[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」2月22日号

息子の担任教師と……、「婦人公論」で婚外恋愛に走る女性の実態が明らかに

2011/02/13 21:00
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「婦人公論」(中央公論新社)2月22
日号

 「婦人公論」前号で、作家の白石一文が「男が結婚する最大の理由は、睾丸で絶えずつくられる精液を排出する相手として女性を一人確保したいから」といった文章を寄せましたが、その逆襲のような特集が今号で組まれています。「40代から始まる 妻たちの婚外恋愛白書」です。「不倫」じゃなくて、あくまで「婚外恋愛」。冒頭で、作家の井上荒野と江國香織(ともにアラウンド50)が「もしも私たちが夫以外の人と恋に落ちたら、どうなるんだろう(江國)」「私は、まず夫に対して『ごめんなさい』と思うだろうな(井上)」「そういう気持ちは恋人に対して持つかも。恋人が若くて独身だったりしたら、なおさら(江國)」などと妄想たくましいオバサントークを繰り広げています。「しらふでここまで話しちゃった(笑)(井上)」だってさ。ばっかばかしい。目玉は、もちろん読者アンケートの結果発表ですよ! ではさっそく見てみましょう。

<トピック>
◎特集 40代から始まる妻たちの婚外恋愛白書
◎嵐「あらゆる女性の人生を応援して」
◎絲山秋子×林真理子「哀しき下積み時代が、わが創作を支えている」

■72.9%が「婚外恋愛においてセックスは重要」と回答

 現在、婚外恋愛中の妻たち106名のアンケート結果が掲載されています。交際のきっかけについて抜粋してみますと、「同窓会で再会」(45歳、彼45歳)といったベタな回答から、「出会い系サイト」(47歳、彼33歳)という身もふたもない回答に、「息子の担任教師」(49歳、彼34歳)といったアダルトビデオみたいな回答までありました。「男性に触られたいと思うようになって」と回答した方は53歳の介護職で、彼は80歳。もしかして、介護をしているうちにそういう関係になっちゃったんでしょうか。恋にタブーなし、ですね。

 「彼と夫の役割は?」という質問では、彼は「優しく癒してくれる」という回答が1位に。番外回答として「夫と違って、将来介護する必要がない」(47歳、彼30歳)、「彼の前では女としての本能がうずく」(52歳、彼52歳)なんて意見がありました。一方、夫の役割の1位は「子どもの父親」。番外回答として「お金以外の魅力なし!」(51歳、彼49歳)なんて意見も……。「妻は精液を排出する相手」に文句が言えない状況です。ちなみに、夫とのセックスは54.2%が「ない」と答えており、「ある」が29.0%、残りは無回答でした。

 で、そのあとのインタビューページで、どさくさに紛れて冨田リカが登場。冨田は、昨年夏、萩原健一と熱愛が報道された「STORY」(光文社)の読者モデルです。ショーケンと出会ったときには夫がいたのですが(のちに離婚)、「何も考えずに不倫に走るというのは、私には考えられません」「離婚と萩原さんとのお付き合いはまったく別のことでした」「私は色恋で男に走るタイプじゃないんです」と終始言い訳がましく、婚外恋愛を否定するような発言を繰り返しています。これじゃこの特集企画が台無しだよ! しかも、同時期に「美STORY」(光文社)でヌードを発表したことについても、「50歳が間近に見えたとき、今しかやれないことをやらなければという気持ちになりました」と20歳の小娘みたいなことをおっしゃっていました。大人の女が今しかやれないことで、もっとマシなことってほかにたくさんあるでしょうに。

 「私は不倫じゃない」と必死に言いわけしている冨田リカのせいか、そのあとに続く婚外恋愛の修羅場ルポや手記のせいなのか、結局この企画の意図することがよくわかりませんでした。残るのは「婚外恋愛って面倒くさそうだけど、夫以外の人とセックスしてみたい」というぼんやりとした好奇心のみ。「してみたい」と「する」の間には大きな隔たりがありますからね。まー、「婦人公論」を読んで妄想してみるくらいがちょうどいいと、そういうことかもしれません。エロ本みたいなもんですね、「婦人公論」は。

