現在の農業ブームに農業専門誌編集者が苦言(後編)

農業は儲かる? メディアが隠す”農業”のビジネスリスクとは

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その名も「農業やろうぜ」(宝島社)

(前編はこちら)

――なんだか話を聞いていると、今回の”おしゃれ農業”ブームに関しては、農水省と代理店の手のひらで踊らされているだけのような気がしてきますね。

A氏 そうだと思います。でも、私はそれはそれでいいと思うんですけどね。自然に触れる機会が少ない都市生活者の中には土に触れたがっている人がたくさんいますし、そもそも農業に注目が集まるのは今後の業界の活性化のためにも重要だと思いますから。でも、ビジネス的な観点で考えるとなると、ちょっと話は別なんですけど……。

――と言いますと?

A氏 農業は「業」という言葉を使うだけあって、商品開発があったり、流通があったり、実はいろんな関わり方があるんです。でも、”おしゃれ農業”に関していえば、なぜか生産ばかりに注目する傾向がある。農水省の統計によれば日本の野菜の自給率を見ると実は約80%もあるんです。この数字はそれだけ競争相手が多いことを意味しますけど、そのことを理解しないまま家庭菜園の延長上で独立して生産を行うとなると、失敗する可能性が非常に高いんですね。あるいは農業法人に転職したとしても、思い描いていたイメージと実態が違って挫折してきた方は大勢います。

 それに、これは専業農家の方と話をしているとよく聞く話なんですが、農業生産で本格的に独立して生活していこうとするなら、たとえばお米をある程度の規模で生産しようとして農業機械を購入しようとすると、何千万円もかかりますし、有機野菜だって高い値段では売れない時代になってきている。使用する農地を借りるために難しい人間づきあいだってしないといけなくなります。この農業ブームをきっかけに、ライフスタイルとしての農業に興味を持ち、いずれは農業を仕事にして生きていきたいと考える人がいると思いますが、そのリスクの部分をしっかりと学ぶべきだと思うんです。

――なるほど。ブームの最中にいると、意外とリスクって見えにくいものかもしれません。勉強になります。ありがとうございました!

 産業への過剰な注目も当然農業へのマイナスイメージにつながるが、それ以上に関係者たちが危ぶんでいるのが”ブームの衰退”のことだろう。農業は、その年の天候によって収穫量が上下することはあるものの、世の中の景気によって作物の価格が左右されることは少ない。そのため、世間が不景気になると人気を集めやすい傾向をもっている。しかし、逆に景気が回復してくると、農業へのイメージは一転して「ダサイ」「儲からない」という元の状態に逆戻りしてしまうのだ。

「今の農業バブルは、いろんな要素が重なりあって泡のふくらみが大きくなっていますが、今後景気がよくなってきたらと思うと不安になりますね。ブームのアイコンになりつつある、元ギャル社長・藤田志穂さんのシブヤ米も、どれぐらい続くかどうかは……」(A氏)

 どんなに崇高なブームであっても、終わってしまえば過去の産物になるしかない。今回の農業への注目を単なる流行にしないためにも、きらびやかな上面に惑わされない真摯な態度が必要そうだ。

『農業やろうぜ (別冊宝島1642 カルチャー&スポーツ) 』

「バンドやろうぜ」的な?

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