[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

料理ひとつであらゆる「汚点」をチャラにする、”お母さん仕事”のゴール

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(C)安彦麻理絵

 今日は朝っぱらから「からあげ」を揚げた。というのも、3歳の長男が保育園で遠足に行くからである。「お弁当のおかず、何がいい?」と聞いたら「からあげ」と返答してきた。……からあげ。

 実は私には、からあげにまつわる苦い思い出がある。思い起こせば、あれは19歳の頃。突然「からあげを揚げてみよう」と思い立った私。スーパーで大量のトリ肉を購入後、料理本も何も見ずに「とにかく味付けすればいいんだろ」と、醤油とかで適当に下味を付け「しみこませればいいんだよな」と、その肉を一晩冷蔵庫で寝かせ、翌日、ドボドボと大量の油を注いだフライパンで「こんがり」と揚げた……のだが。中まで火が通っているか心配で、よ~~く揚げてたら、気が付けば肉は全て、石炭のように真っ黒になっていた……肉、全滅。

 それを見ていた父親が「なんてもったいない事をするんだ!」と、激怒。そしてその怒りは「肉」から「私の人生」に段々すりかわり、「学校にも行きやしないし、仕事するわけでもないし、一体何がしたくて生きてんだ、お前は!!」と、最終的にからあげとはまったく無関係なテーマで激しい口論となった。本気でもう、生きてるのがイヤになった。

 てなわけで、からあげにいい思い出のない私だったが、それでも人生、生きてれば、揚げなければならない時がくる。それが「子どもからのリクエスト」である。「……母親たるもの、からあげのひとつも作れなくてどうする!!」という、切羽詰まった状況に追いつめられた私。しかし、「またあの時みたいに、肉を石炭化させてしまうのではないか?」という不安がつきまとう。一体どうしたら「うまいからあげ」が作れるものか?

 と、まあ、そんなモヤモヤに頭を悩ませていたところ、一冊の料理本が私を救ってくれた。それが、フードスタイリスト飯島奈美さんの本「LIFE」(東京糸井重里事務所)である。これに、事細かに「うまいからあげの作り方」が載っていたので、それを信じて、そのとぉ~りに作ってみた。材料、調味料の計量きっちり、恐怖の「揚げ」に関しては、キッチンタイマー使って揚げ時間きっちり守った。そして、恐る恐る出来上がったモノをひとつ、味見してみたら。

「すごい!! ちゃんとからあげ出来てるよ!! うまい! すごい!!」

 ……感動した。本気で感動した。私にもからあげが作れたのだ!! 朝っぱらから、とてつもなく感動。そんなわけで、からあげ以外のリクエストおかず「ブロッコリー、プチトマト、タコさんウインナー、おにぎり」も一緒に、トミカの弁当箱に詰めて弁当完成。

 ……正ちゃんは、おかあさんの作ったお弁当を、喜んで食べてくれるでしょうか? (このフレーズ、『劇的ビフォーアフター』の、加藤みどりのナレーションで読んで下さい)

 てなわけで、一度は「からあげ」にトラウマを抱いていた私だが、これからは「からあげのエキスパート」を目指すことにした。「うまいからあげが作れるお母さん」……これはかなりスゴイと思う。おしゃれレシピとか、そんなメニューではなく、こういう「なんてことない普通のものが、すごくウマく作れる」ってのが、お母さん仕事やる上で一番重要な気がする。以前、テレビで彦麻呂が「今まで食べた物の中で何が一番おいしかったか?」という質問をされていて、「お母さんの作ったハンバーグ」と、答えていてビックリした。てゆうか、ちょっと感動した。あらゆるグルメに舌鼓を打ってきたであろう彦麻呂。そんな、舌の肥えた彦麻呂が「お母さんの作ったハンバーグがいっちばんうまい!!」と、絶賛していたのである。子どどもの舌を、ここまでうならせることが出来たら、それは「相当、レベルの高いお母さん」である。お母さん仕事、やるのであれば、やはり目指すところはここ、かもしれない。

 そんなわけで、「からあげ、ハンバーグ、カレー」あたりのメニューを「お母さんが作ったやつが一番おいしい!!」と言われるくらいに作れるようになったら、色んなことが許してもらえそうである。「家の中、いつも散らかってたけど、でも、お母さんの作るカレーは最高だった」とか、「怒るとコワかったけど、でも、お母さんの作るハンバーグが大好きだった」、そして「いつも酒ばっか飲んでて、みんなが寝静まった後に、さらにコンビニで酒調達して一人で深酒してたけど、でも、お母さんの作るからあげが一番うまかった」などなど……。料理ひとつでさまざまな「汚点」が、かなりごまかせるはずである。そんな「汚点ごまかしメニュー」を、ひとつでも持ってるお母さんは強いはずだ。

 とはいえ、私の場合、からあげひとつではごまかしきれないほど「汚点まみれ」なのが困ったものなのだが。

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