『ギャルとギャル男の文化人類学』刊行インタビュー

「渋谷の不良文化をぶっ壊す!」ギャル男のトップが描いた野望とは

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ギャル男の風貌は残っているが、れっきとし
た学校講師の荒井悠介氏。

 ギャルやギャル男と言えば、学校に行かずに街でたむろして遊び呆け、”真面目”とは遠いイメージの存在だ。ところが、2003年に渋谷イベサー(イベント・サークル)のトップに立ったギャル男が、同胞であるギャル・ギャル男について研究し、1冊の本にまとめたという。『ギャルとギャル男の文化人類学』(新潮社)と名付けられたこの本の著者・荒井悠介さんは、イベサーにいるギャル・ギャル男の特徴を「チャライ」(=セックスの経験人数を競ったり、性的な魅力で異性をうまく使ったりする)、「ツヨメ」(=奇抜なファッションや行動をする)、「オラオラ」(=強そうで悪そうにする)、の3要素としている。

 そんな世界のトップに立っていたのだから、どんな凄まじいギャル男が現れるのか戦々恐々としていたものの、著者はロン毛ではあるが意外にも腰の低い好青年だった。

――今日はよろしくお願いします。

荒井悠介氏(以下、荒井) はい! よろしくお願いします! 僕、サイゾーウーマンさん大好きなんですよ!

――(いきなり告白された。どうしよう)いえ、その、ありがとうございます。”元ギャル男”とのことですが、スーツも着慣れて物腰も柔らかく、そんな感じがあまりしないですね?

荒井 もともと、僕はバリバリの不良で悪いことをしてたわけじゃなく、地元・立川にいた中学・高校の頃、同じ学校の生徒がゲーセンとかで不良にカツアゲされてるのを見つけると、そいつらと喧嘩してぶっとばしてました。喧嘩が好きだったんで、その理由が欲しかったんです。カツアゲする奴ならぶっ飛ばしても別にいいだろうって思って(笑)。

――正義の味方のような感じですか?

荒井 そうですね、正義の味方ぶってましたね(笑)。イベサーでトップをとろうと思った動機にもなるんですが、当時、仲間と都心に行ったときに仲間全員がカツアゲされたんです。場の空気にのまれて、そのとき何もできなかった自分が悔しくて……。それ以降、いつか都会の不良文化の中心である渋谷に出て、この不良文化をぶっ壊してやりたいって思うようになったんです。俺がこの不良たちの上に立てば、文化を変えられるって。犯罪の抑制や青少年の育成の研究にも興味があったので、イベサーに入ってからずっと活動内容についてノートをこまめにとってました。

――そういった目標があったとはいえ、イベサー人は基本的にチャラかったり、ツヨメだったり、オラオラだったりするのですよね? 荒井さんご自身はどうだったのでしょうか?

荒井 僕はすべて逆のことをやったんですよ。より多くの女の子とセックスをして経験人数を増やすのがイベサー人のスタンダードでしたが、僕は『女の子嫌いです』と言い張って。『お前ホモなんじゃないの?』『チェリーボーイだろ』と言われ続けていました。あ、もちろん本当は男性に興味ないですよ!? でも、キャラとしてそういう風に作っていた、というか

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サー人にとって一番のイベントは引退式。
引退式パンフレットより。

――あえて”チャライ”とされることはしなかったんですね。でも、”チャライ”ことがイベサーでは評価の対象になるんですよね?

荒井 基本的にはそうなんですけど、”チャライ”を極めようするとキリがないんですよ。女の子100人斬り、1000人斬り、と上には上がいる。そこで、敢えてイベサーの文化、”チャライ””ツヨメ””オラオラ”の逆のことをやれば、目立つことができる。それと、多くの女の子とセックスをするなどチャラいことをしていると、やはり揉め事が起こります。僕はそれをせずに、友達の立場を保っていたので、人間関係の面倒なしがらみもなく、イベントの集客もしやすかった。だから、サークル関係者やイベントに来るお客さんには一切手を出しませんでしたね。

――じゃあ、手を出すとしたらサークル関係者以外と?

