『無銭ひとり散歩』刊行記念インタビュー

辛酸なめ子流ディープスポット攻略法は「ファン心理になって世界を愛す」!?

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『無銭ひとり散歩』(コアマガジン)

 節電、節約ムード漂う現在の日本。日ごろからエコのふりをしてドケチライフを送っている身としては、節電節約にも気合が入ってきますが、貧乏なりにもどこかへ遊びに行きたい……。そんな今の日本、そして東京に最適な本が辛酸なめ子さんの最新著書『無銭ひとり散歩』(コアマガジン)。話題の「東京スカイツリー」に始まり、「新興住宅地のイルミネーション」、「訳ありアウトレットスイーツ」、「ガム取りボランティア」、「ギャル男系ファッションのバーゲン」などなど、参加費無料、あるいは格安で楽しめる東京のスポット32カ所をレポートしています。

 しかし、「有名ヤンキー高校の文化祭」や「ハロウィン山手線ジャック(外国人による深夜の山手線ジャック)」など、とても気軽な気持ちでは行けないような難所も……。心理的ハードルの高いスポットに遊びに行く際の心構えと楽しみ方を、経験豊富ななめ子さんに教わりたい! ちょうどお台場で行われる「痛車」が集まるイベントになめ子さんが取材に行くということで、サイゾーウーマンもお邪魔させて頂きました。まずはビギナーの心構えを教えてください!

――『無銭ひとり散歩』を読むと、世の中にはこんなイベントがあったのか、と驚かされたのですが、なめ子さんはどういったイベントが好きですか?

辛酸なめ子(以下、辛酸)普段から、あまりお金の掛からないイベントに行くのが好きなので、下町でやってるようなイベントの方が行きやすいですね。

――え、取材だけじゃなくプライベートでも行ってるんですか!?

辛酸 そうですね。もし土日ヒマだったら、なにかイベントを探して。誰も一緒に行きたがらないようなものは、本当に一人で行きますね。ちょっと宗教っぽいイベントだと、一緒に行った人がすごい怒りそうな気がするので。この前も、午後1時から夜8時ぐらいまで続く、仏教のとある一派のイベントが無料だったので行ったんですけど、ずっと座り続けるのがつらくて。そういうイベントは誰も誘えないです。一応、友達を誘ったんですけど、「絶対やだ」って言われて……。実際行ったら、本当に誘わなくてよかったと思いましたね。本当にお経が40分ぐらい続く感じだったので。

――ちなみに楽しかったですか?

辛酸 そうですね……、終わった瞬間に解放感みたいなものはありましたけど。

――ヤンキー高校の文化祭や日比谷公園の10円カレーなど、さまざまなイベントが世の中にはありますが、イベント慣れしていない女性はどう振る舞ったらいいのでしょうか。

辛酸 女性だと割とどんな場所にもなじみやすくて、そんなに怪しまれずに行けるっていう利点がありますよね。男性よりも因縁をつけられないというか。ヤンキー高校もどちらかというと、保護者とかの感じで行けますし。無害な女性っぽい雰囲気を出して行けば、どこでも行けると思いますね。変に冷やかしすぎたり、上から目線で行くとあまり楽しめないし、周りの人にもそういう空気が伝わってしまうんですよ。自分もファン心理になって、こういう世界を好きになってみようって気持ちになると、楽しめると思います。私もあまり下調べはせず、偏見を持たないで行くようにしています。

――一緒に行く友達も限定されそうですよね。

辛酸 こういったチープ系のイベントに慣れすぎちゃうと、かえって何千円もする海外アーティストのライブとかに誘いにくくなるので、この手のイベントに行く用の友達とか、分けたらどうでしょうかね。お金ない人、リッチ系の人、趣味の仲間というように整理するとか。

――この本を見ていたら、世田谷区や渋谷区などの東京の西側へのコンプレックスが感じられたのですが……。

辛酸 埼玉出身なので、もともと東京や東京都民に対していろんなコンプレックスがあったんですよね。特に都内のお金持ちが住んでる地域には、ルサンチマンみたいなのがありますし。世田谷区とかに住んでる人で、下町をバカにする人が時々いるんですよ。地方出身なのに世田谷に住んでるだけで埼玉や千葉のことを見下したりとか。プライド意識が高い人が住んでるイメージがあるんですよね。だけど実際に東京に住んでみたり、こうしてイベントを通じて散策してみると、意外とチープなところもあるんだって知って、やっと東京に対して親近感がわいてきましたね。

――東京を克服したところで、次は神奈川県でしょうか。

辛酸 次は一気にロスとかじゃないですかね。

 さて、今回同行した「痛車イベント」は全国から集まった痛車の展示が見所です。なめ子さんは静かに会場を回り始めました。それにならい、我々取材陣もはしゃぎたい気分を抑えて観察に徹してみることに。場の雰囲気に飲まれずに、自分を忘れずにいるのがまずは大切なようです。

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会場近くの駅につくやいなや、目の前に展開された痛車の数々

 会場を埋め尽くすほど並ぶ痛車と、痛車に負けないほどの個性を放つオーナーたちに圧倒されそうになった取材陣。一方のなめ子さんは王女のような気品を保ちながら、会場の隅から順番に展示を見ていきます。早足になったり、顔をしかめたり、大声を出すようなことはありません。「自分もファン心理になって、こういう世界を好きになってみよう」……先に聞いていた言葉ががぜん説得力を持ってきます。展示の一部分や空気だけで分かった気になってはいけないようです。

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カーステで音楽を流しながら、おもむろにダンスを始めた男性陣
に魅了される

 「あまり積極的に誰かと触れ合うようなことはしないです」と話す通り、来場者に何かを聞き出すよりも、なめ子さん自身が「ファン」フィルターを装着してイベントに溶け込んでいます。「あの人形に着せているトレーナーすごいですね」など、こちらはスルーしそうになっていたことをいくつも発見していく様子は、まさにファン!

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痛車だけでなく"痛チャリ"も展示。「どうして自転車なんですか?」と
質問すると......

 この日、なめ子さんが唯一会話をしたのは、アーミールックに身を包んだ「痛チャリ」オーナーの若い男性。車体をじっくり観察した後、なめ子さんがおもむろに「どうして自転車なんですか」とサラっと尋ねたところ、「まだ高校生で運転免許を持っていないんです」とのことでした。それ以上突っ込むのは野暮です。

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なめ子さん始めサイ女も言葉を失った、斬新な展示

 「ファン」フィルターを装着し「偏見を持たない」で彼らの懐に抱かれに行けば、新しい世界に溶けこみ、素直に楽しむことができると、なめ子さんのレクチャーを通じて学んだ今回。場数を踏めば、異文化への関心も高まり偏見もなくなり博愛精神までもが身に付きそうです。「そういえば、最近ギスギスして心に余裕がない」なんてときこそ、ディープスポットに出掛ければ思わぬ効果が実感できるかもしれませんよ! また、このイベントのなめ子さん目線のレポートは7月発売の「BREAK Max」(コアマガジン)に掲載されるとのこと。そちらも楽しみですね。
(大曲智子)

『無銭ひとり散歩―お金をかけずに東京珍スポット見物!』
都内近郊の激安で楽しめる様々なスポットに、辛酸なめ子が約4年間をかけてガチンコ潜入。るるぶには決して載らないディープなラインナップで、一味違った東京見物をしてみませんか?
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・iPhone、iPadアプリ「無銭ひとり散歩」番外編もリリース

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