キュン感度が高かったであろう中高生時代を思い起こさせるためでしょうか。スタッフの方々が、文化祭前日よろしく夜なべして作ったのかしら、とみるみるうちに妄想がふくらみ、”キュンエンジン”がブォンブォンかかりました。ニクイ演出!

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(左)喫茶店で売られてるのは『初恋のなっちゃん』(中身は普通のなっちゃん)
や『愛の国』(中身は普通のハートランド)など。
(右)図書館には、いかにもな少女マンガに交じって、『HUNTER×HUNTER』が。
胸キュンシーンあったっけ?

 さらに、開演前のBGMは、『カルアミルク』(岡村靖幸)や、『恋をしちゃいました!』(タンポポ)と、胸キュン系歌詞がふんだんに詰まった懐メロでした。右も左も胸キュンで固めてくる胸キュンスタッフ陣、抜かりがありません。

 かゆいところまで手の届いた会場演出で、来場客の胸キュンエンジンが準備万端になったところで、『胸キュンナイト』が始まりました。我こそはと自薦で集まった9人の登壇者たちは、きっと胸キュン界のエリートに違いありません。期待しちゃう!  審査員は、イベント主催のSCRAP・加藤隆生さん、萌え系ライブ&バー『ディアステージ』を運営する福嶋麻衣子さん(通称もふくちゃん)、写真集『絶対領域』(一迅社)等で有名な青山裕企さんのお三方。

■マンガの話じゃないの!? 『先生、大好きです』『待たせたね』

 プレゼン方法は、単に檀上で体験談を話すものから、好きなマンガや曲を引き合いに出すものまでとさまざま。自作のポエムをクラシック曲に乗せて朗読する猛者も見受けられました。中でも、どの登壇者よりも圧倒的に会場の胸キュンボルテージをMAXまで引き上げたのは、エントリーナンバー3のタケベさん。彼女自身の高校時代の話を感情たっぷりに語ってくれました。

タケベ「高校二年のとき、先生を本気で……本気で好きになりました。今もちょっと、本当にすごく好きだったことを思い出して泣きそうになってて……」

 とタケベさんは檀上に上がった直後から、目をウルウルさせて話を続けます。

タケベ
「先生の担当科目のテストでは絶対100点をとるぞって、他の科目はすべて捨てて、テスト勉強をしたのは先生の科目だけ。テストでは、これ以上ないくらいに綺麗な字で回答を書きました。結果100点をとることができ、テスト返しで『よく頑張ったね』と褒めてもらえて、本当にうれしかった。廊下ですれ違うときは、私はいつもとびきりの笑顔で挨拶をして、そのほんの1分がうれしくて大切でした。こんなに好きだけど、相手は先生だから告白したら迷惑になるな、と思ってずっと言えず、そのまま卒業の日を迎えました。卒業すると会えなくなってしまうと思いつつも、そのまま帰ろうとしたら、たまたま下駄箱の近くに先生がいました。その瞬間……気付いたら走ってて……!  『先生、大好きです』……って!(号泣)  ……そうしたら、先生が私の頭をぽんぽん、として『待たせたね』」

 ここで会場は最高潮に盛り上がり、あちらこちらからお客さんのすすり泣きが聞こえてきました。しかし、キレイにまとまった状態でステージを去ろうとしたタケベさんを、審査員の青山さんは許しません。

青山「いや、その話の続き、聞かせてもらえますよね? どう審査するかはこのあと次第です」

  「この後の話はあんまり胸キュンじゃないんです……」とタケベさんは渋りつつも、どうやらこの話に出てくる”先生”とは、その後3回ほどデートを重ね、「今夜ウチに来なよ」と誘ってきたのだとか。純情だったタケベさんは、手続きを踏まない急な誘いに傷つき、先生との関係をシャットダウン。ウブな恋心を弄んだとして、会場は一気に先生へのブーイングが起こりました。3回もデートしてるなら問題ないのでは……と私の頭にはちらつきましたが、胸キュン界では肉体関係に持ち込む行為はご法度のようです。手厳しいコメントを浴びせていた審査員の青山さんも、「そうそう、そこで体を許しちゃダメですよ!  そんなタケベさんに胸キュンしました」と”結果恋がうまくいかなかった”ということにご満悦。この時点で、胸キュンたるもの、”最終的にうまくいってはいけない”・”性的な要素が入ってきてはいけない”の2つの仮説が生まれました。

■またもや生徒と先生エピソード!