 もともと性の解放はこの雑誌のテーマのひとつだと思いますが、いっそのことエロを専門にしちゃいなよ、と今号を読んで強く思いました。実際、今、中年女性に必要なものはエロ本なんです(断言)。夫とはセックスレス、かといって婚外恋愛する器量もチャンスも時間もない。それが現実。そんな可もなく不可もなく刺激のない生活の中で、ひととき夢の扉を開いてくれるもの、それが「婦人公論」という名のエロ本なのであります。なんてことを考えながらページを繰っていたら、嵐のグラビア&ライブルポが掲載されていました。そのタイトルはずばり「あらゆる女性の人生を応援して」。嵐は全世代の女性を励ます存在なのだそうです。巻頭特集でムラムラっときたら、嵐のグラビアを見ながら自ら慰めよと。うーん、よくできてるわ(注・グラビア自体はあんまりイケるものではない!)。

■遠慮のない下品な質問はさすがです

 色欲の次はカネですよ、カネ。また、林真理子センセがやっちゃってくれてます。会社員から作家に転身し、06年に芥川賞を受賞した絲山秋子との対談「初顔合わせ 哀しき下積み時代が、わが創作を支えている」です。絲山の会社員時代の話から、林センセがカネの話に切り込んでいます。以下、ところどころ抜粋。

林「私はもともと商売家に育ってるから、商売って女の人が働かなければならないから嫌だ、絶対サラリーマンの奥さんになろうと思っていたクチなんです。(中略)お金持ちの奥さんになりたかった私がなんでこんなことになるんだろうと思って」
絲山「お金持ちで、奥さんになっちゃったんですね(笑)。エッセイ読ませていただくと、一度に靴を8足も買われた話があって、夢のようだとため息がでました」
林「えっ? 絲山さんだって印税いっぱい入っているでしょ? 何に使っているの?」
絲山「林さんとは桁が違いますよ」

林「豪邸を建てられたのですよね」
絲山「いや、田舎ですから広いばかりで寒くてしょうがない家です」
*
林「絲山さんは会社やめた時に貯金はあったの?」
絲山「貯金なんてありませんよ。だから辛かったです」
*
 初対面の相手に印税だの貯金額だの……おまえは海老蔵か! さらに図にのりエッチ事情までねちっこく聞き出しています。

林「今も恋人がいるの?」
絲山「いません。もうたくさん」
林「44歳の女盛りなのに。でも、セックスシーンとかうまいですよね」
絲山「そりゃ、やったことくらいありますから(笑)」
林「現役バリバリって感じだよ」
絲山「もう飽きちゃいましたね」
林「飽きるほど~、いいですね」
絲山「面倒くさいじゃないですか(後略)」
林「わかります。下着考えたり、脱毛したり、ペディキュアしたり」
絲山「もう面倒くさくって。林さんは恋愛願望が途絶えたこと、ないですか」
林「脈々と続いています。でも恋愛しているかは聞かないでね。ノーコメントだから(笑)」
こんなところで言えません。夫も子どももおります」

 林センセが下着を考えたり、脱毛したり、ペディキュアをしたりしているところを生々しく想像してしまいました。ええ、誰でも恋愛する自由はありますよね。象のような足でも靴を8足買う自由だってある。もう女が三つ指ついて待ってる時代じゃありませんから、「婚外恋愛」だってしようと思えばできる。女が不自由なようで自由だったり、自由なようで意外なところで不自由を感じたりする時代。そんな時代において、女の生き方を説く雑誌「婦人公論」が担う役割はなにか。その答えがエロ本だったとは……。私見ですけどね、大きく外れてはいないと思いますよ。
(亀井百合子)

『婦人公論 2011年 2/22号』

嵐目当てで買うと怖い世界を見ちゃうよ

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最終更新:2011/02/13 21:00
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