通販サイトだけのブランドが躍進

立ち上げ3カ月でラフォーレに出店! ウェブと連動するアパレル業界の未来

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「the HepStar」HPより

 2011年2月19日、30年以上の歴史を誇り、ストリートファッションの中心地とも言えるラフォーレ原宿に、立ち上げからわずか3カ月というスピードで直営店をオープンしたブランドがある。その名は「the HepStar(ザ ヘップスター)」。それまではウェブの通販サイトだけで実店舗としてはこれが第一号店というから驚きだ。雑誌での口コミなどから20~30代女性の人気を集め、今回の出店オファーに至ったという。通販サイトしかなかったブランドが、なぜ、短期間でここまで知名度を上げることができたのだろうか。

 そもそもアパレル業界は内部にウェブに詳しい人材が少なく、自社ブランドを持っている会社で通販サイトを作っても、ノウハウがないために運営を続けることが困難になり閉じてしまうケースも多いという。そんな業界にいながら、the HepStarが急成長できた理由は以下にある。

 まず第一に、立ち上げ前に通販サイト運営のノウハウを身につけていたこと。the HepStarを運営するSuiren Design Lab 株式会社は、もともと関連会社で別のブランドを展開していた。そのブランドでは、実店舗を持たず、卸販売と通販サイトだけで運営をしていたにもかかわらず、やがて人気女性雑誌にも取り上げられるようになり、ターゲット層の女性から絶大な指示を受ける人気ブランドとなった。

「その実績があったので、うまくやれば通販だけでもブランドをやっていける確信がありました。スタッフの人件費や賃料などでコストの掛かる実店舗を出す気は最初からありませんでしたね」(the HepStar広報担当中島氏)

 第二のポイントは、ウェブショップの制作・運営を外部のウェブ系業者に任せていたこと。

「社内にはウェブに詳しいスタッフはほとんど居ませんでした。そのため、プロである外部のウェブ系業者にショップサイトの制作と運営の一部を依頼しました。ウェブサイトならではのユーザーに使いやすいデザインは、私たちだけでは作れなかったと思います。一方で、商品写真を撮影する時に、あえて外国人のモデルを使ってブランドの世界観を表現したり、ファッションならではのアピールの仕方は私たちの方が詳しいので、外部の担当スタッフと話し合い、細かいデザイン部分やサイトの雰囲気などを決めるようにしていました」(同氏)

 そして三点目は、雑誌の広告掲載にこだわったこと。

「弊社スタッフの間では、ファッションの広告といえば雑誌だったんです。ウェブ上での広告費より、雑誌での広告費の方がはるかに高いんですが、ファッションが好きという人はファッション誌を読みますよね。ウェブが苦手な人こそファッションが好きな人が多いと思い、ウェブよりも雑誌に積極的に広告を打っていく、という方針は譲れませんでした」(同氏)

 この戦略が結果的に功を奏し、スタイリストなど業界人の目に留まった。女性誌などで数多く取り上げられるようになり、ストリートブランドの間で一気に人気ブランドとなった。やがて、通販を利用している顧客からも「ショップはないんですか?」という問い合わせが増えるようになったころに、ラフォーレ原宿から声が掛かり出店を決めたという。

「直販だけでうまくいっていたので、実店舗を出すことは頭になかったんです。声を掛けてきたのがブランドイメージの近いラフォーレ原宿ではなかったら、まだ今の通販だけで続けていたと思います」(同氏)

 近年、EC市場でファッション業界は目覚ましい成長を遂げている。the HepStarのような事例について、ファッション業界の情報誌WWDジャパンの山室編集長は、次のように分析する。

「the HepStarのような”ストリートブランド”にカテゴライズされるものは、リアル店舗にこだわっていないところが多いんです。彼らのターゲット層でもある現在の20~30代女性は、携帯で簡単に購入することができる通販サイトをよく利用しますからね」

 最近テレビCMでもよく見掛けるようになった日本最大級のアパレル通販サイトZOZOTOWNは、「前年比150~190%の売り上げを記録した」(WWDジャパン・モバイル担当)というから、その勢いがうかがえる。

 ほかにも、商品を購入するだけではなく、ウェブを通じてユーザー同士が売買をするような流通経路もできているという。

「Yahoo!オークションでのファッションの売り上げはすごくいいですよ。ファストファッションなどを安く手に入れて、飽きた服は自分で売り、また気に入った服を安く手に入れるというサイクルが若者の間で主流になっています」(元ギャル雑誌編集者)

 取引する服の値段自体が安価なため、ウェブ上の顔の見えない相手とのやりとりに対する抵抗感も、昔に比べて少なくなってきているようである。

 ウェブの発達によって、若者のファッション文化や、アパレルの売買・流通経路がここ数年で大きく変わってきている。もはや、ファッションの世界に実店舗は必要とされなくなってきているのだろうか?

「ウェブ上での顧客とのコミュニケーションと、店舗でのそれとは、やはり大きく違う部分もあります。店舗に足を運ばなければ得ることのできない体験や価値というものがありますから。今後ウェブが発展していったとしても、それによって店舗の存在価値が下がるということはなく、店舗は店舗でしか実現できない顧客とのコミュニケーションを今後も発達させていくべきでしょうね」(前出・山室氏)

 逆に考えれば、the HepStarは、今までは店舗でしか得ることのできなかったブランドの世界観を、ウェブ上に構築するためにサイトデザインにこだわったこと、直接業界人の目に留まるようなファッション雑誌に広告を載せたことで、うまくウェブと連動し、ターゲットを効率よく集客することに成功した例と言えるだろう。

 今後、ウェブ上でさらに新しいコミュニケーションツールが増えてくれば、店舗でも実現できないような、新しいファッションブランドの在り方が生まれてくるかもしれない。

「WWD for Japan」

店員さんもいつまでも「いらっしゃませぇぇぇぇ」だけじゃダメだよ?

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