[連載]マンガ・日本メイ作劇場第1回

変人がメイ作を作る? 『ガラスの仮面』のキャラクターを見直してみよう

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『ガラスの仮面』第1巻/白泉社

――西暦を確認したくなるほど時代錯誤なセリフ、常識というハードルを優雅に飛び越えた設定、凡人を置いてきぼりにするトリッキーなストーリー展開。少女マンガ史に燦然と輝く「迷」作を、紐解いていきます。

 『ガラスの仮面』はすごい話だ。確かに日本マンガ界における名作だ。主人公である北島マヤと姫川亜弓がただただ、「紅天女」という役を得るためだけにしのぎを削るスポ根マンガ。多くの人がその魅力を真面目に分析しちゃうような大作だ。もちろん所々にある(というより全体的にまぶされた)ツッコミ待ちポイントに魅力を感じる人もいるだろうが、それよりもなによりも、主要キャラクターがとんでもない変わり者だという所が、非現実的な世界観を作り上げている。なので、今回はキャラクターを軸に、『ガラスの仮面』の魅力に迫ってみたい。

 まずは北島マヤ。勉強は全然ダメだが、ドラマや舞台となると、1度見ただけですべて台詞を暗記してしまうという少女である。だったら授業で先生が言ったことも丸暗記すればいいと思うけど、優等生の亜弓さんと比較するために、マヤに学業優秀になってもらっては困るという大人の事情により、彼女は勉強が苦手である。

 そんな少女が、「演じる」ことに出会い、台詞をもらったりしたから大変だ。台詞の紙や台本を手にすると、指をくわえてブツブツうなり出す。普段、仲良くしている演劇仲間でさえ顔が青ざめるほどの不気味さらしい。まあ、クラスにいたら間違いなく嫌われ者だよな。ブツブツ言うのはいいけれど、指をくわえるのはやめなさい。変人度が高いから。

 そしてその天才変人少女マヤを見つけた月影先生、マヤに会いたいがために、ラーメンが食べたいわけでもないのに出前を頼み、マヤに持ってこさせる。そして顔を赤らめて詰め寄るのだ。「おばさん、あなたのことがとても気に入ったの!」。マジで怖いです。しかし変わり者度ではそうとう上を行くマヤはへっちゃらである。そのまま月影先生を師と仰ぎ、どこまでだってついていく。

 そして天才金持ち少女、姫川亜弓。美人で、金持ちで、そして演技にかけては右に出るものはいない。子どもの世界でトップを歩み続けているのだから勘違いしちゃっても仕方がないのかもしれないけど、言動がいちいち上から目線。のちのち「私にはとりまきはいても、友だちはいない」などと愚痴ってますが、いつでもどこでも上から目線で、他人を小バカにしてたら、そりゃ友だちもできないでしょう。

 しかしそんな亜弓さんには、実は重要な仕事があるのだ。スポ根マンガには、かならず「解説役」が登場する。「今の技は××だ!」とか「普通なら気づかないかもしれないが……」とか言って、読者の感度を上げてくれる役だ。亜弓さんは、まさにそれ。マヤの演技を見る度に「これは難しい役だわ」とか「あなたたちだったらこうはいかなかったでしょうね」とか言って、マヤがいかにすごいかを解説してくれるのである。マヤの評価が高いのは、実は亜弓さんのたゆまぬ”解説努力”の結果でもあるのだ。

 しかし他人のことはよく見えるくせに自分のことはよく分からないらしく、亜弓さん、事故でスポットライトが頭に当たった直後から「めまいがする」とか「目がかすむ」とかになり「どうしたのかしら」などと呑気なことを言っている。どう考えてもスポットライトが原因だろ。母親に甘えてないでさっさと病院に行き給え。

 そしてあまりに環境の違う二人、修業先の山で、たいした理由もなく、言い争いが始まったかと思えばそのままヒートアップして大ゲンカ。20代のいい年した女が、とっくみあいの殴り合いである。どうしたお前たち。訳のわからん修行でストレスたまってたか。その上ここでも亜弓さんは、いつもの上から目線を忘れない。自分から先にマヤの顔をひっぱたいたくせに、マヤには「顔が腫れたらどうするのよ」などと文句を言っている。……だから友だちできないんだよ、あんた……。

 こうして女二人の大人げないケンカは、驚くべき方法で解決する……夜明けと共に二人で大爆笑して……。二人はどうやら、一晩中殴り合ってたらしい。ケンカの内容にもびっくりだけど、終わり方にもまたびっくりだ。

 このように、ときおり「凡人がまったく共感を出来ないシーン」を挟み込むことによって、マヤと亜弓さんは”人間の感情の幅”を学び、大女優への階段を上がっているのかもしれない。だから、物語の「迷」走は、『ガラスの仮面』という「名作」には必要なんだろうな。

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■メイ作判定
名作:迷作=4:6
(文・イラスト=和久井香菜子)

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター。少女向けのコラムやエッセイを得意とする一方で、ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、就職系やテニス雑誌、ビジネス本まで、幅広いジャンルで活躍中。 『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。

『ガラスの仮面 1』

でもミウッチーが一番迷走中。

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