[連載]海外ドラマの向こうガワ

全世界の人が2分17秒気を失ったら? 『フラッシュフォワード』の魅力

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『フラッシュフォーワード』(ウォル
ト・ディズニー・ジャパン株式会社)

 ここ数年の間、アメリカテレビ界では、ベストセラー小説を実写化したドラマが続々と制作・放送されている。ベストセラー本は、一般大衆受けがよい作品ということであり、ドラマ化しても人気が出る可能性が高い。ストーリー構成もキャラクター設定も、しっかりと出来上がっているという大きな利点もある。読書をあまりしないと言われるアメリカ人だが、ニューヨーク・タイムズ紙で毎週日曜日に発表される「各分野のベストセラー・リスト」に登場する本のタイトルは知っている人が多い。これらの要因から、ベストセラー本を原作としたドラマは、視聴者を引き寄せられると考えられているのだ。

 2007年9月に放送開始された『ゴシップガール』は、02年に第1巻がリリースされた同名人気小説シリーズをドラマ化したもの。『Sex and the City』の原作を執筆したキャンディス・ブシュネルが05年に発売したベストセラー小説『リップスティック・ジャングル』も同名タイトルでドラマ化され、ブルック・シールズが主役を務めた。

 映画『トワイライト』が巻き起こした吸血鬼ブームの波に乗る形で、09年9月にスタートした人気ドラマ『ヴァンパイア・ダイアリーズ』も、L.J.スミスの大ヒット小説シリーズが原作となっている。この作家のベストセラーである魔女小説『Secret Circle』も、来期(2011~12シーズン)放送される予定になっている。また、大物アカデミー監督オリバー・ストーン(映画『プラトーン』、『7月4日に生まれて』など)も、『Still Holiday』という小説をドラマ化する契約をTV局と結んでおり、撮影着手が間近と見られている。

 09年9月に、カナダのSF作家ロバート・J・ソウヤーが執筆した、未来視体験を経験した人々の心理や行動を描いた小説がドラマ化された。ミステリー、サスペンス、SF、アクション、ヒューマンドラマ、愛など、さまざまな要素がギュッと詰まった『フラッシュフォワード』である。

 物語の主人公は、FBIロサンゼルス支局に勤務する捜査官。パートーナーを組んでいるアジア系の同僚と、テロリストを車で追跡中に突然意識が飛び奇妙なビジョンを見る。意識が戻った時、彼は潰れた車の中にいた。這いずり出て、彼は自分の目を疑う。まるで戦場のような大惨事が起こっていたのだ。人々は、口々に「急に意識を失った」と言い、恐怖に怯え、パニックに陥っていた。支局に戻った主人公は、世界中の人々が全く同じ時間に、2分17秒もの間意識を失っていたことを知る。それだけではない。その2分17秒の間、人々の意識は6カ月後の世界に飛んでいたのだ。

 これまでにも、時空空間を移動するというSFドラマはあったが、世界中の人々が一斉に未来視体験をするという作品はなかった。6カ月後が良い世界であった人もいれば、悪い世界であった人もいる。そして、何も見なかった人も。希望が持てるようになった人もいれば、夢も希望もなくなった人もいる。未来を知った人間が、どのような心境に陥り、どのような行動を取るようになるのか。作品では、メインキャラクターたちの心が変化している様子を見事に描いており、物語に深みを与えている。

 実は、このドラマは当初アメリカで最強のエンターテインメント・チャンネルと称されるプレミアムケーブル・チャンネル「HBO」での放送が企画されていた。しかし、幅広い年齢層に楽しんでもらえる可能性が高いと判断され、地上派チャンネルで放送できないか模索。カルト的なファンが多い『LOST』を放送していたABCネットワークが、『LOST』に続く作品になるかもしれないと放送権を獲得し、制作・放送することになった。

 ABCは『LOST』のパイロット(シーズン1の第1話)に10億円を超える製作費を掛け大きな話題となったが、『フラッシュフォワード』のパイロットも同規模の費用をかけて制作したと伝えられており、放送開始直後の15分間は大迫力シーンが展開する。パイロットの視聴率は上々で、他局と厳しい競争を繰り広げている木曜日のプライムタイムに放送されたにもかかわらず、1,250万人の視聴者を獲得。これを受けて、世界中の100を超える国と地域で放送が決定した。日本でも、4月からテレビ朝日系で放送が始まり、竹内結子も登場する。

 小説を実写化した作品は、脚本家たちに手を加えられドラマ風にアレンジされる。原作のどこに着目し、何に焦点を当てて描こうとするのかは、脚本家チーム次第で、原作から大きく離れていくケースも少なくない。『フラッシュフォワード』も、原作では「主人公は科学者」「世界中の人々が21年後の未来で何をしているかを、1分43秒経験する」「最初の舞台はスイス・ジュネーブ」となっているが、ドラマでは「主人公はFBI捜査官」「世界中の人々が6カ月後の未来で何をしているかを、2分17秒77経験する」「最初の舞台はアメリカ・ロサンゼルス」と、かなり大幅に変更されている。この作品の場合、原作を手掛けたロバート・J・ソウヤー本人が脚本家チームにも入っており、全エピソードを監修しているため、物語の一番伝えたい、核になる部分がぶれることはない。

 小説には日本人の登場人物が多く登場し、物語に読者を引き込むテンポ良いストーリー展開になっているが、ドラマも個性的な登場人物が多くパズルをはめていくようなスリル感がある。小説は小説として楽しめ、ドラマはドラマとして楽しめる。作者の伝えたいストーリーを、いろいろな角度からとらえることができるのが、『フラッシュフォワード』なのである。

 なぜ、世界中の人々が未来視体験をしたのか。ドラマでは、エピソードを重ねるごとに、一枚ずつ謎のベールがはがされていく。そのストーリー構成は見事で、シーズン2は、さらに謎の奥に突き進めるのではないかと期待が高まった。しかし、シーズン1後半で視聴率が失速したため、『フラッシュフォワード』はあっさり打ち切りとなってしまったのである。続きを楽しみにしていたファンが、放送継続を求めて、ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴなど大都市にあるABC事務所前で大規模な停電を起こす、というデモも行われた。残念ながら、局の判断は覆らなかったが、シーズン1で終わったことは、逆に良かったのではないかという意見も出た。

 過去にも、ジーナ・デイヴィスがアメリカ初の女性大統領を演じた政治ドラマ『マダム・プレジデント~星条旗をまとった女神』がシーズン1で打ち切りとなっているが、こちらも名作といわれており、今なお人気がある。長寿ドラマとならなくても、良い作品は、長く語り継がれる。『フラッシュフォワード』も、間違いなくそのカテゴリーに入るだろう。

『フラッシュフォワード Vol.1 [DVD] 』

竹内結子の鼻の穴が未来を決める

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