[TVツッコミ道場]

山場なのになぜか爆笑連発、朝ドラ「つばさ」の洪水パニック!

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『つばさ』公式HPより

 2009年春からスタートしたNHK連続テレビ小説『つばさ』。主役のつばさを演じるのが、ヘン顔演技とかもいろいろできる多部未華子で、川越にある老舗の和菓子屋を舞台にしたドタバタホームコメディ、西城秀樹も出るよ、といえばもう、『寺内貫太郎一家』(TBS系)ノリのギャグ満載、往年のホームドラマを期待してしまう。しかし……。

 なんていうんだろう。ユーモア心のない(でも、マジメでいい人)部長がムリヤリがんばってギャグをやってくれたものの、痛々しい空気になってしまうようなものというのか、とにかく「狙い」が見えすぎて、ギャグをやってくれればくれるほど、こっちはどんどん醒めていくドラマができちゃった。たとえば秀樹の事務所の神棚に「リンゴとハチミツ」が供えられてたり、エピソードの最後にサンバダンサーが登場し、唐突にみんなで踊ってしまったり、バラエティの定番お色気SE「ワーオ」を今さら多用してみたり。クドカンや三谷、またはオフィスクレッシェンド系の笑いを取り入れたかったのかもしれないが、制作側の「ここで笑ってね」「ここの小ネタ、こだわってるでしょ? わかる?」という「ツッコミ待ち」してる空気が見えすぎてもう……。

 そんな『つばさ』に、見どころ満載! 面白回がやってきた! それが、7月17日の放送回である。

 この週は、大型台風の影響で、川越の町が豪雨に襲われるというのがメインの出来事。ちなみに、つばさのお仕事は川越にあるコミュニティFMのパーソナリティで、つばさの彼氏はケガをしてリハビリ中のJリーガー・翔太(小柳友)。そのFMの社長が、元官僚の真瀬(宅間孝行)という男。つばさをいつも「イモ」呼ばわりしてる男ツンデレ。本当は粗野な言動の内側には優しさもあって、魅力ある中年バツイチ男に見せたいのだろうと思うが、見た目が、スピードワゴン井戸田と野球解説者の角盈男を混ぜたような、しゃくれタレ目のヒゲの濃い男。この顔で、いつも眉間にシワ寄せて「イモイモ」言ってるだけのせいか、なかなか内面の魅力まで到達できません。そのニセ井戸田が、20歳以上年下のつばさに次第に魅力を感じ始めている描写が、前フリとしてちょっとだけ描かれていた。

 で、生き別れになっていた翔太の父(永島敏行)が、川原で生活するホームレスとして発見! これも伏線も特になく、唐突だ! とりあえず親子の確執やらなんやらちょっとあったあとに、台風直撃。川が増水しているという情報が飛び込んでくる。劇中、紙粘土かマッチ箱で作ったような川越の町のジオラマがしょっちゅう出てくるのだが、台風が直撃するくだりになってきて「もしかして……?」と思っていたら、期待通りちゃんとこのしょぼいジオラマを水浸ししてくれた。さあ、心配なのは、親父さん。翔太が駆けつけてみると、見事にホームレスハウスが濁流に包まれている。父を心配し、川に飛び込む翔太。すると、お父さん! 胸まで水につかった状態で、自暴自棄になって酒瓶ラッパ飲み! ぶはははは。爆笑だ。水没しかけの飲んだくれという映像、世界初かもしれません。

 そんな面白い状態になっていた父を助けだそうとしたそのとき! 「ピシッ」翔太の膝に破滅の音が! まさか!? 翔太の選手生命は!?  どうにか父を川原に助けあげたら、今度は様子を見にきたつばさが、強風にあおられて、まさかのドボン。大変だ。恋人を助けなきゃ。しかし、さっきのピシッで、膝に激痛が走り、動けない翔太。そのとき。

「イモ~~~ッ!!」

 翔太の目の前を駆け抜け、颯爽と濁流の中飛び込んだのは、社長の真瀬。「イモ~~~ッ!!」という絶叫、ドラマ史に残りそうです。溺れかけるつばさを助けあげながら、「つばさ! 俺から絶対離れるなよ」と社長。この場面で、はじめてイモでなく「つばさ」と、名前で呼んでくれたことになるわけだが、見てて恥ずかしい。ヒシッと抱き合いながら、動けない翔太の目の前をスルーして川から上がってくる二人。大変、つばさの意識がない。そのとき。

 ブチュー……

 マウス・トゥ・マウス。それを絶望的な表情で見つめる恋人・翔太。さっきの呼び名チェンジといい、人工呼吸をキスとして扱う演出といい、いつの少女漫画だ。

 結局、選手生命も恋人も、いっぺんに失った翔太なのでありました、って感じで、あんまりだ……。

 助けにいったけど、ケガしたことで溺れかけてしまう息子を見て、これまでやる気を失っていた父が、身を挺して助けにいくといった流れなら、けっこうドラマチックになっただろうに。またしても、どっか惜しい。そのお父さんは、引きで映されたラストのカットで、盛り上がる三角関係のかたわらで、ぐったり放置されていた。最後にまた、爆笑。

 15分間に詰め込まれた怒濤の展開、笑わせようと狙ったネタじゃなく、中盤の山場のひとつとして、かなりハイテンションかつ大真面目に作っているからこそのこの面白さ。前作の吉田栄作のボクシングとか、前々作のダンスバトルとかもそうだったけど、やっぱり朝ドラは、こうでなくちゃね。

 この先、つばさはどっちを選ぶの? とかについては、正直全く気にならないですが、この先、後半戦に期待したいところです。
(太田サトル)

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「あんたイモね!」

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