[女性誌速攻レビュー]MORE8月号

地味で策士な「MORE」娘と、香山リカが導き出した”いびつな幸せ”

2010/06/29 22:00
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「MORE」(集英社)8月号

 先月で創刊33周年を迎えた「MORE」。王道OLスタイルを常に追求し続けた結果、凋落気味の赤文字系にも引きずられず、個性派おしゃれの青文字系にも揺るがず、確固たる地位を築いています。その尖らない立ち位置は、そのまま集英社という万人受けする出版社の精神を一番体現しているのでは。なので、街でおなじ付録を持っている人に出会ってしまう率が高いのも納得。今月のメイベリンのビッグヴァニティーでは、何人とトイレの洗面台で鉢合わせしちゃうんでしょうか。そんなザッツジャパニーズOLたちの興味と悩みを今月も拝見させていただきます。

<トピックス>
◎「夏服をもっともっとおしゃれに着たい!」達人124人のコーデアイデア
◎婚期と相手がコワイほどわかる!奇跡の寿占星術
◎篠田 麻里子 24歳の素顔

■MORE娘はふかっちゃんに何を見るのか

 今月の表紙は、”永遠の20代”深津絵里。仕事ではドジを踏みつつも、理解ある上司に認められ、恋愛では素直になれない自分に苛立ちながらも、最終的には上玉を勝ち取る…..深津絵里がドラマなどで見せるイメージは、MORE娘たちの理想の姿と言っても過言ではないでしょう。そして何よりノンフェロモン。そんなふかっちゃんが、都内随一のディープタウン、京成立石へプチトリップしています。

 闇市然とした雰囲気の仲見世商店街で、試食したりお買いものしたり、店のおじさんにおまけしてもらったり。そんなほっこりカットが随所に散りばめられています。「6年前、MOREで旅したケニアも、先日、行ってきたグリーンランドも、今日の立石もそう。実際に足を運んだ時に出会うものや感じることって、絶対に想像を超えている」と旅の素晴らしさを語るふかっちゃん。ふかっちゃんが話すと、当たり前のことが大層スピリチュアルなことに感じてくるから不思議。私も立石には何度か行ったことがありますが、ケニアの大地やグリーンランドの氷河と対比して考えたことはありませんでした。あっちの飲み屋の方が焼酎ハイボールが10円安かった、とか後悔していた己の矮小さをこんなところで再確認するとは。

 「次はひとりで来ちゃうと思います(笑)」と、取材拒否で有名な某もつ焼き屋が非常に気に行った様子のふかっちゃん。たまの休みに女ひとり、カメラぶら下げて京成線。ふかっちゃんが醸しだすその手の”ほっこり感”を真に受けると、フツーの女の場合、現実から大きくかい離してしまう可能性があるから危険。”ほっこり”を裏返すと”孤独”が見えてくる。”深津に進むか、進まざるべきか、それがMORE娘の問題だ”と、妙に悟ってしまったインタビュー企画でした。

■MORE娘は篠田麻里子からも学びます

 今回のAKB48総選挙でも堂々3位と、抜群の安定感を見せつける篠田麻里子。MORE誌上でも今や竹下玲奈と双璧をなす存在です。そんな麻里子様(AKB内ではこう呼ばれている)がMOREから写真集をお出しになるということ。というわけで、4Pを割いて撮影の裏話やオフショットを公開しています。私生活でも女王様ぶりが囁かれる麻里子様ですが、今一番の目標を聞かれ「モデルとしてもっともっと上を目指すこと」と答えています。”もっと”じゃなくて”もっともっと”なのがさすが麻里子様。愛らしいルックスとは裏腹に、かなりのど根性っぷりも披露。「たとえば番組で『オフは何してる?』って聞かれた時におもしろいエピソードを話せるように、休日こそ朝から晩までいろんな場所に出かけたり(中略)運やもらえたチャンスに感謝しながら、もっと突っ走りたい!」。ベッキーみたいないい子ちゃん発言は、麻里子様には似合わず。

