[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

「それを買うのはやめなさい……」海老蔵の目をした天使が女を諭す

2010/12/11 21:00
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(C)安彦麻理絵

 朝、6時半。起き抜けにテレビをつけたら、ジャストタイミングで海老蔵記者会見の映像が流れてた。ミルクをよこせと泣きわめく赤子の口に、急いで哺乳瓶をつっこんで黙らせ、緊急記者会見の様子を神妙な面持ちで見つめる私……(って、赤ん坊と海老蔵、どっちが大事なんだよ)。それにつけても、気になったのは海老蔵の声。なんか、鼻から抜けるみたいな声の出し方&しゃべり方。あんなふうだったっけか? なんとなく、今人気の戦場カメラマンの人を彷佛とさせたというか。そして過剰なまでの丁寧語の連発。ですます調をすっ飛ばして、ございます口調。商人(あきんど)じゃあるまいし。そんな口ぶりで、切ないような苦しそうな、なんて言うんだろう、どっかイッちゃってるみたいな、ゆれるような……。そういう「反省のまなざし」をするもんだから……。

 何やらとても滑稽な記者会見であった。作り込んだ丁寧さ、神妙さ、おごそかさが逆効果だったとしか言いようがない。ある記者から「事件当日の自分に声をかけるとすれば、どんな言葉をかけますか?」と質問され、海老蔵、またしても鼻から抜けるような声&遠い目つきで「出かけるのをやめなさい……」と答えた時には、朝っぱらから爆笑した。なんだそれ。あんた今、誰よ? って感じである。

 きっと事件当日の夜、出かけようとする海老蔵の頭上で「天使の格好をした海老蔵」が美輪明宏みたいな口調で「出かけるのをやめなさい……」と、諭していたに違いない。しかし「悪魔の格好をした海老蔵」が「いいから飲みに行っちゃいなよ♪」とそそのかしたんだろうな。いや、人間、生きてりゃそういうことは日常茶飯事。己の中の天使と悪魔、いつも戦うんだよね……。

 私だって昨日、池袋西武の化粧品売り場でそうだったもの。

「どうしよう、買っちゃおうかな、やっぱやめたほうがいいかな……」

 迷う私に、悪魔の格好をしたマリエが「いいからさっさと買っちゃいなよ♪」と、かなり強力にそそのかしてきた。が、天使の格好をしたマリエが、今思えばあれは「反省する海老蔵みたいな目つき」で、「それを買うのはやめなさい……」と、諭してきたのであった。そのおかげで私は無駄に散財するのを逃れたのだった。

「今日は飲まずに黙ってうちに帰りなさい……」
「編集からの電話には出なさい……」
「化粧も落とさず寝るのはやめなさい……」

 日に何度となく。反省する海老蔵みたいな目つきをした天使に、諭されてる女は多いはずである。

『恋は女の命の花よ (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)』

二度寝をするのはやめなさい……宅配ピザLサイズはやめなさい……

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最終更新:2019/05/21 16:35
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