[不定期連載]同じアホなら、見るだけで。【番外編】

スタートから終わりまですべてが不安過ぎる、今話題の「雪かき婚活イベント」

――「踊る阿呆に見る阿呆、同じアホなら踊らにゃ損々」と言うけれど、どうせ同じなら「見るだけ」の方がだんぜん楽でしょ! ということで、日本中、いえ世界中の「変な大会」をナナメ切り。参加者、観客まで余すことなくウォッチング。

 婚活イベントというものはたいていは、合コンパーティーの体裁が多い。その中で珍しいものを発見した。「豪雪地に雪かきボランティアをしに行こう!」というものである。しかもこの婚活イベントを開催しているのは、婚活支援をしている「NPO ●●」という団体。4,000円と値段も安価で安心。何しろNPOだから。会費を回収すべくギラギラと相手を見定める婚活パーティとは違い、素朴にボランティア活動に精を出す男女が集うこのイベント、こればかりは見てるだけではアホでしょう! というわけで、今回はやってみることにした。

 集合は、イベント前日の深夜の新宿。夜行バスで仙台に向かう。募集は男女20名ずつの計40名だ。直前に急遽女性を2名追加募集していたので、急遽空きでもできたのか。夜行バスには、ボランティアに向かう婚活男女でひしめいているはず。いきなり寝顔を見られてしまう恥ずかしさはあるけれど、最初に素の自分を見せてしまえば、後は怖いものなし。なかなかいい趣向である。

 集合場所へ行ってみると、小さなデスクを囲み、私を入れて4人が集まっていた。他の参加者は集合に遅れているんだろうか。確かにバスの出発まではあと30分もある。と思っていると、そのうちの一人が口を開いた。

「ではこの4名で、現地へ向かいまーす!」

 はあ? 今なんて? しかも男性2人のうち1人は主催者なので、実質参加者は男1人、女2人ということになる。その上、二手に別れ、先発バス組と後発バス組と2名ずつに分乗するらしい。なんでバスは別々なんだ? 道中、「銀座で働いてますー」「アフター5はゴルフで」という会話をするもんじゃないのか?

 あっ、そうか! 現地集合組が多かったのかな。募集要項によると、1.新宿から深夜バス組、2.仙台駅集合組、3.雪かき現地集合組に分かれているのだ。そうだ、雪かきをしようなどという気骨の入った女子は、マイカーで現地に向かっているのに違いない。

 見知らぬ女性と隣に座り、早朝、仙台駅に到着。驚くほど雪がない。っていうか、雪がない。ここからまた移動するらしいけど、本当に雪はあるのか? そんな不安を胸に「到着したら連絡してください」と言われたので、主催者に電話してみる。しかし出会えない。なんとここから30分、たっぷりとこの深夜バス組4人は出会うことなく氷点下の仙台駅前をうろつくハメになったのである。

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 主催者(と参加者)は、女2人が待つコンビニを探して、駅の反対側にあるコンビニをウロウロと5軒も見て回ったそうである。おい主催者、なぜバスの到着場所くらい調べておかない? なぜさっさと集合場所を指定しない? そしてなぜ、到着した場所で待っていただけなのに「なんで移動するんですか」的に文句を言い、「駅ビルにいてくれると助かるんですけどねえ」などとイヤミを言う? しかしようやく集合して参加者3人が顔を合わせた時に、その謎が解明した。

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6時30分にバスは到着したのだが、集合もできないまま、わあこんな時間!

 朝食をとるために入ったカフェでは、参加者3人に初対面とは思えない一体感が生まれていたのである。……そうか主催者は、自分が激烈なダメ男を装うことで、参加者の株を自然に上げていたのだ。素晴らしい気遣いである。3人とも、頭から湯気が出るほどイライラしてたけど。

 こうして団結力が生まれた参加者(3人)と主催者は、雪かき現場へ向かう小型バスへと乗り込んだ。このバスには、現地参加の男子大学生と、OLが乗っていた。……うん、婚活するには、まだちょっと早いかな? 大学生だと……。

 現地に着き、雪かきスタート前に、公民館前で準備と説明が行われた。現地集合組は、女子高生と大家族、恐らくアラフィフの男性たち。……とても婚活を必要とする方々ではない。どうやら、「現地の独身者とのIターン交流会!」でもなさそうだ。このあたりで、もう言い訳をやめて、覚悟を決めなければならない時間がやってきた。

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「わざわざ東京からいらしてくれた方も!」という善意の紹介。「婚活
しに来たんですが......」とはとても言えない善意に満ちた雰囲気。

 仙台から車で1時間ほどの、「七ヶ宿」という町が今回の雪かき現場だ。

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道中は「雪かきされた雪をまたばら撒かなきゃいけないんじゃないか」
と心配になるほど、すべての景色がむき出しだったが、現場はこの通り
の大雪。

 この「雪かきボランティア」は、現地で環境問題に取り組む団体が主催しており、これは婚活とはまったく関係がない。純粋に地域交流、自然保護のための活動なのだ。そこに、東京の婚活イベント団体が割り込んできた形で、関東組が派遣された。よって、主催が現地団体に移ったとたんに、作業はスムーズに行われていく。

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憧れの、「雪をつたって屋根に登る」体験。

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下ろした雪は、ブルドーザーで道っぱたへ。関東平野部出身の和久井は、
よく考えたら雪かきの手順もよく知らなかったッス。

 婚活側主催者は、「本来は10名の申し込みがあったが、ドタキャンになった」と言っていた。7人もドタキャンするとは、婚活者のモラルが疑われますね。……いやいや、婚活イベントで、参加人数が少数だった場合、「ドタキャン」を言い訳にするのは主催者の常套手段なのである。

 数年前に参加したお見合いパーティでは、男性が参加費6,000円もしたというのに、女は2人、男は3人というしょっぱい人数で、主催者は「ドタキャンがあった」と解説していた。つまりこの雪かきも、地元の未婚者との夢の交流が企画されていた訳でも、人気沸騰の婚活イベントでもなんでもなく、ただひたすら主催者の段取りが悪く参加者も少ない、岩塩を丸かじりしたようなしょっぱいイベントだったのだ。

 もちろんこれは婚活を目的として参加した場合であって、雪かきや現地の方々との交流、自然豊かな土地の紹介なんかは、とても有意義だった。ボランティアはできたけど、婚活はできたかと言うと、まったくかけらも。

 で、帰ってから調べてみたら、この婚活NPO、いわゆるNPOとして団体登録がされていないのだ。内閣府に問い合わせてみたら、一般人が「NPO」としてイメージするような、いわゆるいいこといっぱいしてくれる団体は、「NPO法人」「特定非営利活動法人」という名称で登録・表示している団体なのだそうだ。今回の団体は、名称として「NPO」と付けていただけなのだ! このイベントは、参加者たちが会費と称し、「自力で来た方がよっぽど楽だったよね」という仕切りを行う主催者の旅費を出してあげるという、参加者自身がNPO化できたイベントであったのだ。

 結論。婚活は、参加人数の多そうなパーティくらいにしておくか、「見るだけ」でやらないのが一番。婚活イベントでいい思いした体験談ってのを聞いてみたい。

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター。少女向けのコラムやエッセイを得意とする一方で、ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、就職系やテニス雑誌、ビジネス本まで、幅広いジャンルで活躍中。 『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。

『仙台の牛たん』

そんな夜は、牛タン喰って帰ろっ

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