 以前、”MORE娘の1000人アンケート特集”で「本当は世界の●●って呼ばれたい」という悲痛なメッセージがありました。MORE娘たちは地味を本懐としながらも、どこかでブレイクしてやるといった気合が、実は他のどんな女性誌よりも強く感じられる媒体なのです。ハーフでも二世タレントでもなく、どちらかと言えば”顔もスタイルも普通”にも関わらず華々しい成功を遂げていく麻里子様が、MOREで支持される理由が少し分かった気がしました。地味だけど策士――MOREにとってこの要素は非常に重要。鈴木えみがMOREでいまいちパっとしないのも、これを思えば明らかというべきなのでしょう。

■意外と”非リア”な20代女子

 「香山リカ×20代女子の本音トークバトル 香山さん、私たちの”ふつうの幸せ”って何ですか?」では20代後半の5人の未婚女子が、精神科医の香山リカに”幸せとは”という疑問をぶつけています。

 まず読者300人にとった「私の”幸せ観”アンケート」によると、「ふつうの幸せ」とは「適齢期に結婚できること」と「毎日なんとなく楽しく、しんどくないこと(生活に困らない収入があること)」なのだそう。この二つを合わせると「適度に収入のある男と結婚する」というMORE娘たちの基本ラインが見えてきます。

 5人の読者が自分の幸せ度と不安を香山センセに話した後、彼女たちを最も悩ませる”いつも誰かと比べてしまう自分”に関しての赤裸々告白が飛び出します。「顔はいいけど収入の少ないダンナと結婚した女友達が、子どもを幸せそうに見つめている姿を見て”負けた”と泣きそうになった」「女友達がブログで”家庭菜園始めました”とか”会社終わりにヨガに行ってきました”みたいな日々の生活の充実ぶりがわかる記事を見ると、かなりへこむ」「結婚した姉や妹。キャリアアップなんて少しも狙っていない平凡な毎日なのに、ハッピーオーラに満ち溢れているふたりを見ていると自分を責めたくなる」と、MOREには珍しいどんより発言が連発です。挙句の果てに香山センセまで「徹夜明けの通勤途中、駅前で私の前をアニメのトレーナーを着たふくよかな同世代ママが、幸せそうに子どもをふたり連れて歩いているの。それを見た時、”この人に負けてるかも”と思った」とか。

 皆さんの話を総合すると、どうにも2重劣等感=強い優越感という図式が脳裏をよぎってしまいます。”明らかに優位な自分が、明らかに劣っている存在に対して劣等感を覚える”というところから、殊更に優越感が生まれるんでしょう。だからこそ「有名私立小学校の制服を着た子どもを、控えめかつ上質な紺色のワンピースを着て迎えに行く母親を見た時に、”負けた”と思う」とはならないのでしょう。悩みを告白しながらも、自分の核心部分には決して触れない――これは最終的に”どれも正解”としてくれる精神科医の香山センセだからこそ成立する特集であって、全てを否定から入る勝間和代サンでは、ますますエッジのかかった読後のどんよりになってしまったはずです。

 参加女性たちの考える理想の幸せ像が「夫の仕事の都合で海外赴任(ハワイ)。海岸をゴールデンレトリーバーを連れてダンナさんと散歩する」だったり「夫婦の年収は1億円。家にはシェフもいて誕生日には『久兵衛』の板前を。自分プロデュースのお店が人気を博し、講演会を開いたら常に満席というスーパーウーマン」だったりと、こんな人どっかにいたな~と思うものが多いんです。理想や幸せを具体的にすればするほど、追いつかない現実に苦慮するということを目の当たりにした、やっぱりどよーんな企画でした。

 そんな幸せどんよりページの前に「婚期と相手がコワイほどわかる!奇跡の寿(ことぶき)占星術」がございまして、私もひっそりと占ってみました。そうしたら、2015年まで結婚はナシとのお告げ。”コワイほどわかる!”んですもの、そうなんでしょうね、きっと。ちなみに去年まで寿ゾーンだったんですって、早く言ってよ! 結局2重にどんよりした「MORE」8月号でした。
(西澤千央)

「MORE」

だーかーらー、37歳ってことは公然の秘密なの!!

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最終更新:2010/06/29 22:09
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