[連載]海外ドラマの向こうガワ

“儲かる”と”面白い”を両立させた、『ゴシップガール』の人気の秘密は?

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(c)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

――海外生活20年以上、見てきたドラマは数知れず。そんな本物の海外ドラマジャンキーが新旧さまざまな作品のディティールから文化論をひきずり出す!

 アメリカでは毎年星の数ほどのテレビ・ドラマ企画が放送局(以下、ネットワーク)に持ち込まれる。ネットワークは、その中からコマーシャルを流してくれるスポンサーが気に入りそうな企画を選び、脚本を発注。脚本がよければパイロットとよばれる「お試しエピソード」が制作され、毎年5月にニューヨークで開催されるスポンサー企業への「新番組候補のプレゼンテーション/視聴会」で放映されることになる。

 ネットワークは、広告主であるスポンサーに沢山のエアー・タイムを購入してもらおうと、ドラマの「顔」である出演者や「ブレーン」であるプロデューサーらをプレゼンテーションに参加させ交流をもたせる。スポンサーは「お金儲け」というビジネスだけでなく、未来の大女優/俳優や名プロデューサーたちを育てる楽しみも味わうことができるのだが、景気悪化が深刻化し始めた10年ほど前から、この「賭け」を敬遠する企業が増加。少ない制作費で、手っ取り早く視聴者をあつめられるリアリティ番組が次から次へとオンエアーされるようになっていった。

 しかし、リアリティ番組は素人が出演するためトラブルが起こりやすく、出演者が殺人事件を起こしたり、子どもがヘリウムガス気球に乗って飛んでいってしまったと、両親から警察とメディアに通報して大騒ぎになった「バルーン・ボーイ」など、明らかに行き過ぎた売名行為を行う者が出てくるなど、社会問題となっている。

 「ドラマなしではアメリカのテレビ業界は成立しない」ことを、ネットワークもスポンサーも熟知している。制作費はかかるが、世界的に大ヒットすれば莫大に稼ぐことができ、映画化やスピンオフ、リメイクと無限のビジネスチャンスを手に入れることだって可能なのだ。

 ここ数年、再びドラマ制作に熱を入れるようになったネットワークは、失敗のリスクを減らし、スポンサーを納得させることができる「将来的にお宝となる」ヒット・ドラマを生み出すため、『Sex and the City』のようにベストセラー小説をドラマ・シリーズ化させたり、『エイリアス』のJ.J.エイブラムスや『CSI:科学捜査班』シリーズのジェリー・ブラッカイマーなど、すでに実績のある名プロデューサーに製作総指揮を依頼するようになってきた。

 また、若者を中心にテレビ離れが進み、視聴率だけで勝負することが難しくなってきていることから、インターネット配信や関連グッズの販売、ファッション・ブランドとのタイアップも積極的に行い、スポンサーが「儲かる」と思うようなドラマ制作を心がけるようになってきている。

 その成功例が、2007年9月にアメリカでスタートした『ゴシップガール』。人気女流作家セシリー・フォン・ジーゲザーのベストセラー小説シリーズ『Gossip Girl』をドラマ化した作品であり、製作総指揮者は、ミーシャ・バートン主演のヒット・ドラマ『The OC』を手がけ「青春ドラマの第一人者」と注目されるようになったプロデューサーのジョシュ・シュワルツである。

小物にスポンサーを取り込み、スタッフも超一流を

 『ゴシップガール』は、世界屈指の高級エリア、ニューヨーク・アッパー・イースト・サイドを舞台に、青春ライフを謳歌する高校生たちの物語。小説のファンである10代、20代女子の大きな期待を裏切らず、イメージに「ぴったりあった」役者をキャスティングすることに成功したことから、プロモーションの段階で大きな話題をよび、第一話目から高視聴率を稼ぎ出した。

 ドラマの主人公たちは、生まれも育ちも超一流、外見も行動も派手で、何かと目立つ「ポピュラー」な高校生。同世代の注目の的である彼らの行動は、一般高校生たちのタレコミ&パパラッチ写真と共に「ゴシップガール」というサイトにアップされ、多くの中毒者を生み出しているという設定で、現代的でリアルであると社会現象にもなっている。

 登場人物たちは、みなが携帯&メール依存症であり、携帯でゴシップガールのサイトをチェックしたり、タレ込みを入れたりするシーンが頻繁に流れるのだが、実は彼らが使用する携帯は、番組が契約を結んだ米国大手携帯電話キャリア「ベライゾン・ワイヤレス」のものオンリーとなっている。べライゾンでは、『ゴシップガール』のサイド・ドラマ的スピンオフも配信されたりと、これまでにないTVドラマとしての新しい展開を見せており、その点でもパイオニア的存在だと人気が集まった。

 また、多くのファッション・ブランドが衣装を提供しており、日本でも今年人気が出たトリー・バーチは『ゴシップ・ガール』が火をつけたといっても過言ではない。ちなみに、コスチューム選びを担当するのは『Sex and the City』制作にも参加していた名コスチューム・スタイリストであり、ドラマをスタイリッシュにし、クオリティ・アップに貢献。ほかにも、音楽業界で一目おかれているTranscendersが音楽を手がけ、『ヴェロニカ・マーズ』でブレイクしたクリスティン・ベルが声でしか登場しない重要人物「ゴシップ・ガール」を担当するなど、見どころは随所にちりばめられている。

 日本でも10月21日にリリースされたシーズン1では、回を重ねるごとに「予想もつかない」「かなり衝撃的」な展開となっていくが、大げさにならず、ストーリーが脱線しないのは、ベストセラー小説を基にしているからこそ。『ゴシップガール』が単なるセレブな青春ドラマにとどまらず、常に話題を振りまいているのは、業界に認められた第一人者たちが集結しプロデュースしているからなのである。

 「高校生ものはちょっと」「恋愛ドラマはちょっと」という方も、『ゴシップガール』は「ついつい」ハマる可能性大。中毒性の高い、要注意的な海外ドラマといっても過言ではないだろう。

堀川 樹里(ほりかわ・じゅり)
6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴20年以上、豪州→中東→東南アジア→米国を経て現在台湾在住。

ゴシップガール 〈ファースト・シーズン〉 コレクターズ・ボックス1

「エビちゃ~ん」というCMのナレーションが好きでした

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