[連載]海外ドラマの向こうガワ

米で視聴率ナンバー1を得た、『NCIS ネイビー犯罪捜査班』

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『NCIS ネイビー犯罪捜査班 シーズン2
コンプリートBOX』/パラマウント ホーム
エンタテインメント ジャパン

――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!

 銃器の合法所持が認められているアメリカでは、殺人発生率が非常に高く、日本の5倍以上だとされている。合法所持が認められているからこそ、この程度で済んでいるのだという恐ろしい説もあり、強姦、児童性的虐待、強盗、ギャング抗争などを含むと、莫大な犯罪数になり、ゆえに犯罪大国だと言われるのである。

 一方で犯罪検挙率は低いものとなっており、殺人事件においては60%程度。犯人の手がかりが全くつかめなかったり、容疑者が特定できても逃亡され、迷宮入りし「コールドケース」となる事件も少なくない。

 殺人は34分毎、強姦は6分毎、傷害は34秒毎に発生しているアメリカ(在米日本大使館発表)。当然のように国民の犯罪に対する関心は高く、犯人逮捕のために協力を惜しまない。FBI重要指名手配犯らの逮捕につながる手がかりを、リアルな事件再現ドラマと写真を交えながら呼びかけるTV番組『AMERICA’S MOST WANTED』(1988年~)には、毎週多くの情報がネットや電話で寄せられ、実際に犯人逮捕に云るケースも多い。また、事件現場に急行する警察官と行動を共にし、犯人逮捕までの過程を撮影したまま放送している緊迫感溢れるドキュメンタリー番組『COPS』も安定した視聴率のもと、1989年から続くロングランとなっている。

 このような背景から、ドキュメンタリーのようにリアルでグロテスクな刑事ドラマは多くの視聴者を引き寄せ、その代表作ともいえる『Law & Order』シリーズは今や国民的ドラマとなっているほど。9.11同時多発テロ以降になると、人々は日常的に「テロリストの恐怖」に脅かされるようになり、アメリカが他国にはないような、高い最先端技術を駆使して犯人を逮捕へと追い込むドラマに人気が集中。『CSI:科学捜査班』シリーズ『コールドケース 迷宮事件簿』『BONES』など、アメリカ人を安心させるだけでなく、彼らのプライドと知的好奇心を満たしてくれる作品が次々と制作され、空前のクライム・サスペンス・ブームを巻き起こした。

 そんな中、異彩を放つドラマが、2003年秋に放送開始となった。アメリカ海軍法務部に所属する軍人法務官が、正義のもとに活躍する姿を、時にはタブーと共に描いた人気ドラマ『犯罪捜査官ネイビー・ファイル』のスピンオフとして、大きな期待を背負いながらスタートした『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』である。

事件解決だけでなく、人間性にも重きを置いたストーリー

 物語の主人公は、アメリカ海軍職員の犯罪を専門に捜査する海軍犯罪捜局のエリート・チーム。リーダーは口数の少ない元海兵隊軍曹で、元殺人課警部、有能な女性科学者、コンピューター・エキスパート、という個性溢れるエリート・メンバーたちと共に、世界中を飛び回り、海軍や海兵関係者が関与する全ての事件を捜査する。

 通常、アメリカで放送されるドラマは、シーズンを重ねるごとに視聴率が低下するもの。しかし、『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』は、シーズンを重ねるごとに視聴率がグングン伸び、シーズン5で視聴率トップ10入りを果たし、現在アメリカで放送されているシーズン7はなんと視聴率ナンバー・ワンに輝いた。滅多にない現象にアメリカのメディアは、「犯罪、法廷、軍、政治、法医学を取り入れたドラマは山ほどあり、NCISが特別なドラマという訳でない。なのに、なぜ視聴率を伸ばしたのか? 何がここまで視聴者を引き寄せるのか?」を分析。こぞって特集記事にする程のフィーバーとなった。昨年秋からは、ファン待望のスピンオフ『NCIS: Los Angeles』がスタートしており、アメリカでの人気は衰えるところを知らない。

 本作品は、最先端の科学技術を駆使しまくったり、手に汗握るシーンの連続技や、ど派手なアクションもあまりない。海軍が舞台の21世紀のクライム・サスペンスにしては、スケールは小さく、タブーに挑戦し「国や軍を揺るがす大事件」を扱うことも稀。結果が見えてくるようなエピソードも少なくない。しかし、一度見始めると、この上なくスリリングな展開にどっぷりハマってしまい、テレビの前から動けなくなってしまう。ストーリー構成が見事なのはもちろんのこと、出演者たちの演技力が見事で、グイグイ引き寄せられてしまうのだ。

 このドラマは、捜査官たちの人間性やチームの結束力、そして加害者、被害者の家族や関係者など人物像に重点を置き、物語を展開させる。日本で4月にリリースされるシーズン2からレギュラーが増え「捜査チームの基盤」が固まるのだが、この頃からのチーム内の会話は最高で、ウィット溢れるコミカルなやり取りに魅力を感じるファンも少なくない。「クライム・サスペンスだからこそ、基本である登場人物の描写を最も大切にする」、それが視聴者の自己投影を促し、高視聴率獲得に繋がったのだろう。

 リサーチ会社の統計によると、特に若い人に人気があるとのことで、大学生の間でも話題になっていると報じられている。サイエンスより、ヒューマンに興味を抱く傾向に転じているのは、不景気である現代を反映しているのかもしれない。しかし、何よりも素晴らしい脚本のもと、他の犯罪ドラマとは異なり、斜めの視点からクライム・ミステリーを描いたことがドラマを成功へと導いたのではないだろうか。

 ある意味アンタッチャブルとされる、閉鎖的な軍内で起こった犯罪ドラマであるため、エミーやゴールデン・グローブなどのメジャーな賞レースにはノミネートされることが滅多にない『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』だが、人間の内面に焦点を当てたディープな作品であり、時代を超えて語り継がれる名作になると言っても過言ではないだろう。

堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。

『NCIS ネイビー犯罪捜査班 シーズン2 コンプリートBOX』

犯罪がない世の中を願うものです。

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