  同様に、タケベさんに次いで、高濃度の胸キュンを見せてくれたのが、エントリーナンバー5のスミネエさん。キュン対象だったのはやはり先生。スミネエさんの友人の経験した、先生との淡い恋物語を語ります。

スミネエ
「友人から預かってきたお話を読みます。(以下、一人称はスミネエさんの友人)私は、専門学校の先生に恋をしていました。その先生は厳しくて、他の子たちからは敬遠されていたのですが、先生が時折見せる優しさ、目尻のシワ、手首のラインに恋をしました。勇気を出してメールをしてみたけど、すぐに返事は届かず、待った末に届いたメールは、私が聞いた質問の答えのみというそっけないものでした。そこから、私と先生の一日一通の奇妙なメールのやり取りが始まりました。ごくまれに、二往復のやり取りができる日もあり、一喜一憂の毎日です」

  ここまで聞いて、筆者の頭に浮かんだのは、今や絵文字もほとんど使わなくなった我がメール。高校生の頃は、どの絵文字を使うかに始まり、長すぎず短すぎずの分量でなど、いかにメール作成に命をかけていたことか。気になる男の子に宛てるわずか50字程度のメールを、1時間以上かけて作っていたものです。気恥ずかしさと甘酸っぱさでムズムズしてきました。……ああそうか、これが”胸キュン”なのね!

スミネエ「先生が意外にも甘いモノ好きだとメールで知った私は、”友達に配るために持ってきたけど余ったから”というていで、先生に手づくりお菓子を渡しました。困った顔で『ありがとう』と言った先生。その表情を見て、渡せたうれしさと、困らせた悲しさで、心がぐちゃぐちゃになりました。そして後日、お菓子のタッパーを返してもらったのですが、中には、キャラメルの箱と、はちみつのリップバームが……!  『今日誕生日だよね、おめでとう』と言いながらタッパーを渡してくれた先生。メールで話した私の誕生日を、先生は覚えていてくれたのです。結局、これ以上のことは起こらずに終わってしまったけど、私の胸にしまってある大切な思い出です」

  絵に描いたような優秀な胸キュントークに、司会・審査員一同は「胸キュンの原石がいっぱい詰まったエピソード!」と大絶賛。審査員のもふくちゃんと青山さんは、それぞれ以下のように分析します。

もふく「これぞ胸キュンの核の部分。やっぱり、少女マンガの『りぼん』や『なかよし』に出てくる以上のことは、”胸キュン”から外れちゃうんですね」

青山「結果的には恋が進展しなかった。これが、彼女の後々の人生での、”胸キュン”の財産になってますね。もらったキャラメルも、多分食べてないと思うんですよ」

■ポイントを押さえれば胸キュン体験は可能?

  その他の登壇者たちの発表も同様に、”未熟・未完成であること”がひとつのキーワードとなっているものがほとんど。また、数少ない男性登壇者たちは、自らの体験談を話す女性とは対照的に、好きなマンガや音楽を引き合いに出して胸キュンを語っていました。しかも、どういうわけか全員もれなく「その当時、僕は童貞だったのですが」と付け加えていた男性陣。確かに、女性の胸キュンが『りぼん』や『なかよし』のような世界観なら、男性の胸キュンには童貞であることが大きなポイントであるのも頷けます。

 そして、来場客と審査員による投票の結果、エントリーナンバー3のタケベさんが2位と3倍以上の差をつけてトップ、2位にはエントリーナンバー5のスミネエさん、となりました。偶然にも1位、2位がいずれも年上の先生エピソードでした。きっと、胸キュン界の王道なのでしょう。

 最後に、筆者の独断で「胸キュン三原則」を制定して締めくくりたいと思います。

【胸キュン三原則】
・うまくいかない恋であれ
・相手は年上の先生にすべし
・性的な要素を含むべからず

(朝井麻由美)

■来春には、お台場の東京カルチャーカルチャーにて、イベント『キザなセリフ選手権』を予定している。詳細はSCRAPのHPで決まり次第公開される。
SCRAP

『胸キュン90’s ~ひとりで聴きたい恋の唄~』

恋バナ話して自分にうっとりしてるんでしょ? 

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最終更新:2011/12/22 17:24
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