[連載]海外ドラマの向こうガワ

なぜアメリカで吸血鬼ブーム? 『ヴァンパイア・ダイアリーズ』がヒットした理由

vampiredaires.jpg
『ヴァンパイア・ダイアリーズ〈ファ
ー スト・シーズン〉コレクターズ・
ボックス1 』/ワーナー・ホーム
・ビデオ

――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!

 今、アメリカ人女性の間では空前のヴァンパイア・ブームが吹き荒れている。映画、テレビドラマ、雑誌など、ヴァンパイアは至るところに登場し、目にしない日はない。大手企業もCMにヴァンパイアを登場させている。きれいにヒゲを剃ったヴァンパイアに「死ぬほどセクシー」というキャップフレーズをつけた、ジレットのCMは大好評だ。

 その昔、吸血鬼といえば黒いマントを羽織り、ポマードをべっとりとつけた「ドラキュラ」で、恐怖の象徴であった。しかし、今は、吸血鬼といえば、彫刻のような美しい体を持ち、影のある美しい男「ヴァンパイア」であり、セックスシンボルとして騒がれている。

 世間が吸血鬼に抱くイメージを変えたのは、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994)と、テレビドラマ『バフィー ~恋する十字架~』(97~03)。前者はトム・クルーズとブラッド・ピットの二大イケメンが、これまでにいなかった美形のヴァンパイアに扮し、「ヴァンパイアって、こんなにセクシーだったの!?」と世界中の女性を驚かせた。後者は、ジェームズ・マースターズが演じたスパイスという役が、プラチナブロンドのへアに、色白美形の細マッチョ、というキャラで、近代のヴァンパイアはかなりセクシーだという概念を植えた。しかし、牙をむくときはオドロオドロしい表情になり、ブームを巻き起こすまでには至らなかった。

 実はこのヴァンパイア・ブーム、もともと本好きな女性たちの間で巻き起こったものなのだ。91年、イケメン・ヴァンパイア兄弟に愛される女子高校生がヒロインの作品『ヴァンパイア・ダイアリーズ』が発行された。01年、人間界に普通に住むヴァンパイアと女性の禁断の愛を綴った小説『サザン・ヴァンパイア・ミステリーズ』が発売される。03年には、10代を対象としたヴァンパイアとのラブロマンス本『トワイライト』が発行され、「ヴァンパイアはセクシーで美しく、孤独で一途。優しいけれど獰猛にもなり、身を徹して愛する女性を守り抜く。女性にとってまさに理想の男性像」と女性たちを夢中にさせたのだ。そして、三作品とも大ベストセラーになったのである。

 アメリカ人はあまり本を読まないと言われるが、実は女性たちは安い紙で作られたお手ごろ価格のラブロマンス本を読むのが大好きである。日本人がマンガを読むような感覚で、10代から『ゴシップガール』のようなラブロマンス・シリーズ本を読み、恋愛妄想に磨きをかけるのだ。大人になるとハーレクインなどに移行し、現実の世界から離れられる娯楽として楽しむようになる。ハーレクインが出版している本は、どれもこれも女性の願望が詰まった「ありえない設定」ばかりなのだが、女性のツボを見事に押さえており、この出版不況の中、売り上げを伸ばし続けている。それほど、女性たちは「強引だけどジェントルマン、私一人だけを長く愛してくれる、美しい男」に飢えているのだろう。だからこそ、こんなにもスムーズにヴァンパイアが受け入れられたのだ。

 『サザン・ヴァンパイア・ミステリーズ』は08年に『トゥルーブラッド』としてドラマ化され、『トワイライト』も同年に第1弾が映画化された。そして09年9月、ティーンの間でカリスマ的人気を誇る、最初のヴァンパイア・ラブロマンス小説『ヴァンパイア・ダイアリーズ』を原作にしたテレビドラマが、満を持して放送開始となったのである。

 『ヴァンパイア・ダイアリーズ』の舞台はバージニア州の田舎町。主人公は、両親を自動車事故で亡くしたばかりの17歳の高校生エレナで、2歳年下の弟と共に若いおばの家に身を寄せていた。悲しみから立ち直れないエレナだったが、ミステリアスな転校生ステファンに心惹かれるようになる。ステファンの兄デイモンに横やりを入れられながらも、愛を深めていくふたり。だが、ステファンとデイモンがヴァンパイアであることを知ってしまい、また、兄弟の確執に巻き込まれていく。

 ドラマで描かれているヴァンパイアは、セクシーで美しく優しいだけでなく、悩み多き10代のヒロインに手を差し伸べ、無償の愛を注ぐ。若い女性たちにとってまさに理想の男性像であり、ヴァンパイア版「ロミオとジュリエット」だと、たちまち大ヒットした。

