[官能小説レビュー]

仕事と女の幸せ……セックスに後押ししてもらう人生の岐路

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『みせてあげる』(祥伝社)

 30歳って、オンナとしての大事な節目だと思う。20代のころのように主人公体質じゃいられない。白馬の王子様なんて存在しないことくらい理解できてくる。だから、守りを固めたくなる。その守りは、女として固めるか、仕事で固めるか。

 今回紹介する『みせてあげる』の主人公・上原君が一目ぼれする30歳のストリッパー・由衣にも、たぶん似たような気持ちがあったのだと思う。「生クリームの海で泳ぎたい」と言うほどスイーツが大好きな由衣の唯一の楽しみは、月に一度だけ、大好きなケーキを思う存分食べること。どうして「月に一度だけ」かというと、もちろん、踊り子としてのスタイルを維持するため。踊り子としてのプライドはもちろんある。けれど、もし普通の女としての人生を歩んでいたら?

 そんなとき、8歳も年下の男の子が、普通の女としての自分に惚れてくれた。深夜の新宿でナンパされ、差し向かいになってケーキを突っつきあい、他愛ない会話を交わす。そして、ラブホテルで抱かれる。

 股を広げて股間をまさぐり、大勢の男の視線を浴びながら、ステージ上でひとりで”飛ぶ”ことが由衣の仕事。けれど上原君とのはじめての夜、由衣はただひとりの女として抱かれた。普段は男を気持ちよくさせることを生業にしている由衣が、男に気持ちよくしてもらう喜びを味わう。キスからはじまり、乳首を優しく舌で転がされ、心も身体も濡れたところで挿入されて。忘れかけていた「ひとりの女」として抱かれる喜びを全身で感じたのだと思う。

 この喜びを絶対に忘れないでいよう。また明日から踊り子として生きよう。そう決意した反面、つい弱さを見せたくなったのだと思う。上原君との別れ際、自分の居場所が分かるようなヒントを与えた。

 当然のように由衣を探し当てる上原君。彼のひたむきな愛情を拒絶しながら、踊り子として生きる決意を固めていく。そして、最後には常連客との獣の交尾のようなセックスを上原君の目の前で見せつけ、普通の女として生きる道を捨て、踊り子として生きる道へと歩む決意をした。そう、彼の存在が由衣からストリッパー以外の道を遮断したのだ。

 女って、人生の選択を迫られたとき、セックスを足がかりにすることがよくある。女性誌でよく見かける「結婚前に昔の彼に再会してエッチしたら、後腐れなく結婚できた」「一回の火遊びによって旦那への愛に気付いた」「恋人と別れるときに最後のセックスをする」って話。男はたぶん最後のセックスを何度も何度も思い出すんだろうけど、女はさっさと忘れてしまう。それは、女にとって次のステップに進むための決意表明だから。

 こうして、女はセックスをすることで違う世界に飛べることがある。俺ら踏み台じゃんか、たまったもんじゃないよ、と世の男たちに泣かれようと。

 でも上原君も、使い捨ての踏み台ではなかった。由衣の巡業先で知り合った新米ストリッパーの塔子のはじめての男となり、女としての喜びを知らないが故に表現できなかった色気と、男の性欲を奮い立たせる表現を開花させた。ひとりの女性を側で支える喜びを知った上原君は、プロの踊り子となるべく渡米する塔子と共に生きていく決意をする。

 昔の彼のセックスが忘れられなかったり、心が離れているのにセックスと離れられなかったり。女がセックスを必要とするときは、男のそれよりも、もうすこし複雑で深い事情が存在する。それはたぶん、体内で人を育てる術を備え、ほぼ28日周期でせっせとスタンバイしてるんだから、心が強くセックスに直結するんじゃないかな。よく「子宮でモノを考える」って言うけど、子宮はオトコを見極めるのかもしれない。だから、セックスは、ときに女の人生の決定打となる。

『みせてあげる』

結構な純愛ストーリーです

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