[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」10月7日号

女の「エロおかず」について赤裸々に語る、突き抜けた「婦人公論」の性特集

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「婦人公論」(中央公論新社)10月
7日号

 ここのところエロい特集がめっきり減ってしまった「婦人公論」(中央公論新社)ですが、満を持して今号は「40代からの『性』を愉しむ」が特集されています。これがとにかくすんばらしいっ! いつものように軽々しく茶化すことができないほど、本当に素晴らしい特集でした。これだけ真摯に性と向き合い、かゆいところに手が届き、文学的で、新しい世界へと読者を誘う性の特集があるでしょうか。いや、ありません。読後の衝撃をかみしめながら、今、この記事を書いています。目を閉じて、何回も反芻して、しゃぶり尽くしたい。この特集こそがエクスタシー。そんな風に思えてきました。それでは中身を見てみましょう。

<トピック>
◎特集 40代からの「性」を愉しむ
◎ウォンビン×寺島しのぶ 今夜は夫の顔がウォンビンに見えるかも!?
◎「見た目マイナス10歳」になるパーツ別若返り法

■絶望の山に分け入った先のセックスとは?

 特集のはじめに、まずドラマ『セカンドバージン』(NHK)の脚本家・大石静が登場して、性愛について語っています。今、公開中の映画版のPRに絡んでいるわけですから、「どうせフィクションの話ばかりなんだろうな……」と思いきや、自身の不倫経験を堂々と告白していて驚きました。いわく、20代で甲状腺がんを2度患ったせいか「今好きな人は、今、手に入れておこう」という考え方になったそうで……。

「好きな男性ができ、いい感じになったとしても、隠し事をすると不都合が多すぎるので、全部夫には話してきました。一度も隠したことはありません」
「夫はそういう私の生き様を受け入れてくれましたが、恋人のほうは納得しませんよね。恋人に、夫との離婚をほのめかしたり、のらりくらりとやり過ごしていたこともあります。だから、愛人を作って本妻との間に揺れる男の気持ちとか、すっごくよくわかる」
「結局、私が離婚に至らなかったのは、夫のほうが居心地よかったんでしょう」

 すごいっす。いったいどんな夫婦関係なのか。愛人たちとどんな恋愛をしてきたのか。想像するだに恐ろしい話です。いくつもの修羅場を越えてきたことは想像に難くありません。だからこそ、最後の締めの言葉がものすごい力を持って突き刺さってきました。

「本気で恋をしようとするなら、家庭は崩壊、身も心もズタズタになって、命までもなくなるかもしれないことを覚悟して前に進むしかないでしょう」
「私は自分の欲望にとても忠実です。この先も、機会さえあれば絶望の山に分け入ってでも、手に入れに行くでしょう。ほんとうに何かを突破したいと思ったら、やれますよ。やりたいことはやればいいんです」

 「やりたいことはやればいいんです」という言葉が、頭の中でエコーがかかって響き渡りました。好みの男性は「セックスと顔がいい男」だそうです。ズタズタになって死んでも欲しい男のセックスとは、一体どれほどのものなんでしょうか。経験不足の筆者には、「とにかくすげーイイんだろうな」という貧弱な表現しか思い浮かびませんでした。どれだけイイのか、それを妄想するだけで一晩愉しめそうです。命をかける勇気がない小者はそれで十分かも……。

■あなたのエロおかずは何ですか

 同特集内の鼎談「マスターベーションの妄想ネタは、活字に映像、昔の男もアリです」も素晴らしかったです。マスターベーションについて、ライターの吉田潮、作家の岩井志麻子、バイブコレクターでブロガーの桃子が赤裸裸に語ります。何が素晴らしかったかというと、「女がマスターベーションしたっていいじゃない!」という大雑把な主張にとどまっていないところです。マスターベーションのもっとデリケートでマニアックな部分をほじくり出しています。だからなおさらマスターベーションの愉しさがよく伝わってきました。特に、さすが作家だけあり、岩井志麻子の表現は豊かで輝いていました。例えば、”おかず”についての言葉。

「私の場合、”脳内冷蔵庫”って感じかな。タッパーにおかずが入っているというイメージ。それは好きなエロ映画の一場面だったり、昔の男とのいい思い出だったり、小説の一節だったり……。(中略)それをひとつひとつ取り出してうっとりするのが愉しい。常備のエロおかずをいっぱい持っているって、ある意味、豊かな生活じゃないでしょうか」

 ここで他のふたりから「昔の男をおかずにすることはない」と言われ……、

「ほんと? わー、私、おばちゃんだから『もったいないわ、まだ食べられる』って思っちゃう。気持ちよかった思い出を解凍してね、味わうっていうの、いいものよ」

 いい話だ~。こういった比喩的な表現がいちいちうまくてよく伝わってくるんです、志麻子先生はっ! 正直、マスターベーションがこんなにも甘く美しく、切ないものとは思っていませんでした。「快楽」という単純な言葉だけでは片付けられない、重ねてきた人生の襞からじんわりとしみ出てくるような奥深さを感じます。これこそ、40代からの性の愉しみなのではないかと、つくづく思わされたのでした。

■驚くほどリアルな刺激の扇風機型○○○

 鼎談のあとには「『一人エッチ』を盛り上げるおすすめグッズ」というページがありました。「家族に見つかっても安心の、ミニ扇風機のようなデザイン」のものや、「自分がどの程度緩んでいるかの目安にも」なるもの、「化粧ポーチにしのばせ」られるものもあります。扇風機のようなデザインって……こんなのあるんですね、勉強になるわ~。

 ルポ「私たち、お金で絶頂感買って何がいけないんですか?」は、性感マッサージや出張ホストなど女性向けの性風俗サービスを体験取材したルポ。料金やサービス内容がごく一般的な主婦の感覚で細かく書かれていてたいへん好感が持てました。もうひとつのルポ「新大久保で韓流のイケメンに胸ときめいて」は、熟女の欲望の街と化した新大久保の今がよくわかりました。不倫やホストを買うといった大仰なことをしなくても、韓流イケメンをたっぷり眺めるだけである程度満たされてしまう、熟女のライトな性欲をしっかりすくいとってくれた点がとてもありがたいと感じました。

 というわけで、どの企画もすべてハズレなし! 筆者史上最高の性特集でした。年齢を重ねたからこそわかる性の愉しみがこんなにあるとは思ってなかったので、この特集を読んで「年をとることは怖くない。欲するままに性を愉しみ、生を愉しみたい」と将来を明るくとらえることができました。ここまで勇気と希望を与えてくれる性特集は、若い子の雑誌にはありません! 「婦人公論」のプライドを見せつけられた思いです。女に生まれてよかったです。40代以上の方はもちろん、20代、30代の女性もこの「40代からの『性』を愉しむ」特集を愉しんで欲しいと思います!
(亀井百合子)

『婦人公論 2011年 10/7号』

静センパイ、パネェ人生っすな……

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