『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』をマンガ家が読み解く

「いつの時代も王道を欲してる」折原みとが語る、少女マンガの萌えポイント

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『少女マンガで読み解く 乙女心の
ツボ』(カンゼン)

 少女マンガに登場する男子キャラクターの傾向やセリフから女心を読み解き、男性諸氏のモテ力向上を応援する(?)和久井香菜子著『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)。本書には、「無理チュー(=壁などに追いつめられるなどしてされる、強引なキス)されると、男友達から気になる異性に変わる」「女のために、東大合格を蹴る」など、女子が大好物な少女マンガの王道設定が多数紹介されているが、作り手であるマンガ家はこれら王道パターンを意図しているのだろうか? 90年代、看護師志望の健気な女子と不治の病に侵された少年の感動物語『時の輝き』で一世を風靡し、サイゾーウーマン読者が10代の頃に最も影響を受けたであろう少女マンガ家・小説家の折原みと先生に、本書を実際に読んでいただいた。

――はじめに『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』を読んだ率直な感想を聞かせてください。

折原みと先生(以下、折原) すごく納得の内容でした。20年以上女の子向けの恋愛物語を描いてきて、王道な要素を意識して描いていたわけではありませんけど、「これ、前に描いたことあるよ!」みたいなエピソードやセリフがたくさん描いてあって。吹雪にさらされて「このままじゃ風邪引くから」とか言って服を脱いで、男の子と人肌で温め合う……というのは、私も描きましたね。

――ストーリーを作るときは、王道的な要素ありきで構成を考えるんですか?

折原 うーん……そういうわけじゃないんですけど、王道シーンは入れたくなっちゃうんですよね。自分自身も小さい頃に『はいからさんが通る』(大和和紀)や『ベルサイユのばら』(池田理代子)など、少女マンガを読んで育っているので、自分が読者の立場だったら、こういうこと言われたいなとか、こういうシーンで告白されたいなとか、自然と王道要素が入ってくるんですよ。「何か不都合なことがあったらすぐ平手打ちする」「無理チュー」「ストーカーみたいに付きまとわれているうちに、好きになっちゃう」など、この本で分析されている少女マンガの王道パターンって、いつの時代も女の子の憧れなんですよね。イケメンや金持ちがやること前提ですけど(笑)。

――折原先生は、どんな男の子に萌えるんですか?

折原 メガネ男子と白衣男子に萌えますね。だから私が描く男の子って、科学者や宇宙飛行士を目指している子などが非常に多いんです。いつもはボーっとしてるけど、実は頭脳明晰とかね。それも王道の一つである”ギャップ萌え”なんですけどね。ヒロインに感情移入して描くためにも、自然と男の子キャラは自分の好みになっちゃうんですよね。あ! あと私、どうやら耐える男が好きらしく、いつも何かに耐えている子を描いちゃいます。どちらかというと自分がS気質だから、Mっぽい男が好きなんですよ。「そこで待ってなさい!」って言ったらいつまででも待っているような、犬っぽい人がイイ(笑)。でも、ドSキャラも好きです。『イタズラなKiss』(多田かおる)の入江(直樹)くんや『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)の千秋(真一)様、『花より男子』(神尾葉子)の道明寺司みたいな、ドSのくせに結局女の子に振り回されている男の子って、萌えますよね。

――女子に振り回されるドS男子も王道キャラですもんね(笑)。王道要素がてんこ盛りな『花より男子』が21世紀に大ヒットしたことを考えると、少女マンガの萌えポイントって、今も昔も変わらないんですかね?

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常にキュンとする作品を描き続けて
いる折原みと先生

折原 『少女マンガで読み解く~』を読んで、ちょっとくらい時代が変化したからって、変わらないんだなと思いました。だから結果として、作り手としても、話の本筋はやはり王道で、設定やキャラクター、セリフといった所で個性を出すことになるんだと思います。
 今、若くても韓流ドラマ好きの子ってけっこういるじゃないですか? 韓流ドラマって、昔懐かしい少女マンガ的な要素がいっぱい詰まってるんですよね。実際、見ていると、「あ、これ私描いたことあるわ」っていう描写がいっぱい出てきます。「実は兄弟だった!」「飛行機事故で行方不明、記憶喪失」とかね(笑)。「イケメンと一緒に同居することになっちゃった!」「実は許嫁が超イケメン若社長だった」など、設定も非常に少女マンガ的。そういう韓流ドラマを若い子が好むということは、王道を欲しているってことだと思うんですよね。

――一方で、ティーンズラブのように、今は過剰な性描写が描かれたものを多いですよね。そういった少女マンガについてはどう思われます?

