“美尻””美乳”という言葉に群がる、女心の深層とは

2009/11/09 18:00
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「an・an」/09年10月21日号

 美乳・美尻に対する女性達の願望が高まっている。美乳をつくるブラや美尻をつくるガードル、マッサージクリームなどが相変わらず売れている。それを象徴するかのように、女性誌「an・an」(マガジンハウス)でも特集が組まれていた。このような願望を抱く女性心理とはどのようなものなのか、加熱する願望の先にあるものについて考えていきたい。

■驚異の32歳「ほしのあき」というマイノリティ

 細い華奢な体躯に豊満な胸、キュッと上がったヒップ。三十を過ぎても衰えることない現役感には、驚きとともにその努力に敬意を表したい。相当なお手入れをしなければ、あの身体を保ち続けることは不可能だろう。フィギュアなみの「美しすぎる身体」に男は理想を見出し、女はあんな風になれるわけがないと思いながらも「マシュマロボディ」の秘密を探りたくなる……。

 そんな男心と女心を刺激する「ほしのあき」が表紙を飾った、「an・an」の「美乳・美尻」特集。中身は、男心の分析から、エクササイズ、美容整形までと、かなり濃い内容になっていた。これを読んだ夜から、早速やってみたくなるようなエクササイズ、そして豊胸手術についての肯定的な記述が目立つ、”美乳・美尻礼賛”。多感な時期を過ごしている10代後半~20代前半の読者が、「このような身体でないと男にモテない=幸せになれない」と思い込み、安易な美容整形に走ってしまうのでは、と危惧してしまった。成長期の女性はまだまだ身体が変化するときでもあるだけに、自分の身体を慈しみながら育てるという心を大切にしてほしいと願うばかりだ。

■整形は着ぐるみと同じ?! 外見と中身のギャップをどう埋めるのか

 先日、ウン十年ぶりに夢の国「東京ディズニーランド」に行ってきた。ハロウィンということもあって、キャストかと見紛うばかりの仮装をした来客者の多さに驚く。平日だというのに、会社を休んできているのか、多くの人でごった返していた。

 ミニーマウスが何の前触れもなく突然現れた時には、多くの大人たちが狂喜乱舞しミニーを取り囲み、握手と写真撮影の嵐となった。そんな時、私はミニーの中に入っている人のことが気になって仕方がなかった。男性が入っているのか、女性が入っているのか。スポットライトを浴び、多くの人に憧れの眼差しで見られている時と、着ぐるみを脱いだ時に感じる感覚とはどんなものなのか。極端な例かもしれないが、私は美容整形で大きく外見を変えた人の心と重ねて考えていた。

 本来の自分自身とあまりに違う外見を手に入れた時に、それを心が受け止められないということはないのだろうか。男性にモテたくて自分の外見を変えたのに、「私自身ではなくて、完璧に整えられた身体に惚れている」と思い、好きだと言ってくれた人を信じられないというようなジレンマを抱いてしまうことはないのだろうか。心と身体のバランスをとることは、とても難しいことだと思う。

■完璧なボディを手に入れたら幸せなのか

 「美人薄命」という言葉がある。美人だから幸せを手に入れられる、という単純なものではないことを端的に表した言葉だ。辞書で調べると「美しい人は、とかく病弱であったり、数奇な運命にもてあそばれたりして、短命な者が多いということ」とあるが、美容整形で人工的に手に入れた美にも当てはまる言葉なのかもしれない。完璧に美しい身体を手に入れることで、出会う必要もなかった遊び人の男に出会ってしまうかもしれないし、まるで収集家のように巨乳の女の子だけを狙って付き合うようなオッパイ星人の男が言い寄ってくるかもしれない。

 身体(外見)が変わることで、周囲の環境も変わる。化粧品や運動で徐々に変わっていくのではなく、美容整形で急に外見を変えた場合は、心が外見の変化についていけない可能性もある。急激に美しく変わるということは、ある意味、別人に生まれ変わるということでもある。美容整形は、それ位の覚悟をもって受けることが必要ではないのだろうか。

 もちろん、美しく変われることで気持ちが明るくなり、毎日が楽しいというようにプラスになる場合もあるが、メリット・デメリットを冷静に考えて美をクリエイトしていく必要がある。美しく楽しい日々を送るためには、外見以上に中身の聡明さが求められるものだと強く感じる。

恩田 雅世(おんだ・まさよ)
コスメティックプランナー。数社の化粧品メーカーで化粧品の企画・開発に携わり独立。現在、フリーランスとして「ベルサイユのばらコスメ」開発プロジェクトの他、様々な化粧品の企画プロデュースに携わっている。コスメと女性心理に関する記事についての執筆も行っている。
■公式ホームページ「オンダメディア」

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最終更新:2019/05/22 20:30
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