住宅都市整理公団総裁・大山顕が訊く

気鋭の女性編集者たちにとっての「ドボク・エンタテイメント」とは(前編)

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左から雨宮さん、角田さん、大山氏

 工場とかジャンクションとかダムとか水門とか鉄塔とか高架下とか。最近、これまで鑑賞する対象とは思われていなかったこういうものを愛でる人たちをちらほら見かけます。とくに女性の姿が目に付く(気がする)。

 きっかけとなったのは、日本中まわってこれらのものを写真に撮り、ウェブサイトで発表する人たち。実はかれらはぼくの友人。ぼく自身もジャンクションとか団地とか工場の写真をサイトで発表しています。というわけでこんにちは。「工場萌え」の大山です。

 いまや、ぼく含め友人たちは本を出版するようにまでなり、そこそこ話題になってます。数年前まで「ダムの写真集」「団地の写真集」なんて考えられなかったですよね。mixiなんかでもそれぞれのコミュニティはなかなか盛り上がってます。「ジャンクションツアー」とか「ダムツアー」とか「水門ツアー」とか、そういうものをやってみると、男女問わずたくさんの人が集まる。良い時代になったなー。日本はよい方向に動いていると思います。

 で、今回は、そういう「ドボク」なもの(ぼくらはとりあえずこれらの構造物に愛を込めてこう名付けました)を愛でる人たちが増えていることについて、これら「ドボク本」の編集者にどう思うかうかがってみました。ひとりは、「工場萌え」や「団地の見究」でお世話になった東京書籍の角田さん。もうおひとりは、ぼくの「高架下建築」や、最近、『壁の本』(著・杉浦貴美子)というとっても素敵な本をつくった洋泉社の雨宮さん。ちなみにお二方とも女性。それにしても著者であるぼくが編集者に逆インタビュー。こんなのはじめて。

■「工場の景色が忘れられなくて」

 まずぼくが訊きたかったのは、こういうマニアックな本をどうして出版しようと思ったのか、どうやって出版までこぎ着けたのか、というお話し。

大山 著者のひとりであるぼくが訊くのもへんですが、なんで「工場萌え」作ろうと思ったんですか? やっぱり工場が好きだったの?

角田 意識して好きだっていうわけじゃなかったけれども、工場の景色を見たときのことが忘れられなくて、石井さん(工場萌えの著者・写真担当)のブログを見て、いいな、って思い出したって感じですね。

雨宮 そうですよね。なんとなくいいな、とか、忘れられないっていう感じですよね。「高架下建築」のときも、そうでした。大山さんが「デイリーポータルZ」で浅草橋の高架下建築を紹介する記事を書かれているのをみたときに、ああ! って思ったんですよね。そういえば高架下建築、好きだった、と思って。

大山 そうそう、アップされて30分くらいで出版打診のメールが来た(笑)。「これがつくりたくて、仕事を変えた者です」みたいなひと言が添えられて。

雨宮 あはは、そうでしたね。自分が面白いと思ったもの、というか、きっとほかにも面白いと思ってくれる人がいるんじゃないかって思うと、本として出してみたくなるじゃないですか。以前いたところだとこういう企画を実現するのは難しかったので……。

編集部 こんなフリーダムな本だせる出版社ってないですよ、そんなに。

大山 しかも『工場萌え』は東京書籍(教科書で有名な会社)ですからね。

編集部 そうなんですよ、なんでその東京書籍でその企画が通るのかっていうのが……きっとたいへんだったんですよね。

角田 確かにたいへんでした。大山さんに工場萌えのお話するときに、たぶんこの企画は通らないと思うんですよ、って会うたび5回くらい言いました。

大山 そうそう、そうだったそうだった(笑)。

角田 それでもできればやりたかったので、インパクト勝負で。そのときちょうど石井さんが『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)に出演されたんですよ、企画書出した週に。で、『タモリ倶楽部』を録画して企画会議のときに出したりして。

雨宮 『タモリ倶楽部』は大きいですね。なるほど。テレビに取り上げられたり、というのはやっぱり説得材料にはなりますよね。『壁の本』の著者の杉浦さんも、大山さんも出演されている『熱中時間』(NHK)にゲストで出ているのですが、それはやっぱり大きかったです。

 *

 ぼくがあらためて感銘を受けたのは、お二方ともご自身の情熱で仕事をしておられるということ。ふだんお付き合いしていると、けっこう淡々とした印象を受けるお二方なんですが。ぼくがサラリーマンやってたときにこういう情熱あったかなー、と反省しました。いまさら。

■「好きでしょ」だけでできている

 さて、実は、今回サイゾーウーマンから依頼されたのは「2人の”女性”ドボク本編集者」というお題目。つまり「女性の編集者だからこそ」といったような何かを探り当てたいのですが……正直、そういうの苦手なんですよねー。たしかにドボク好きに女性はたくさんいますけど……。

大山 えーと、今日はサイゾー”ウーマン”なので、そろそろ「女性にとって」みたいな話をしたいんですが……女性おふたりということで、そのー、ドボク関係のイベントでも女性のお客さんがけっこう多いじゃないですか、だからご自身のことも含めて、その女性にとってのドボク的な面白さってなんなんだろう、とかいうことをお話ししてみたいんですが……(しどろもどろ)。

角田 あはは、あんまりそのー、大山さんは男女で見方が違うっていう立場みたいですけど、私はそう変わらないかなっていう気はしていて。

雨宮  そうですよね。女性だからとか男性だからとか、あまり意識してないですからね。聞くほうも答えるほうもむずかしい設問ですね(笑)。

大山 いや、見方というか……たとえば工場のイベントやったりジャンクションのツアーやったりすると女性の方が多いじゃないですか。もしかしたらドボク本も女性がたくさん買ってくれているかもしれない。で、ぼくは、こう思ったんです。男だったら、工場もジャンクションも、好きだなって思ったら、仲間がいなくてもひとりで現地に見に行けるんだけど、女性は難しいですよね。夜、工場の夜景をひとりで見に行くのって相当怖い。だからこうやって仲間があつまるイベントを誰より望んでいるのは女性なのかな、と。

編集部 そうそう。ドボク関係の本を出したお二人が女性なのも、そういう実物を見に行くのはたいへんだから本にしなきゃっていう情熱ゆえかなあって思ったんです。

角田 うーん、なるほど。

大山 まったくそういう側面がないって言い切れる?

角田 それは言い切れないですね(笑)。工場がいちばん顕著だと思うんですけど、鑑賞するためのガイドみたいなものがないと女性一人では怖くて行けない。そして、『工場萌え』にも何回も書いたんですけど、ひとけのない工業地帯では夜の一人歩きはやめましょう、とか、そういう注意書きがないと、本として出してはいけないっていう、そのへんの、なんだろ、怯えみたいなのはあるかもしれないですよね。
後編につづく/取材・構成=大山顕[住宅都市整理公団])

●おおやま・けん
公営団地を紹介するWEBサイト「住宅都市整理公団」総裁。団地や工場のほかにもジャンクション、水道管、螺旋階段、高架下建築、地下鉄ホーム、駅のパイプ群など幅広い鑑賞趣味を持つ。写真集『ジャンクション』、著書『工場萌え』『団地の見究』ほか。
http://danchidanchi.com/

●角田晶子さん(東京書籍)の主な担当「ドボク」本

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左から『工場萌え』『工場萌えF』『団地見究』

●雨宮郁江さん(洋泉社)の主な担当「ドボク」本

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左から『高架下建築』『僕たちの大好きな遊園地』(洋泉社MOOK シリーズStartLine 15)、『壁の本』



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