 ほかにも、ヴァンパイアは年をとらず、永遠に若く美しいままでいるという点が、大人の女性視聴者の心をくすぐっているとも言われている。ヴァンパイアの愛は永遠であるから、自分が年をとっても美しい男性が自分を愛し、そばにいてくれるという贅沢な状況が楽しめるのだ。女性にとって、まさしく究極の理想だといえよう。

 美男美女ぞろいのキャスティングも、ドラマをヒットさせる要因となった。高校生には見えないような役者もいるが、それが気にならなくなる素晴らしい演技力で、視聴者は物語にぐいぐいと引き寄せられる。ヒロイン役のニーナ・ドブレフと、ヒール役のデイモン扮するイアン・サマーホルダーがプライベートで交際しているといううわさも、ドラマの人気を盛り上げるスパイスになっているようだ。

 『ヴァンパイア・ダイアリーズ』には、ヴァンパイアのほかにも、魔女や狼男も登場。セクシーなキャラクターが次々と登場し、かなり見ごたえがある。実は小説には、日本からやって来た、不思議な力を持つ双子の狐キャラクター、シンイチとミサオが登場するのだが、ドラマではまだ出てきていない。小説ではかなり人気のあるキャラクターなので、今後ドラマに登場することが多いに期待できそうだ。

 ヴァンパイアに理想の男性像を追い求めている、アメリカ人女性たち。『ヴァンパイア・ダイアリーズ』は、彼女たちの願望が詰まった究極のラブロマンスなのである。

堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。

『ヴァンパイア・ダイアリーズ 〈ファースト・シーズン〉コレクターズ・ボックス1 』

驚きなのはイアンが32歳だってこと!

amazon_associate_logo.jpg

【この記事を読んだ人はこんな記事も読んでます】
差別的なギャグ多数でも、エミー賞に最多ノミネートされた『30 Rock』
手厳しいアメリカ・メディアも大絶賛! 20年に1本の名作『マッドメン』
アメリカのヒスパニック社会が生み出した、『アグリー・ベティ』という動き

今、あなたにオススメ



サイゾーウーマンのSNS

  • 「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

関連リンク

アクセスランキング

  1. SKE48、“未成年飲酒”疑惑のツイート流出?
  2. 上戸彩、激ヤセ&髪バッサリで会見登場
  3. 『A LIFE』初回14.2%にテレビ関係者絶句
  4. 「嵐はしゃいでた」発言で日テレP炎上
  5. 「二度と仕事したくない」勘違い女優
  6. 藤原さくら、違和感だらけの起用
  7. 葵つかさ「ヌード披露」で売名説激化?
  8. トランプ就任式はしょぼくてもOK!
  9. 工藤静香がインスタ開始で夫婦アピール?
  10. 「GENKINGの二の舞」とウワサの芸能人
  11. マッチの葬式にはしゃぐ井ノ原
  12. りゅうちぇる、ビジネス結婚報告の手法
  13. “もう終わった”イケメン俳優3人
  14. マギー不倫報道に“非道すぎる圧力”
  15. 煙たがられているゴリ押し若手女優
  16. 芸能プロ震撼させた「暴露ブログ」
  17. 篠田麻里子、「老婆のように」劣化!!
  18. 「婦人公論」で小保方連載スタート
  19. 「臨場」シリーズもご臨終……。内野聖陽がショックのあまり白髪に
  20. 木村拓哉、“かつてのタブー”大解禁?

ジャニーズの人気記事

  1. 『A LIFE』初回14.2%にテレビ関係者絶句
  2. 「嵐はしゃいでた」発言で日テレP炎上
  3. 葵つかさ「ヌード披露」で売名説激化?
  4. マッチの葬式にはしゃぐ井ノ原
  5. 木村拓哉、“かつてのタブー”大解禁?

カルチャーの人気記事

  1. 「婦人公論」で小保方連載スタート
  2. 「日本が独裁国家に」映画監督が警告
  3. 猫トラブルの原因は人同士のいさかい?
  4. 「捨てられる妻」の典型とは?
  5. こなれを捨てた「CLASSY.」が暴挙へ

海外ゴシップの人気記事

  1. トランプ就任式はしょぼくてもOK!
  2. ケイティ、年末年始に日本を堪能
  3. 発禁レベルのジャケ写の洋楽アルバム
  4. マイケル・ジャクソン再現ドラマに、娘・パリス「ありえないほどの侮辱」! 炎上騒ぎに
  5. リアーナ、J. Loをアンフォロー