[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」5月7日号

「婦人公論」の「女の友情」特集に仕掛けられたドロドロの落とし穴

2011/04/30 21:00
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「婦人公論」5月7日号(中央公論
新社)

 いつも男の存在を軽んじがちな「婦人公論」。今号の特集は「一生ものの友達をつくる」です。「一生ものの友達」というのは、セックス友達ではなく女友達のことです。表紙には「日本に希望を 女性の力を信じて!」と赤字のメッセージ。非常時に当たり、「頼れるものは男ではなく女友達」というメッセージを強烈アピール。友達づくりは筆者個人としてはかなり気がめいるジャンルなんですが、おそらくそう思っている読者が多いからこういう特集が組まれるんでしょうね。仕方ないので中身を見てみるとしますか。

<トピック>
◎特集 一生ものの友達をつくる
◎香取慎吾 笑顔でいれば、きっと前に踏み出せる
◎中島美嘉 復帰作の新曲「Dear」に込めたメッセージを映画館で体感してほしい

■やっぱりキレイごとだけじゃ終わらなかった

 トモダチ特集の扉ページを開くと、3月で東大を退官された上野千鶴子センセのインタビュー。いきなり最初からして面倒な……あ、いやいや、ためになる企画ですネ。女嫌いだった上野センセが女の友情に目覚めたのは20代後半だそうです。

「学生運動で男との関係に絶望してからは、男って何の役にも立たない、とだんだんわかってきました」
「自分にとって非常に切実な問題を、どんなに身近な男でも決して共有することはできない。にもかかわらず、どんなに嫌いで疎遠な女でも、女であるというだけの理由でわかり合えることがある」

 とのこと。やっぱり黒柳徹子の老後の面倒をみる、と言っている人は体得してきたことが違うわ~。そうじゃないと、トットちゃんの老後という、宇宙レベルの未確認地帯に足を踏み入れようとはしませんもんね。次は、清水ミチコと光浦靖子の対談です。二人は11歳も年の差があるにもかかわらず、言いたいことを言えるフラットな関係。適度に距離もある「ソウルメイト」なんだそうです。清水ミチコがこんなことをおっしゃってます。

「女の友情って、おばさんになってからこそ、という気がする。年齢を重ねるほど、いい距離感でつきあえるようになってきている気がするんだ」
「脳みそのつくりが同じだから男といるよりいっしょにいてラクなんだよね。人生の後半を充実させるには、一生ものの女友達を持つこと。これに尽きるんじゃないかな」

 とても美しい発言ですネ。確かに、女友達は男たちよりも共感できる部分が多いです。共通する趣味も多いです。しかし、しかし、しかし、それ以上にリスクが大きいのも事実ではありませんか! 違いますか!? 

 そこを触れずして女友達は語れまいと思ったら、さすがは我らが「婦人公論」、手抜かりは一切ございませんでした。特集の最後の最後に読者体験手記が2本掲載されているのですが、2本とも背筋が凍る体験談でした。テーマは「まさか、あなたに裏切られるなんて……」。「親友」が悪魔に豹変し、太いクギで車に傷を付けられたり怪文書を流されたり、すべての秘密をぶちまけられたりした恐怖が描かれています。さんざん女友達をアゲといて、この手記でシメる。女の恐ろしさを特集全体で体現しているようです。これは、女のウミ出しエキスパート「婦人公論」にしかできない技ですね。最後に妙にスッキリしました。

■今、僕にできることは月9ドラマ

 香取慎吾のグラビア「笑顔でいれば、きっと前に踏み出せる」が掲載されています。インタビューは、まず震災時どこに居たかについてから始まります。

「地震が起こった時、たまたま仕事がオフで、僕は家にいたんです」
「町が波にさらわれていくあの光景を見て、僕の心も真っ白になってしまいました」
「とても大変な思いをされている方々に、『がんばってください』という言葉をかけていいのかどうか、内心迷った部分もあったんです」

 そんな葛藤と「日本中が大変な状況のなかで、僕が改めて考えたのは、人との繋がりの大切さです」と言った後で、「今の僕が、ドラマ『幸せになろうよ』で周囲に幸せを運ぶ人になることには、何か意味があるのかもしれません」と強引にドラマPR。

「テレビを見た人たちが、少しでも笑ってくれたり、元気になってくれたらいい。それこそが、今、僕が一番やるべきことじゃないかと、そんな気持ちで、ドラマに取り組んでいるところです」

 たいへん申し訳ないのですが、最近芸能人のこうした発言には正直げんなり。ドラマ主演の話は震災のずっと前から決まってたことだし、「テレビに出て笑わせる」も震災前からずっとやってきたお仕事じゃないですか。特別に「今だからやるべきこと」ってわけでもないですよね。一言でいえば「普段通りでいきます」ってことですね。無理やり震災に絡めて意味付けしなくていいよ、もう~。

だったらコロッケみたいに被災地で”芸”を見せて!

 香取慎吾だけじゃないんです。数ページ後に掲載されている中島美嘉のインタビューも、まずは震災の話題から。

「あの瞬間、私は東京にいて、自宅近くのカフェで友達とお茶してました」
「被害に遭われた方々がどれだけ心細かったか、怖い思いをなさったかと考えると胸が痛みます」
「あれから、いつも考えているんです。『自分に何ができるのだろう?』って」
「復帰作を発表するタイミングと重なったというのが偶然だとは思えなくて」
「私の歌声が心に届くことで、哀しみを癒したり、元気を取り戻したりするための支えにしていただけたら嬉しい。歌で日本中の人たちを勇気づけることが私の使命なのだという気もしています」

 え、デジャヴ? ってくらい同じことを語っているんですけど~。しかも「歌で日本中の人たちを勇気づける」って……。復帰と震災はまったく関係ないでしょ。判で押したように同情と激励の言葉を並べるのは芸能人だから仕方ないにしても、震災と個人の活動を「偶然ではない」と結び付けるのは、心の中だけにしまっておいてほしいと思います。被災地の方に失礼!

 「婦人公論」では、前号から「緊急企画 地震大国 日本に生きる」を組んでいます。真正面から取り組んだ記事なので「婦人公論」らしさは薄いですが、芸能人の”共感”コメントよりかはよっぽど読後感がよろしいかと。次号はいよいよ「官能特集 ほんとうのオーガズムを味わいたい」があります。久々のエロネタですかね!? 楽しみです。
(亀井百合子)

「婦人公論」

反発力も強いけど、共感力も強いのがオンナなんです

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最終更新:2011/04/30 21:00
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