酒平民ハヤシのだから企業に聞いてみた

岩波書店の本は、どうして返品できず買い取り制なんですか?

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「文学とは何か」(岩波書店)

 気になって仕方がない素朴なギモンを直接企業に聞いてみよう、という本連載。

 高校生の頃、岩波書店の書籍が高くて買えなかった思い出がある。例えばテリー・イーグルトン『文学とは何かー現代批評理論への招待』が4,200円。『愛蔵版 モモ』が2,940円など(もちろん、他の出版社でも高価格はあるが)「岩波書店は高い」というイメージがあった。だからといって、手持ちのお金で手軽なファッション誌を購入して帰宅すると寂しい気持ちにもなった。

「『文学とは何か』が高いから、代わりに『BOON』を買う」

 どうせお洒落なんてしないのに……。こんなパターンはどうだろうか。

「『文学とは何か』が高いから、代わりに『デラべっぴん』を買う」

 ただのエロ・ティーンエージャーである。

「『文学とは何か』が高いから、代わりにマウンテンデューを買ってゴクゴク飲む」

 喉が乾いてしまったんだから仕方ないじゃないか。

 岩波書店に話を戻そう。値段が高いイメージに付け加えるなら、岩波文庫は品揃えがしっかりしているな、とも感じていた。大人になって知ったことだが、岩波書店は書店が書籍を買い取りしなくてはならないらしいのだ。つまり、普通の書籍は売れなかったら返品できるが、岩波本は返品できない。だから老舗の本屋には岩波文庫がズラリと並んでいたのだ。それにしても、なぜ岩波書店だけ買い取り制なのか? うーん、気になる。そこで「岩波書店 販売部」に直接、聞いてみた。

「なぜ岩波書店の書籍は買い取り制なんですか?」

担当者(男) 買い取り制と言いますか、正確に言いますと、注文していただいて、買い切り制なんですね。

――注文で買い取り制?

担当者 はい、注文していただくと基本的に買い取りなんですね。ですから、ご注文いただければ、”必ずお出ししますよ”というシステムなんです。

 ん? よく分からないぞ?

――書店で売れ残った書籍は、岩波書店には返品できないということですね?

担当者 そうですねぇ、いろいろな事情がありますので、例えば注文していた方が亡くなったりとか、引越しをしたりなど事情が分かればもちろん返品可能です。

 話が人の生死まで飛んでしまった……。まあ、いい。質問を続けよう。

――小さな書店などに行くと、買い切り制のためか、岩波書店のコーナーをあまり見かけないように思うのですが、今後も買い切り制を続けるんですよね?

担当者 そうなんです。ただ、これはご理解いただきたいんですが、大きく「委託制」と買い切り制というか「注文買い切り制」があるんですけども、委託制ですと逆に返品が自由なものですから、いつ本が返ってくるか分からない問題があります。特に売れている本は、小さな本屋さんから”欲しい”と注文があっても、本をお届けでないことがあるんですよ。

――なるほど。

担当者 つまり、返品される可能性が大きいので「小さな本屋さんには、そんなに本を渡せません」という状況が起きるんですね。で、これに対して注文制ですと「たとえ何部であろうと責任持って売りますよ」ということになので、どんな本屋さんでもきちんとお送りします。ですので、これは良し悪しですね。本当に商品が必要なときには「注文買い切り」の方が、確実に読者の皆さんに本が届くんです。

 らしいのだが、この説明では納得できない。まず、小さな本屋でも本当に欲しい読者は出版社に注文するであろう。だから、岩波書店が「注文買い切りのほうが確実に読者に届く」と言っているのは正しくない。注文すれば、どんな出版社だって本屋に届けてくれるのだ。つまり、これでは岩波だけが買い切りシステムを採用している理由にはならず、欺瞞にすぎない。

「昔からの伝統なんで、さーせん」

 こう説明されたら一周して納得いったはずだ。今回は珍しくスッキリしない形で終わってしまった……。次回はスッキリさせます!!

 引き続き、皆さんのフレッシュなギモンを募集中です。くだらないギモンをお待ちしています。
(酒平民 林賢一)

『文学とは何か―現代批評理論への招待 [単行本]』

「10年ぶりの増補改訂版」だそうッス

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