『結婚問題』刊行記念インタビュー

深澤真紀氏の至言「結婚=自意識の発表会」ではなく、制度として参加すべき

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“リアルな結婚”を容赦なく語って
くれた深澤真紀氏

 婚活がブームから定番化し始めている。女性誌は”結婚によって輝ける私”をうたうマシーンと化し、そもそも「結婚」とは何であるかを見えにくくしている。深澤真紀氏の近著『結婚問題』で描き出されるのは、歴史的な考察とデータを用い、希望的観測を排したところにある、制度としての結婚。「結婚=制度」という思想は、結婚市場でさまようウエディングジプシーにどんな影響をもたらすのか、話を伺った。

――結婚の「参考書」と銘打たれた本書『結婚問題』。客観的な結婚制度についての話を書こうと思ったきっかけは?

深澤真紀氏(以下、深澤) 私自身、結婚にはあまり興味がないんですが、「草食男子」を名付けたせいで「結婚できないのは草食男子が増えたからですか?」などと、皆さんからよく結婚の相談をされるんですね。話を聞いてみると、「理想の相手にめぐり合えない」「尊敬し合えないと無理」など寝言(笑)みたいなことばかりで。違うでしょ、結婚なんてしょせん制度に過ぎないんだよと話すと、「そんなことない!」と突っ掛かってくるんですよ。これは重症だと思いまして。

――聞いているだけで、耳が痛いです。そもそも、どうしてこんなに結婚問題をこじらす人が多いのでしょう?

深澤 バブル期に女性の人生の選択肢が増えたというのはあると思います。しかし、恋愛結婚がお見合い結婚を上回ったのというのは30~40年の話。しかも、恋愛結婚と言っても、実際は職場結婚という「会社が主催する大きなお見合い結婚」に乗っ掛っていただけ。バブルの崩壊とともに、会社が”お嫁さん候補”である女性を雇う余裕がなくなり、誰も結婚をお膳立てしてくれなくなったんです。数ある選択肢の中で、結婚自体の目的を見失い、路頭に迷っている……そんな状態ではないでしょうか。

――結婚に失敗したくないという恐怖心が強いようにも思います。

深澤 「女は心に女性誌の見開きを持っている」と思うんです。自分がそこに登場して人生を語りたいという自意識の塊で、常に「観客」を意識しているんですね。そして結婚は「自意識の発表会」で、観客を喜ばせなければと思い込んでいる。だから、「居酒屋でプロポーズされたのを、八景島のイルカの前でやり直しさせました!」って鼻息荒く報告する人が本当に居るんですよ。そもそも八景島は居酒屋よりも「すてき」なのかという話(笑)。すてきの要素がディズニーランド的西洋のハリボテでしょう。

――本にも登場しますね。ゲストハウスウエディングへの執着に代表される、欧米コンプレックス。

深澤 私たちが二重に苦しいのは、日本人であることと女性であることです。西洋思想の限界も見えているが、東洋の儒教的価値観にも戻れなくなって、そうなると「稼がないうちは結婚できない」とまじめにならざるを得ない。それが「負け犬」「草食男子」として現れるわけです。そして「女性は輝かなければ」というプレッシャーもある。あの国のいいところ、あの有名人のいいところ……いろいろなモノのいいとこ取りをするあまり、徐々にマイナス要素には全く目を向けられなくなってしまう。特に、結婚に関してはマイナスも多いのに。

――価値観が多様化し、情報があふれる中で、私たちはどのように物事を”選択”していけばいいのでしょうか。

深澤 まず大前提として「選べることは幸せなこと」であると知りましょう。バブル期に「功」があるとしたら、女性の選択肢が増えたことです。長く女性に選択肢は与えられていなかったわけだから。そして、選択肢が増えたからといって、すべてを選び取る必要はないこと。「海外で生活するのは無理」「専業主婦は向いていない」など、できないことを消していって、残ったものを選べばいいと思います。メリットとマイナスの折り合いをどこでつけるかじっくり見比べて、自分が不幸にならないことを考えましょう。幸せは、他人に羨望されることでかたどられる非常に抽象的なものですが、不幸は個別なものなんです。不幸にならないことに比重を置いた方がいい。

――多くの人が「結婚」そのものについて考えず、”結婚後の自分”にしか目がいっていないように思います。

深澤 結婚は夢物語として語られる一方で、非常に雑にも扱われている。皆さん口では「尊敬し合える相手と一緒にいたい」とおっしゃいますが、本音は「誰からも選ばれない女だと思われたくない」だけなんじゃないかな、と思うんです。結婚できないという風評被害に、おびえているだけ。自分の価値を示す、大学の卒業証書みたいな役割を結婚に求めている。とりあえず持ってないと、というような。でも実際は、卒業証書を持っているだけじゃ、何の役にも立たない。結婚してるかどうかで人を判断するような時代は、とっくに終わったと思うんですけどね。

――そう考えると、ギャンブルでも夢物語でも卒業証明書でもなく「結婚は制度」という割り切り方が一番しっくりきます。

深澤 「結婚なんぞしょせん制度で、制度だから参加すれば良いことも嫌なこともあります」なんて、当たり前で身もふたもない話。でも、当たり前なんだけど「入籍」「本籍」などの制度を正しく理解している人は驚くくらい少ない。「婚活」という言葉がいいと思う面は、就職活動と同じように結婚をドライに考えているところ。会社員は1日何時間か拘束される代わりにお給料をもらうわけでしょ? 結婚だって同じで、他人と暮らすことでストレスもトラブルもあるし、一方で安心だったり楽しかったりもする。冷静さを失うと、結婚ジプシーになっちゃいますから(笑)。結婚で大切なのは冷静な判断、正確な知識。制度を知らないで結婚したら痛い目に遭うに決まっています。『結婚問題』は「いい思いをする」ための本ではなく、「痛い目に遭わない」ための本ですから。
(インタビュー・文=西澤千央)

深澤真紀(ふかさわ・まき)
1967年東京生まれ。コラムニスト・編集者。企画会社タクト・プランニング代表取締役社長。著書に『仕事の9割は「依頼術」で決まる』(双葉新書)、『女はオキテでできている―平成女図鑑』(春秋社)、『草食男子世代―平成男子図鑑』(光文社知恵の森文庫)ほか多数。

『結婚問題』

お金のない結婚生活なんて!と思いつつ、運命の人とのゴールインも捨てられない。挙式の方法、親との関係、夫婦別姓、不妊治療。選択の時代故に、悩みは深い。理想と現実のはざまで揺れないための、とことんリアルな「参考書」。

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