荒井 いや……、その、スルドイですね……(汗)。ナンパくらいはしましたが。ただし、サークルの知名度とか権威に頼らなくても、モテる自分を確認するのが目的だったんですよね。あと間近で見聞きする分、金とか権威で女性を抱くっていう、援助交際オヤジとかキャバクラに行くスケベオヤジに対する反発ってすごくあったので。『権威に頼らずにモテる自分、カッコイイ!!』という(笑)。そういう意味では真面目なのかもしれません、親密にならないとセックスしませんし。

――なんだ~、ギャル男トップとはいえ、根はすごく真面目なんですね!

荒井 僕はかなりリスクヘッジをするんですよ。イベサー界は喧嘩も多いのですが、イベサーに入った当初から、色々なトラブルを仲裁する役を担うことも多くて。そういうときに、自分が普段チャラチャラしてトラブルの種を蒔いていると、仲裁してるお前はどうなんだ、ってなりますからね

――なるほど。随分戦略的に自分を演出している感じがします。

荒井 喧嘩も、やたらめったらするわけではなく、相手が確実に悪いってときに物凄く派手にぶっ飛ばすんです。そうすると『普段は穏やかなのに、今スゲー喧嘩してる』って、周りに強い印象を与えることができる。真っ向からオラオラばかりするよりも、かなり省エネで自分のイメージを作ってました(笑)。

――しっかり自分を演出して、渋谷界で人望を得てトップになっていったんですね。そこまでしたのは、昔不良にカツアゲされたときの復讐をしたいっていう気持ちがバネになっていたんですか?

荒井 そうですね。僕はすごくナルシストなんで、『美しい自分がそういう悪い奴らの文化をぶっ壊してやる』っていう妄想を毎日考えてたんです(笑)。『文化を塗りかえる自分はなんて美しい存在なんだろう!』って。変態なんです、僕(笑)。今考えると恥ずかしくてしょうがないですが。

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渋谷サークル界のトップの証

――そして荒井さんはイベサーのトップに立ったわけですよね。文化は塗りかえられましたか? 今のイベサーはどういう状況なんでしょうか?

荒井 昔はチャラかったり、クスリをやったりする人もいたけど、今はそういう分かりやすく悪いことをする人は少なくなっていますね。普通に居酒屋でバイトして、仲間内で飲んでと、イベサー界も草食化しています。全体として見たらいい子が増えているんですよ。そういう意味では、文化を塗りかえるのが達成されたのかな……。ただし一方で、昔と比べてオープンさは減ってきている気がしますね。昔からイベサーの人間関係は繊細で、空気を読むことが重要視される部分がありましたが、今はますますその側面が目立ち、”建前文化”が進んでいます。うわべでは『悪いことしてません』って言ってるけど、裏ではマリファナやってる、という子もいるにはいますし。ナンパも道端ではしないで、SNSを利用してますしね。そこはちょっと寂しいところですね……とはいえ、自分自身「うわべ」はキレイに演じましたが、裏も含めて完璧にきれいだったとは言えません。そんな私のような先輩たち、裏では色々とありながらも「うわべ」をキレイに演じている有名人や世の中の大人達、そしてそういうものを批判できず向き合えない今の社会を、ギャル・ギャル男の子たちは合わせ鏡のように映し出しているのだと思うと、責任を感じます。

 渋谷で目的もなく遊んでるだけのように見えるギャル・ギャル男。話を聞いてみると、実際は人間関係の中で自分の立ち位置を作ったり、周りの評価を得るために立ち回ったりと、多くの人が会社や学校で経験しているのと同じ激流に揉まれていることが分かった。そう考えると、異世界の住人だと思っていたギャル・ギャル男が身近な存在に思えてくる……かもしれない。
(朝井麻由美)

荒井悠介(あらい・ゆうすけ)
1982年東京都生まれ。大学入学後、イベサー「ive.」に参加。同代表就任後の03 年、渋谷サークル界のトップに。慶應義塾大学大学院に進学、『ギャルとギャル男の文化人類学』のベースとなる修士論文を執筆。現在は同大学SFC研究所上席所員(訪問)、ギャルの憧れの学校「BLEA」講師。

『ギャルとギャル男の文化人類学 (新潮新書) (新書)』

ギャルとお話したくなりました。

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