ブックレビュー

プラダジャパン、読売新聞社……巨大組織の暗部を照らす『告発の行方』

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『告発の行方』(鹿砦社)

 一般的に、何らかの組織に属していれば、その中で個人の正義を貫くことは難しい。組織にとっては個人の正義よりも組織の安定が最優先事項であり、個人が声高に訴えたところで、それが例えば会社であれば、降格や左遷など今までの日常が壊されるリスクの方が高いからだ。

 『告発の行方―知られざる弱者の叛乱』に寄稿した6人の「告発者」たち(すべてが組織に所属しているわけではないが)は、リスクよりも正義を取った。そして、その代償は想像よりも大きかった。

 「プラダジャパン」に”不当解雇”されたボヴリース里奈氏は、同社で販売統括部長を務めていた。彼女が、同社が社員に対し行っていた強制販売の廃止や、女性社員の地位向上を求めたところ、人事部長から「醜い」「痩せろ」などの嫌がらせが始まり、最終的には「退職同意書」が郵送されてきた。それに対し、東京地裁に労働審判を申し立てると、待っていたのは裁判官からの心ない言葉の数々。「それってセクハラっていうの?」「その年齢でそれだけ給料もらっていればいいじゃない。強制販売ぐらい買えるでしょ」と言われたという。ボヴリース氏は、女性が女性の地位向上を訴えただけで、”フェミニスト”と言われてがんじがらめにされると嘆く。

 また長年、大手新聞社の押し紙問題を提起し続けているフリージャーナリストの黒藪哲哉氏は、読売新聞社から目の敵にされてしまう。「押し紙」とは、新聞販売店で過剰になっている新聞のことで、発行部数の水増しや広告上の媒体価値を高める手段として使われている、新聞業界最大のダブーである。

 押し紙受け入れを拒否した久留米市の販売店主に対し、読売新聞は一方的な商契約の解除をする。店主が地位保全を求めて提訴し、最高裁で店主の地位保全が認められた後でも、読売側は新聞の供給を一方的にストップ。裁判所からの3度にわたる供給再開の仮処分命令にも、いまだに従っていないという。

 さらに読売側は、押し紙問題を追及し続ける黒藪氏に「司法制度を悪用した言論弾圧」(本書より)を始める。氏が「週刊新潮」(新潮社)に寄せた記事と、自身が運営するホームページ「新聞販売黒書」に掲載した久留米市の販売店に関する記事をめぐって、名誉棄損裁判を起こす。また、黒藪氏からの質問に回答した読売側の文面を「新聞販売黒書」に掲載したことを、「著作権侵害」として訴える。詳細は本書で確認していただきたいのだが、いずれの裁判も違法性が低い中で、読売側は訴訟に踏み切っている。

 読売新聞社の問題では押し紙を追及する黒藪氏と、押し紙という不利益を拒否した販売店店主の2人が、ヤリ玉に挙げられるという「悪質」とも言うべき事件だ。

 プラダジャパン・読売新聞社の件はいずれも、個人対巨大企業の構図になっており、個人が負う経済的・社会的負担はあまりに大きい。企業は豊富な資金をもとに、訴訟というプレッシャーで問題をつぶそうとする。世間がこれらの問題を人ごととしてとらえず、事態の経緯を注視することが企業に対する最大のプレッシャーになるのかもしれない。

 その他、本書では「人権」や「反差別」を金看板とする「明石書店」での反人権的問題、戦中の中国人強制労働について鹿島建設の責任を問う「花岡和解」での弁護士の三百代言的行動、JR品川駅前にあった老舗ホテル「京品ホテル」売却と従業員解雇問題、大手サラ金「武富士」の元社員の沈痛な告白などがレポートされている。すべて現実に起きた問題であり、不正や偽善を許さない少数派の叛乱の記録として、一読の価値がある。

『告発の行方』公式ホームページ

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