[女性誌速攻レビュー]「STORY」6月号

「何、この煮しめ色!」、「STORY」でバブル世代とDJK世代が激しいバトル!

2011/05/03 16:00
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「STORY」(光文社)2011年6月号

 今月号の「STORY」、特集は「セレクトショップの達人になる!」です。”もしも富岡佳子さん(表紙モデル)が、セレクトショップのカリスマ店員だったら”という体で、「オシャレの森=セレクトショップ」を紹介しています。ショップやアイテムの紹介に終始してカタログ化しそうな企画を、ドリフ直系の「もしもシリーズ」で乗り切る妄想力は、さすが「STORY」。といっても微笑む富岡佳子に「わぁ、お似合いですね♪」「サイズ、いかがですか?」と吹き出しで言わせているだけなんですけど。こんな美人店員に「何かお探しですか?」なんて言われた日には「じゃ、ジャストルッキング」と尻尾を巻いて逃げだしたくなりますが、読者の方々ならそこは堂々と「普段着だけど、ホテルのラウンジにも行けるような、ほら、LAセレブみたいな服ありますか?(原文ママ)」と言えちゃうのでしょうね。輝ける40代に向けて、今月も勉強させていただきます。

<トピックス>
◎大特集 セレクトショップの達人になる!
◎バブル世代 VS DKJ(団塊ジュニア)世代 真夏のシーン別頂上決戦!!
◎STORYモデルズ、「超個人的」キレイの秘密ランキング

■バブルvs団塊ジュニアの終わりなき闘争

 今月、特に注目したいのが「バブル世代 VS DKJ(団塊ジュニア)世代 真夏のシーン別頂上決戦!!」です。レビューでも散々紹介してきた読者世代間の軋轢を、ここにきて「対決」の形でもってきた「STORY」。これは必読、面白い。

 まず世代別の特徴をファッションやカルチャーごとに分析。ファッションポリシーはDKJが「ゆるい、着やすい、地味色が大好物」なのに対し、バブル世代は「きちんと、品よく、華やかに、が鉄則」。好きだったアイドル「何と言ってもトシちゃん&マッチ(DKJ)」「郷ひろみ&西城秀樹(バブル)」。忘れられないドラマ「”カーンチ”が決まり文句の『東京ラブストーリー』(DKJ)」「『ふぞろいの林檎たち』『金妻』(バブル)」。誰もが読んでいたマンガ「『ホットロード』を代表とするヤンキーマンガ(DKJ)」「陸奥A子みたいなおとめちっくマンガ(バブル)」。

 「BBQ決戦」「リゾート決戦」「ランチ女子会決戦」「ラウンジ決戦」とシーン別のファッション対決が企画の中心となっていますが、はっきりいってそれがちっとも目に入ってこないほど、それぞれの主張が生々しく過激。「いつでも頑張ってオシャレしてます感がイタ~い」「カラフル金魚じゃあるまいし、なに!? あの原色集団」とDKJがディスれば、「普段着とよそ行きの区別もつかないの? それじゃパジャマよ!」「そのドブネズミ色、モテない女が着る服よ!」といきりたつバブル世代。特にバブル世代が放つ「川口浩探検隊みたいな格好しちゃって、虫カゴがお似合いね」「何、この煮しめ色! 草木染めかと思ったわ~」という主張に漂う初老感にノックアウト。煮しめって!

 「お互いのいいところ、勉強しよ」と結んでありましたが、そんなキレイごとで終わるハズないですよね~。「デヴィ夫人vs叶姉妹」のように、折ある毎に対決して読者を楽しませていただきたいです。最終的な読後感が「どっちもどっち」というのも、また清々しい。

■岸和田のど根性に学ぶ

 久々に「STORY」らしい、パワフルなファッション特集を読んだ後は、これまた力強いおかあちゃんページを。連載「私たちのCHALLENGE STORY」にデザイナー、コシノ三姉妹が総登場。偉大なる母、小篠綾子さんを語っています。扉の4人の写真だけで破壊力は相当なもの。

 女手ひとつで3人の娘を育て上げ、それぞれを世界的なデザイナーとして巣立たせた小篠綾子さんの人生は「ママ友とのランチが最近退屈なんですぅ」とのたまう「STORY」読者(※筆者の想像より)にはちと刺激が強すぎるか、というくらい波乱万丈。忙し過ぎて子どもの相手が出来ないから、1週間に13個もの習いごとをさせられたという三姉妹。教育に関しては基本的に奔放でありながら、絵が得意だった長女・弘子のために「物資不足の戦後、大阪の画材屋さんまで電車で行って、物々交換で三段重ねのパステルを買う」など、才能を伸ばすための苦労はなんのその。

 その他、妻子ある男性との不倫の日々、77歳にして自身のブランド立ち上げ、晩年には「90人はいる」と豪語した男前のボーイフレンドと老後を楽しみ、誰にも迷惑をかけずひっそりと息を引き取った綾子さん。娘たちは綾子さんから、「ハングリーさ」という財産を受け継いだと話します。姉妹げんかは決して仲裁せず「勝ったもん勝ちや」と鍛えられた一方、どんなに忙しくても家族の食事は手抜きをしない小篠家の理念は、キレイごとを並べたがる現代の家庭事情が学ぶべきところではあります。

 「未曾有の震災にどう立ち向かうか」、今回の企画もそれがテーマとなっています。これから生活レベルが下降線をたどっていくのは日を見るより明らかであり、特に「モノ」欲をモチベーションとしていた女性誌がその状況にどう対応していくのか、興味深いところです。「家族の絆」というあやふやなキーワードで、いつまで乗り切れるのか。それにしても小篠家を引っ張り出するのはいいとしても、参考にするにしてはレベルが高すぎます。

 この震災の精神的影響を「STORY」でいち早く露呈したのが、何を隠そう林真理子先生でした。連載「出好き、ネコ好き、私好き」にて、「いつのまにか下流に落ちていく恐怖」を語っています。半ば逆ギレ気味に「そんなことわかってる。わかってるわよ。豊かさを幸せって思っちゃいけないんでしょ。ということはエコ系自然派おばさんになれって……」と先生。物欲のない先生なんて、性欲を失った火野正平みたいなもの。誰も期待してませんって。連載の最後は「具体的に何をしていいかわからない。が、とりあえずしたことはクローゼットを整理すること。(中略)古いものをコーディネートしていくことに決めた」と締めくくっており、ひと安心。「田舎にこもって農業やります~」とか宣言してなくて、本当に良かったです。デーブ・スペクターのダジャレがつまらないうちは、林真理子先生がヨーガン・レール系に走らないうちは、日本はまだまだ大丈夫だと思います。
(西澤千央)

「STORY」

この対決は、すべて「STORY」編集者の心の声ですよね?

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最終更新:2011/05/06 13:14
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