[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「ニンプ、終わった」最後の出産は医者も驚くキム・ヨナ級の一戦

2011/07/09 21:00
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(C)安彦麻理絵

 産まれたのであった、6月22日に。女の子。元気。

 心配していた「子宮口はうまい具合に、開いてくれるのか問題」は、私の怨念(?)で、どうにかなった、かもしれない。陣痛中の内診で「ちょっとまだ固いかな~」と医師に告げられ、それならばと、大魔神のような形相で「柔らかくなれぇ~柔らかくなれぇ~赤んぼが通りやすいような通路になれぇ~」と、丑の刻参りのごとく送った念が功を奏してくれたのか。私の子宮口は、私の人生史上最短で、あっという間にガバガバになったのであった(って、サラっと書いてるけど、実はものすごくえげつない内容のような気がする)。

 医者からも褒められるほどの安産であった。5時間くらい。でもそれは「わたくしの功績」ではなく、「産まれてきた赤んぼの功績」だと、つくづく思う。私はただ「頑張れよ~、あせることないからアンタのペースで道中楽しみながら産まれてこいよ~」と、応援してただけ。「一刻も早くコイツの腹から出てしまいたい!!」と、赤んぼが思ってたかどうかは、さだかではないが(もしかしたら思ってたかもしれない……)とにかく彼女は「キレイに上手に」産まれてきたのであった。例えるならば「フィギュアスケートのキム・ヨナの演技」みたいなふうであった。最後にいきんだ時に、ほんの少々お股が切れてちょっと縫ったのだが、それがなかったらもう審査員から「満点」が出るような産まれ方であった。そんな事を元・「FEEL YOUNG」担当編集のぶえに語ったところ、「フィニッシュは分娩台の上で、キム・ヨナ張りにピストルバギューン!! のポーズをキメてるアビコさんが目に浮かびました」と、言われた……。多分これで人生最後の出産、シメにキム・ヨナポーズとって、やりたい放題やってから、幕を下ろせばよかったんだろうか?

 前回の出産では、産んだ翌日にはもうベッドの上で漫画描いてた。とにかく仕事がしたくて仕方なかったのである。しかし今回は。……なんだかボンヤリしていた。あれだけギャースカしんどかった妊娠期間の記憶が、根こそぎスッポリどこかに持ってかれてしまったようで、まるで浦島太郎にでもなっちまったかのような、そんな時差ボケ感を味わって、噛み締めていた。

 見舞いにきてくれた友人たちと会話してるうちに「シャバの空気感」を取り戻したような気がする。そして、その友人たちを病院の外まで見送りがてら、ついでに浮浪者のようにタバコをたかり、1本もらって外で吸ったその時に「ああ、また元に戻ったんだなぁ」と、しみじみ「ニンプ、終わった」ことを実感した。腹に向かって話しかけても、あの子、もうここにいない。

 ところで、授乳室(赤んぼにオッパイやる場所)で、初めて出産したらしい新人ママ達のトークが素晴らしかった。

「もう、ヘトヘトになってるんだけど、でもここで赤ちゃんの顔見ると、ほんとに疲れが吹き飛ぶよね~!!」
「うんうん!!」
「赤ちゃんがこんなに可愛いものだなんて、産む前は分かんなかった~」
「こんな気持ちになったの初めて!!」
「母は強し!! ってカンジだよね~!!」

 ……さて、私はどうだろう、と、42歳の中年ママは思った……私は子どもらの顔を見ると、疲れが吹き飛ぶ女だろうか……??

 退院後は、約1カ月はまだまだ「寝たり起きたり」の生活をするようにと病院からは言われている。普通の生活に戻るのはそれ以降。それだけ出産後の女性の体は疲れているらしいのである。が。赤子を連れて家に戻ったら、怪獣のごとき3歳児と1歳児が待ち受けていた。「産後はゆっくり体を休めた方がいい」とは言われてるが、そんな理想的な産後ライフは……わたし、子どもの顔見ても別に、疲れ、ふきとばないなぁ~……やっぱり「焼き鳥と生ビール」目の前に出された方が、断然、疲れ、ぶっ飛ぶな~……そっちの方が絶対、目がラン!! ってなって脳みそシャキーン!! ってするけどなぁー……まぁ、世の中には色んなお母さんがいる、ってことで、ね。(赤んぼ、女の子でよかったな、長女のフーちゃんに引き続き、なんか、将来のいい飲み友達が増えた、って感じだよ)

最終更新:2019/05/21 16:33
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