折原 単純にすごいなあと思います。私には描けないので(笑)。

――先生の作品には、直接的な性描写が描かれたものは皆無ですよね。描かないのは、先生のポリシーなのですか?

折原 そういうわけじゃないんですけど、ちょっと前までは、セックス描写ってご法度だったんですよ。特に私が描いていたような少女マンガ誌では。それに、長い間描いてきて、応援してくださる読者さんたちが清純派のマンガを求める人たちが多いので、いきなり私がセックスシーンを描いたら引いちゃうだろうなって。それで自粛していますね。特に描きたいっていう欲求もありませんし。今度ハーレクイーンコミックスで描かせていただこうと思っているんですけど、あそこは未だにセックス描写はご法度です。描いても”朝チュン”(編注:具体的な性行為は描かず、場面を暗転させる手法。朝の風景と鳥のさえずりで表現することが由来)まで。やっぱり主な読者が、王道少女マンガで育った30~50代の女性だからなんでしょうね。

――ハーレクイーンですか! 王道設定満載の少女マンガですよね! 先生は最近、『天使のいる場所 Dr.ぴよこの研修ノート』や『真実の感動』シリーズなど、ドキュメンタリータッチのマンガを主に描かれていますが、今後はまた恋愛モノも積極的に描かれていこうと?

折原 そうですね。ドキュメンタリー系ばかり描いている反動で、恋愛系を描きたくなっちゃって。ドキュメンタリー系って背景などがけっこう地味なので、キラキラしたトーンを使ったり、お花を散らせたりできる作品を描きたくなるんです。昔の少女マンガ的な、王子様とかリッチな超絶イケメンが出てくるような作品を描きたいです(笑)。今、そういった、女子の癒やしになるような王道マンガを描ける媒体がほとんどないんですよね。それこそ、ハーレクイーンぐらいしかないんですよ。

――確かにそうかもしれませんね。

折原 なので今、王道しか載せないマンガ誌を創刊したら、意外に売れるんじゃないですかね? 少女マンガの元気がなくなっているとはいえ、王道の需要って、絶対あると思うんですよ。だって、王道って安心感がありますもん。疲れて何も考えたくないときに読んで、都合よく動いてくれるイケメン男子に癒されたいじゃないですか!? ありえない設定や100万回ぐらい使われているようなセリフでもいいんです! ツッコミどころは満載ですけど、そういうものを心の奥底で女の子は望んでるんですよ、私含め(笑)。この本を読んで、”王道は永久に不滅!”だと、改めて思いましたね。
(遠藤麻衣)

折原みと(おりはら・みと)
マンガ家・小説家。小説家としては1987年、『ときめき時代 つまさきだちの季節』(ポプラ社刊)にてデビュー。講談社X文庫のレーベル「ティーンズ・ハート」の主要作家として活躍し、10代の女子に絶大な支持を受けた。『天使』シリーズや『アナトゥール星伝』、『時の輝き』シリーズなど、人気作を多数執筆。最新作である小説『乙女の花束』(ポプラ社)が好評発売中。

『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(和久井香菜子著、カンゼン)

少女マンガを題材に、乙女心を男性に向けた解説した異色エッセイ。少女マンガの読み手である”乙女たち”は、どんなセリフやシチュエーションに萌えるのか、実際の場面と心理を解説しながら、歴代の名作マンガも紹介しているので、女性も楽しめる一冊。『乙男(オトメン)』を「漫画喫茶で読むな危険、というくらいの爆笑漫画」、『日出処の天子』を「中学生のころ、救われない話に胸焦がしちゃって、聖徳太子がかわいそうでヤキモキしていたのは、けっこう痛い過去である」と紹介するなど、少女マンガへの壮大な愛を感じる。

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『アナトゥール星伝 1』

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