ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第14回

女が変身願望や”はけ口”としてセックスを求めると……『恋の罪』はスッゴイわよ!

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(C) 2011「恋の罪」製作委員会

 サイ女な皆さん、雑誌の記事を鵜呑みにして、キレイになるためだけにセックスしちゃったことありますか~。ま、個人的には、しなさすぎるのも、しすぎるのも、どっちもダメだと思います。アタシはしすぎでダメでーす!(高らかに宣言)

 たいていの男にとってセックスは、愛以前に排泄行為。もうね、全国の高校の男子トイレには自慰室でも作ってあげたいくらいに(絶対何か仕掛けそうなアタシ)、基本、男ってのは「抜きたい」ものなわけです。アタシもおばさんを装ってますが、中身はスケベなおじさんなので、生理はないが生理的には男性のソレが痛いほど分かりますもの。痛い痛い! それに比べて、女のセックスは、より恋愛感情と結びつきやすいというのが定説。アタシも昔から、ノンケ女子やレズビアンのお客様・お友だちに生々しくリサーチしまくってるんですが、千人斬りクラスの色ボケもごろごろいるゲイ男性に比べて、女子にはやはり「ただ快楽のためにヤリまくってる」というタイプは激しく少ないみたいなのよね。ちっ、お前ら気取りやがってよ!(誤認ケチつけ)

 ただし、その理由が恋愛ではない別の衝動、ストレスのはけ口や変身願望といったものであれば、どうなのか……というのが、今回の映画『恋の罪』が描いてくれたものかと。

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こぬか雨降る御堂筋......じゃなくてラブホ街円山町に立つのは、
今作での全裸公開も話題の水野美紀ちゃん。
『スト2』の春麗から女刑事まで、常に体を張ってます!

 この映画は、90年代に渋谷区のラブホテル街で実際にあった殺人事件、つまりいわゆる東電OL殺人事件に「インスパイア」されたもの。と言うと、水野ちゃんは女刑事役だし、ちょっと前に冤罪疑惑で話題になったあの事件の新しい解釈が? とか思われそうですけど、あくまで「インスパイア」されただけなので、真犯人追求にはまーったく役に立ちません。それよりもあの事件で、殺された被害者のほうが死後にひどい報道をされまくった点、つまり、世間が好奇の目で見まくった「エリート女性の夜の顔は売春婦だった」という設定をテーマにしてるわけなのね。

 出てくる女性3人は、「刑事」「大学のエリート助教授」「人気小説家を夫に持つ貞淑な主婦」と、それぞれに立派なご身分。そんな女たちが「セックス」に絡めとられていくというお話です。

 てかね、絡めとられるどころか、最初から絡まりまくりのぶっちぎりパンパンっぷり、冨樫真さん演じる助教授がスッゴイのよ。以前この連載でも紹介した、『黒い家』での大竹しのぶさんの「乳しゃぶれー!」的な怪演、今作の助教授の夜のシーンは常にあのテンションが続くと思っていただければ分かりやすいかと。

 さらにそんな助教授にすっかり仕込まれてしまう、神楽坂恵さん演じる主婦の変化もおもしろい。帰宅時の玄関スリッパを見て、「うん、いい位置だ」とか言っちゃう神経質な旦那(ほんとムリ)との息の詰まるような生活から始まっての、ラストのはじけた姿の違いようといったらアンタ。実際、「先輩売女の助教授による主婦調教」こそがこの映画の軸なんじゃないかしら。

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大学構内でいきなり主婦の舌をつまむ助教授姐さん。
渋谷のレディースチーム「真夜中は別の顔」(円山町シニア組)の
先輩後輩ってテイでしょうか。

 父への度を越した想い、そして母との確執という家庭環境の歪みと、文学的インテリ性が生み出したのであろう、淫乱哲学に裏打ちされた女助教授の夜の顔。その彼女が、立場は違えど「女の乾き」を全身で訴えていた主婦を捕らえ堕としていくシーンは、本当に強烈。

 この冬の最新トレンド、杏ちゃんによる妖怪人間ベラメイクをいち早く取り入れた助教授が、ダミ声で

「アンタはきっちり堕ちてこい! 私のとこまで堕ちてこい!」

 って叫ぶんだから。しびれるっつうの。主婦も「はい~!」と、良いお返事。

 さらにダメ押しで、大方斐紗子さん扮する助教授の母親役もスッゴイ。高音で繰り出す、上品なんだか下品なんだか分からない口撃と、それを「クソババア早く死ねよ」などと迎え撃つ薄ら笑いのベラ助教授の母娘シーンは、一見の価値アリです。

