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[連載]まんが難民に捧ぐ、「女子まんが学入門」第21回

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『繕い裁つ人』(講談社)

――幼いころに夢中になって読んでいた少女まんが。一時期離れてしまったがゆえに、今さら読むべき作品すら分からないまんが難民たちに、女子まんが研究家・小田真琴が"正しき女子まんが道"を指南します!

<今回紹介する女子まんが>
池辺葵『繕い裁つ人』1巻
講談社/620円

 洋服をテーマとしたまんがで真っ先に思い浮かぶのは、槇村さとる先生の『Real Clothes』(集英社)でしょうか。百貨店の営業系、企画系のお仕事を描いた『Real Clothes』は槇村先生一流のスポ根的「お仕事マンガ」であり、そこで主に為されるのは自分自身との対峙、葛藤であります。一方、『繕い裁つ人』の主人公・南市江は、祖母が作った町の小さな洋裁店の2代目。友人であり取引先でもある牧は彼女を評してこう言います。「市江はデザイナーでもパタンナーでもないからね/なんか こう もっと人と密着してるっていうか......」と。本作は洋服と人、そして人と人との関係性を描いた、それこそ縦糸と横糸をより合わせるようにして描かれたコミュニケーションの物語です。

 市江にとって洋服とは何でしょうか。「夢見るための洋服を作ってるんです/生活感出してたまるもんですか」「自分の美しさを自覚してる人には私の服は必要ないわ」「着る人の顔が見えない洋服なんて作れないわ」「私 お直し好きなんですよ/皆コンプレックスだらけで それでも少しでもきれいに見せようって一生懸命なの/とても健気で愛しい人たちだわ」。その言葉から透けて見えるのは、洋服とそれを着る人との関係性にとても意識的な市江の姿です。決して独りよがりになることなく、対話するようにして作られる洋服たち。

 市江の洋服にほれ込み、どうにかしてブランドを作ってもらおうと口説き続ける丸福百貨店企画部の藤井は感嘆します。「ああやっぱり この人の服は善意で満ちている/丈の長さが変えやすいよう切りかえられたスカート/透けそうで透けないオーガンジーの重ね仕立て/胸を隠すレースはあちこちちりばめられて違和感がない/あきさせないリフォームの技/完璧だ」

 こうした市江の洋服への考え方が凝縮されたのが第一話です。大量生産・大量消費の象徴であるところの百貨店員・藤井との対話の中から、「オーダーメイド」と「レディメイド」という古くて新しい問題が提示されます。それはつまり、作る人と着る人との関係性をどう捉えるのかという、「職人性」と「効率性」の問題。市江の考えに揺り動かされた藤井は、客と向かい合うべく販売部門への異動を希望します。

 第二話では、市江の祖母が始めたという町の恒例行事「夜会」の様子が描かれます。「夜会」は町の夫婦が恋人同士に戻ってドレスアップする数少ない機会。「祖母がよく言ってた/お洒落は自分のためにするもの/でもとっておきの服は たった一人の誰かのために着るもんだって」と市江が語るように、パーティーには着る人と見る人の関係性があります。町のクリーニング店を描く第三話では、店と客との関係性が、恩師の死に装束を作る第四話では夫婦の関係性が、そして第五話では嫁と姑、そしてかつての恋人との関係性が描かれます。そう、このマンガはことごとくが「関係性」のお話であったのです。

 どの話からも作者・池辺葵先生の思慮深くも愛にあふれたまなざしを感じることができます。それはまるで市江が作る洋服のよう。コミュニケーションの物語である本作は、お仕事マンガであり、はたまた人情マンガでもあり、もっと広く、生きることを思うマンガでもありましょう。俯瞰するその視点は、作家としての強靭な世界観を感じさせます。

 高い完成度を誇りながら、驚くべきことに池辺先生はこれが事実上のデビュー作です。本書は早々に増刷が掛かり、また「Kiss」(講談社)での短期連載も始まって、早くもブレイクの兆しを見せています。優しく静謐な画風ながらも決して雰囲気に逃げることなく、ありがちな「ほっこり系」とは次元が異なる骨太な物語を描く池辺先生。注目すべき新人作家の登場です。

小田真琴(おだ・まこと)
1977年生まれ。少女マンガ(特に『ガラスの仮面』)をこよなく愛する32歳。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている(しかも作家名50音順に並べられている)。もっとも敬愛するマンガ家はくらもちふさこ先生。

『繕い裁つ人(1)』


ほっこり系だと見くびるな!


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