[TVツッコミ道場]

『小公女セイラ』、新ドラマ版で描かれる「実はKY少女」の視点

2009/11/14 12:00
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TBS系ドラマ『少公女セイラ』公式HP

 今回ツッコませていただくのは、志田未来主演のドラマ版『小公女セイラ』(TBS系)。

 舞台は19世紀のイギリスではなく「現代の日本」ということで、どんな「現代版」ぶりが見られるのだろうと思っていた。

 が、設定が「現代の日本」に変わっていることと、舞台の寄宿制の女子小学校が「全寮制の女子高」になっている程度で、今のところテイストは原作・アニメ版とほとんど同じ。

 今後の予告を見ると、オリジナルの展開もあるようだが、労働基準法的に問題大ありの環境などは全く現代に沿っていないし、「どこが現代版?」と思うほどである。

 ただし、原作・アニメ版と大きく異なっていると感じる点も1つある。それは、主人公・セイラに対する、客観的でやや冷やかな視点だ。

 原作を読んだことのある人、アニメ版を見たことのある人で、「小公女セイラが嫌いだった」という人は、実は意外といるんじゃないかと思う。そんな人たちにとっては、部分的に「よくぞ言ってくれた!」というセリフが盛り込まれているのだ。

 たとえば、ドラマ内で使用人の奥さんが言うセリフー――「悲劇のヒロインぶっちゃって!」に、「そうそう!!」と思わず共感してしまった人はいるはずだ。

 可哀想な運命であり、セイラ自身に非はないのだけれど、それでも、原作・アニメ版ではそんなセイラを見て思わずイライラしてしまったという人もいるのでは?

 また、お嬢のくせに、料理長よりも美味しい朝食を作ってしまうセイラー――これが、料理長のプライドをズタズタにしてしまう行為だとは、露も思わない。ナチュラルに人を傷つけているわけだ。さらに、「負けず嫌いないじわるキャラ」真里亜は、実は裏で血の滲むような努力をしているのだが、後からやってきたセイラに、いとも簡単に主役をさらわれてしまう。努力が報われない展開であり、「真里亜のほうが可哀想」と思った視聴者もいるはずだ。

 最大の敵となっている学院長も、やはりセイラの生まれながらの”お姫様”パワーに嫉妬し、どんどん意地悪になっていく。でも、なんだか可哀想なのは、意地悪をされるセイラではなく、学院長の方に見えてくる。

 何故なら、普通の視聴者が共感できるのは「どんな逆境でも明るく前向き」な主人公のお姫様よりも、地味な努力家の学院長や真里亜の方なのではないだろうか。

 実際、ドラマでは「セイラくんはその気はなくとも、他人のコンプレックスを刺激してしまうからな」とポツリと田辺誠一に言わせてみたり、上から目線で「お話をして」と懇願するセイラに対して、林遣都に「こういうところがお嬢様なんだよな」と呟かせてみたりしている。

 実は「前向きな女主人公」って、『タッチ』の南ちゃんにしろ、このセイラにしろ、同性にはとかく人気がないもの。そんな「実際にこんな前向きな人がいたら、ちょっと引くかも……」という一般人目線が、ドラマ内でチラチラと伺えるのだ。

 表面は「学芸会ドラマ」のようだけれど、案外、リアルな「現代版」なのかもしれません。
(田幸和歌子)

『賢い女はいつも前向き―変化を恐れず、自分を変えていこう! (単行本(ソフトカバー))』

前向き女とおっちょこちょい女は漫画だけに許された存在

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最終更新:2009/12/27 02:04
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