 こうして見ると、助教授、主婦、ババア、とタイプの違う発狂女優が3人も揃ってくれて(命名・怪演隊)、しびれるビッチセリフも連発と、オカマ女とオカマにとってはご馳走てんこ盛りって感じですけど、逆に水野美紀ちゃんの存在がとことん薄くなってしまうという問題もあり。確かに、アマゾネス怪演隊だけじゃ喜ぶのはスキモノだけになってしまうし、観客とのかろうじての接点になってくれそうなキャラが必要だったのかもしれませんが、全裸にまでなった甲斐はといえば、微妙かしらねぇ。

 そして、この映画が描きたかったのであろう「性に向かった女の闇」という部分に関しては、こういうテーマを描いてくれてうれしいというのは大前提で、ただ少し、ノンケ男的目線の「哀れみ」が入りすぎている気もしたわね。アタシとしては、エリート女が考え過ぎてセックスに狂おうが、貞淑女がセックスで開放されようが、ヤッちゃう女ってのは好物なんだけど、そこにあまりに「そうなってしまうには深く悲しい事情が」という意味付けをされるとむず痒い気持ちもあるのよ。

 『吉原炎上』や『肉体の門』などの、五社英雄大先生の名作も、そんな女たちが大集合だったけど、彼女たちにはもう少し救いを感じたというか、どこかカラッとしているところが見えたのよね。五社先生には、それでも強く生きる女への憧れがあったような。このへんは男性監督の目線の違いとしても興味深い部分かしら。

 あ、とは言っても、若手清純派女優のユルい自分探し映画とかよりは何倍も希少価値のある、アタシ好みの映画なのは間違いありませんからね~! サイ女の皆さんにも、インテリ空回りや平凡煮詰まりしてる方がそこそこいそうな気はしますが、血と肉の通った己の存在意義を確かめたいなら、今すぐラブホ街に向かってはいかがでしょうか。

 つうのは冗談としても、ネット上にカオナシたちのつぶやきが溢れ、それこそが人と人とのつながりとなりゆく時代。人が、体液や肉でつながるプリミティブなセックスという行為は、今まで以上に、めんどくさい意味付けがされて然るべきなのかもしれないわね。アタシも、助教授のおかんの

「あなたもセックスなんていう下品な行為に負けてはだめですよ」(上品高音)

 という言葉を思い出して、負けずに今後も励みます!

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ブルボンヌ
全国クラブのお笑いショウや試写会テキトーMCで活躍中の女装パフォマー/ライター。『レコチョク』(ケータイサイト)等に寄稿しつつ、新宿2丁目ゲイミックスバーのママ業もこなす。芸能通のゲイたちと一緒にオカマなブログ『Campy!』もプロデュース中。

<突如宣伝>
エリート女の歪みや主婦の乾きは、セックス以外に、女装で笑い飛ばすのもオススメだゾ! というわけで、ブルボンヌ率いる熟女装ユニットCampy!ガールズが送る『Campy!飲み会』が近々開催されます。皆様、今すぐローソンチケットをゲットよ!
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『恋の罪』
どしゃぶりの雨が降りしきる中、ラブホテル街のアパートで女の死体が発見される。女刑事・和子(水野美紀)は謎の猟奇殺人事件を追ううちに、大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)と人気小説家を夫に持つ清楚で献身的な主婦・いずみ(神楽坂恵)の秘密に触れ、引きこまれていく。事件の裏に浮かび上がる真実とは? 3人の女たちの行き着く果てに愛の地獄が始まる――。

テアトル新宿ほか全国ロードショーで公開中
公式サイト

【バックナンバー】
・第一回 ブルース・ウィルス『サロゲート』
・第二回 メリル・ストリープ『恋するベーカリー』
・第三回 ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマンなど『NINE』
・第四回 ガボレイ・シディベ『プレシャス』
・第五回 『セックス・アンド・ザ・シティ2 』
・第六回 アンジェリーナ・ジョリー『ソルト』
・第七回 大竹しのぶ『オカンの嫁入り』
・第八回 クリスティーナ・アギレラ&シェール『バーレスク』
・第九回 ヘレン・ミレン『RED』
・第十回 ダコタ・ファニング『ランナウェイズ』
・第十一回 ジュリアン・ムーア『キッズ・オーライト』
・第十ニ回 ジュリアン・ムーア『クロエ』
・第十三回 シアーシャ・ローナン&ケイト・ブランシェット『ハンナ』

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