噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第70回】

数字を改ざんしていた東電、「ただちに影響はない」に隠された意味

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「女性自身」4月16日号(光文社)

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の”欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

第70回(3/31~4/5発売号より)

 昨日、コラムニストの勝谷誠彦氏が被災者の就職難について、情報番組『スッキリ!!』(日本テレビ系)で怒っていた。「企業は(社員の給与を減らしても)ワークシェアリングしろ!」と。どんなブラックジョークかと思った。日本テレビは昨年、新賃金制度で賃金カットに反対するため24時間ストを打ち、「平均年収1,200万円のくせに」と不評を買ったメディアだ。社員収入を半分にすれば、かなりの雇用が可能だと思う。自社電波でワークシェアリングを主張するなら、まずは自分たちからだろう。まあ、勝谷氏は日テレの社員じゃないけど。

1位「福島第一原発で封印されていた被曝作業員の『血液がん死』!」(「女性自身」4月19日号)
2位「放射線が発生させる5年後の病気全一覧」(「女性自身」4月19日号)
3位「なぜすぐに開放しないの? 東京電力の”豪華保養所”」(「女性自身」4月19日号)


 あまりに腹立たしいのでランク外だが、「女性セブン」の「日本の女性ができること」という記事はひどい。タイトルを見ただけで反吐が出るし、内容も曽野綾子、橋田壽賀子といったおばちゃんたちの「精神論」が満載だ。「つつましやかに」「自分の身は自分で」が続き、挙句「戦争中に比べたら」って、問題をすり替えるな!

 高濃度の放射能水がダダ漏れの中、「ただちに健康被害はない」とオウム返しのように繰り返す政府や東京電力。だが、これまでの状況を見て、「そんなことが信じられるか!」というのが多くの国民の気持ちである。それを実証し、さらに近い将来、日本を襲うであろう現実を見せ付けてくれたのが今週の「自身」だ。

 まずは1位の被曝作業員記事だ。38年間にわたって原発労働者を取材してきた樋口健二氏が、下請け、孫受け作業員へのピンハネ、東電社員が近づかない危険な現場での作業、被曝の実態などを赤裸々に語っている。中でも注目すべきは東電の卑劣な隠蔽体質だ。約9年間原発内で働き、29歳で白血病で亡くなった青年は、「放射線管理手帳」の数値が改ざんされていた。「血液のがん」を発症した作業員は、被曝が原因だとして労災認定を受けたが、損害賠償訴訟では因果関係が認められなかった。それどころか裁判所は「血液のがん」だという診断さえ認めなかったという。他にも労災と認められた案件が電力会社によって「原発内の作業との因果関係」を否定され、賠償金も払われない。作業員たちは電力会社によって使い捨てにされてきたのだ。

 これは今回の原発事故でも近い将来、起こる事態である。数年後、もっと大規模になって勃発するであろう恐怖のシナリオだ。今回の原発事故でも「協力会社」という名目下、多くの下請け作業員が懸命に復旧作業を行っている。自衛隊や消防も高濃度の危険地帯に入っている。東電は彼らにどんな保障をするのだろうか。10年後、彼らの中から放射能に由来する病気を発症する者がいるはずだ。しかし、東電は過去の判例を持ち出し、「因果関係は認められない」といって逃げるに違いない。裁判所もまた”国策”を優先し、被害者よりも東電側に有利な判決を出す。政府もそれに追随する。「健康に影響はない」と繰り返すこの言葉こそ、その時のための布石なのだ。

 それは何も現場で働く人だけにはとどまらない。それが2位の記事だ。人体に影響しない放射能などない。どんなレベルであろうと危険なものだ。不妊症、死産、早産と女性に関連するものが多い。

 御用学者たちや一部メディアは、レントゲンやCTスキャンの被ばく量と比較して「安全だ」だと主張する。ではなぜ、妊婦はレントゲンを避けるのか? 影響があるからだろう。しかもレントゲンは一瞬のことだが、現在起きている放射能漏れは恒常的なものだ。さらに今後想定される食物からの内部被ばくはさらに深刻だ。しかもこの事態がいつ終息するのか、誰も明言しない。闇雲にパニックを煽る必要はない。しかし、「正しい情報が伝わっているか」といえば、それは否である。

 「自身」によると、5歳までの子どもや妊婦は1日に浴びる放射線量が1マイクロシーベルトでもさまざまな病気のリスクが増えるという。また厚労省は原発事故後、放射性ヨウ素の安全基準をこれまでの30倍に引き上げた。そもそも安全基準が妥当かどうかの議論もない。野菜などの暫定規制値も、食品衛生法には放射性物質の規制値がないため、急遽決められた数値だ。しかも政府は規制値を緩和しようとさえした(結局は緩和しなかったが)。さらにチェルノブイリの健康被害についても過小評価した報道がなされている。

 現場作業員の被曝評価、因果関係がないと主張し続ける東電が、今後遠く離れた一般の妊婦や子どもの健康被害に責任を負うはずはない。「因果関係は認められない」のだから。さらにこの国は本気で国民を守るつもりがないように思える。先の戦争とまったく同じ構図、大本営発表を繰り返し、人命を軽視する。今回のような放射能汚染は世界でも類をみない。海洋汚染に加え、首都圏にまでダラダラと漏れる放射能。今後起こる健康被害も因果関係を含め未知数だ。もはや自己防衛しか方法がないのかも。

 こんな事態にも関わらず、東電の態度はなぜか他人事に見える。記者会見もしかり。また福島第一原発の最前線で働く自衛隊や消防が休息する「Jヴィレッジ」(東電管轄)では、東電が豪華宿泊施設を「汚く荒らされるから」という理由で使用させず、彼らは雑魚寝状態だと「週刊文春」でも報じられた。

 それだけではない。「自身」によれば、東電が保有する多くの豪華保養施設は休館状態で、研修センターや空き部屋のある独身寮も、「被災者受け入れ」をしていないという。多くの自治体や赤坂プリンスなどの民間が被災者受け入れをしているにも関わらず――。しかも「自身」の取材に対し、東電は不条理とも思える言い訳をするばかり。自分たちのせいで避難せざるを得ない原発20キロ圏内の人たちに、率先して提供しようという気はさらさらないらしい。自己保身と事なかれの官僚体質。今回の原発事故の最も大きな要因である。

『原発と地震―柏崎刈羽「震度7」の警告』

そして、今まで原発に無関心だった我々も要因の一つです。

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